音楽ナタリー Power Push - UNCHAIN

結成20周年を迎えたバンドの新たな挑戦

左右で演奏を分けたらどうなるかっていう実験

──今回のコラボ曲の中で、演奏面やアレンジ面で印象深い曲は?

谷川 BRADIOとの「Bomb A Head」は、彼らに演奏もやってもらったんですが、2組が向かい合って演奏してる感じを出したくて、左チャンネルにUNCHAIN、右チャンネルにBRADIOの音が入ってるんです。

佐藤将文(G)

──じゃあ、どちらかのチャンネルに絞って聴くのも一興ですね(笑)。

谷川 そうですね。

佐藤 いやいや、せっかく一緒に作ったんだから混ぜた状態で聴いてください!(笑)

──ということは、この曲はダブルドラム、ダブルベース、ダブルギター、ダブルボーカルという編成になってるわけですね。

谷川 そうです。本当はドラムも一緒に録りたかったんですけど、場所的にドラムセットをいっぺんに2セット組むのが無理だったので、ドラムだけは吉田に合わせてBRADIOの田邊(有希)さんに叩いてもらったんです。そのドラムに合わせて、あとは全員で「せーの」で録って。左右で演奏を分けたらどうなるかっていう実験的な部分もあったし、楽しく作れましたね。

──「Bomb A Head」のビートはモータウンっぽいですが、ノーザンソウルをイメージして作ったんですか?

谷川 確かにモータウンっぽさはありますけど、なんだろうなあ……BRADIOのことを思えば、もうおのずと出てくるみたいな(笑)、そんな曲ですね。

吉田昇吾(Dr)

吉田昇吾(Dr) 「アフロ」って感じがしますよね(笑)。BRADIOのボーカル(真行寺貴秋)がアフロヘアだし。

谷川 これはBRADIOとやることが決まってから書き下ろした曲で、画が一番見えやすいコラボだったんで、こういうビートでこういうメロディで、っていうのがどんどんあふれてきてスムーズに作れました。

「幸子ちゃん、好き」って思いました

──反対に、異色の組み合わせとなったのがBAND-MAIDとの「Wonder」だと思うんです。

谷川 自分たちでも一番異色だと思います。でも、コラボした曲自体はUNCHAINの中では違和感がなくて。昔はけっこうこういうタイプの曲をやってたんですよ。

佐藤 UNCHAINのロックの引き出しの中の1つですね。

谷川 だから、すげえひさびさにこういう曲やったなあ、っていう感じでした。

──そもそもBAND-MAIDと出会った経緯は?

谷川 同じレコード会社つながりですね。で、ライブを観に来てもらったことがあって挨拶とかはしていて。あと、BAND-MAIDのレコーディングに吉田が関わったりしてるんです。

吉田昇吾(Dr)

吉田 ドラムテックとして関わらせてもらっていて。メンバーのギターの子(遠乃歌波)はもともとUNCHAINが好きだったって言ってました。今は全然音楽性が違いますけど(笑)。

──ねごとの蒼山幸子さんを迎えた「浮遊」は、UNCHAINの新しい魅力を感じた曲でした。

谷川 ねごとはデビュー当時、UNCHAINとけっこう対バンしていたんです。その頃、蒼山幸子はまだ10代だったと思う。以来、全然絡みがなかったんですけど、改めて聴いてみたらすごいグッドミュージックをやってるなって感動しちゃって。ねごととUNCHAINは、意外かもしれないけど、むしろメッチャ合うんじゃないかと思ったんです。

──こういう演奏やアレンジはけっこう新しいアプローチじゃないですか?

谷川 キーボードのアレンジも蒼山さんにしてもらったんですけど、そのキーボードが入る分の余白を考えながらバンドアレンジを作っていったところがありますね。最近、UNCHAINはできるだけ音数を少なくするよう意識してるんですけど、間が空いててスカスカの中に立体的に現れる音符があるっていうサウンドを意識しましたし、この曲はループミュージックっぽいアプローチで作っていったところもあります。

──曲調にはちょっと1990年代の渋谷系ポップスを思い出す感じもありました。

左から吉田昇吾(Dr)、佐藤将文(G)、谷川正憲(Vo, G)。

佐藤 あの頃のドラマのエンディングテーマとかに使われてそうな世界観がありますよね。「カバチタレ!」(2001年放送のフジテレビ系ドラマ)とか(笑)。

──蒼山さんのガーリーな歌声や歌詞の内容も含めて、なんともロマンチックな曲に仕上がりましたよね。

谷川 そうなんです。この曲の歌詞を書いてくれたときに、もうすごい「幸子ちゃん、好き」って思いました(笑)。本当にすごい才能だなって。

「西」という1文字に思いが込められすぎてパンパン

──LEGO BIG MORLと大石昌良さんは、日頃から交流がある2組ですよね。

谷川 LEGO BIG MORLはメジャーデビューの時期がほぼ同じで、年齢も一緒で、大阪で一緒にやってきた仲間でもあって。で、LEGO BIG MORLは今年結成10周年、UNCHAINは20周年ということで、このタイミングで一緒にできたらいいなということでオファーしたんです。

──LEGO BIG MORLとの「Don't Stop」は、テンポを落としたディスコビートにしているところにこだわりを感じました。

谷川 これはMaroon 5とマイケル・ジャクソンの合体ですね(笑)。LEGO BIG MORLは最近そういうBPMを落としたディスコをやったりしていて、そういう部分が今のUNCHAINと似ているんです。しかも彼らはバンド感バッチバチなんで、そういう曲をやるとすごくカッコいい。で、彼らにも20曲くらい渡したんですけど、この曲を選んできたので「やっぱそうやんな。わかってるなー」みたいな。

──歌詞もUNCHAINへのメッセージソングのようになってますよね。

谷浩彰(B)

 一聴したときは「恋愛について歌ってるんかな?」と思ったんですけど、改めて聴いてみると、「これ友情の歌なんだ」と気付いてグッときましたね。

谷川 歌詞を書いたタナカヒロキ(G)いわく、UNCHAINと同じ関西出身で、東京に出てきて、っていう感じを歌詞の中の「西」という1文字に込めたらしいです(笑)。関西な感じを出したくて、とりあえず「西」を入れときましたって。

佐藤 もうね、思いが込められすぎて「西」がパンパンになってます(笑)。

──大石さんとの「ひだまりのうた」は、谷川さんと大石さんの二人による演奏ですね。

佐藤 大石さんは歌のパワーがすごいんで、この曲だけは2人のアコギと歌だけっていう作りにしたんです。2人の歌パワーとギターパワーをわかりやすく出そうと。

谷川 この曲は実は古くて、2008年か2009年くらいに書いて温めてた曲なんです。たぶん大石さんとやってなかったら眠ったままだったかもしれないんですけど、当時から僕はこの曲が気に入っていて。なかなかUNCHAINでやれる機会がないなと思ってたんで、今回すごく報われた気がしてます。

ミニアルバム「OUTSIDE」2016年10月5日発売 / 1620円 / HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1045
「OUTSIDE」
収録曲
  1. 緊張 / UNCHAIN with 鬼束ちひろ
  2. Bomb A Head / UNCHAIN with BRADIO
  3. Wonder / UNCHAIN with 彩姫 from BAND-MAID
  4. Don't Stop / UNCHAIN with カナタタケヒロ from LEGO BIG MORL
  5. 浮遊 / UNCHAIN with 蒼山幸子 from ねごと
  6. ひだまりのうた / UNCHAIN with 大石昌良
  7. The Kids Are Crazy / UNCHAIN
  8. Koe / UNCHAIN
ライブ情報
UNCHAIN 20th anniv. 3-Game-Match “Mr.VIRUSOUL スペシャル”
  • 2016年10月20日(木)東京都 WWW
    <出演者>
    UNCHAIN / LUCKY TAPES
  • 2016年10月27日(木)東京都 WWW
    <出演者>
    UNCHAIN / Keishi Tanaka
  • OPEN 18:30 / START 19:00
    チケット:3500円(ドリンク代別 / 整理番号付)
    INFO:ディスクガレージ 050-5533-0888
UNCHAIN「20th Anniv. Special Live
『You & U』」
  • 2016年12月18日(日)東京都 日本橋三井ホール
    <出演者>
    UNCHAIN
    ゲスト:蒼山幸子(ねごと) / カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL) / 彩姫(BAND-MAID)
    ※ソールドアウト
UNCHAIN アコースティックワンマンLIVE
  • 2017年2月3日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2017年2月12日(月・祝)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
UNCHAIN(アンチェイン)
UNCHAIN

京都府京丹後市出身のロックバンド。1996年に中学校の同級生だった谷川正憲(Vo, G)、谷浩彰(B)、吉田昇吾(Dr)によって結成される。後に佐藤将文(G)が加入。ジャズ、ブルース、フュージョン、ソウルなど幅広い音楽を独自の解釈で昇華させたグルーヴ感あふれるサウンドや、フロントマン谷川のクリアでソウルフルなボーカルなど、豊かな音楽性が耳の肥えたリスナーから支持を集める。2005年に1stミニアルバム「the space of the sense」が発表されると、無名の新人バンドにもかかわらず好セールスを記録し、その名が一気に全国区へと拡大した。結成当時から英詞にこだわっていたが、よりメッセージを伝えるために2008年リリースの作品から日本語詞を採用。2011年6月発売のアルバム「SUNDOGS」は全曲日本語詞の作品となった。2013年2月に発表したカバーアルバム「Love & Groove Delivery」が大きな反響を呼んでシリーズ化され、2014年2月に第2弾、2015年2月に第3弾をリリース。2015年6月にはデビュー10周年を記念して、過去曲を新たに作りなおしたリメイクベストアルバム「10fold」を完成させた。また2016年10月には結成20周年を記念し、鬼束ちひろ、BRADIO、BAND-MAID、LEGO BIG MORL、ねごと、大石昌良をゲストに迎えたコラボアルバム「20th Sessions」を発表した。