ナタリー PowerPush - UNCHAIN
ルールなんてどんどん打ち壊していけばいい
メンバーの共存点を見つけるには戦いが必要
──でもバンド始めた当初って、そういう作り方するものなんじゃないですか? みんなでワイワイ言いながら作っていくっていう。
谷川 あのう、人見知りすぎて……(笑)。
──中学校時代の友達同士なのに今さら!(笑)
谷川 僕が1個あるものを作って、それをみんなで仕上げていく、という作業はしてましたけど。
佐藤 曲を作ってきた人がみんなを引っ張って、みんながそれについていくって感じだった。
──それは別に不自然なことでもないけど。
佐藤 なんですけど、それじゃなきゃいけないみたいに思い込んでた。
谷川 そんなルールなんてないのに、あるように思ってた。何やったっていいはずなのに。
──なぜ今回そういう作り方にしようと思ったんですか。
佐藤 今までにないやり方をやってみようと。今回の裏テーマとして「発見」というのがあって。「発明」だったり「発見」だったり。世の中にとっては当たり前のことでも、僕たちにとっては新しいことをやってみようという話はしてたんです。
谷川 結果ですけど、自分だけで作ってたら絶対こういうフレーズにはならないだろうなっていうのはいっぱいありますね。普通にリスナーの方が聴いてもわからないかもしれないけど、自分たちにとってはそれがすごく新鮮なんですね。そういう「共存」がいっぱい含まれているアルバムで。
──なるほど。でも相手にダメ出しされて「こいつ全然わかってねえな!」とか思いませんでした? 「ここがいいのに!」とか(笑)。
谷 あ、それでけっこう言い合い、ケンカとかしながらやってましたね(笑)。
──おお、じゃあけっこうやり合ったんですね。
谷 やり合いましたねえ。いつもよりは(笑)。お前何言ってるんだよ!とか(笑)。
佐藤 でも自分だけの世界が他人に理解されないって、けっこうあることじゃないですか。どれだけ自分が深く思っていても、他人にしてみればペラペラだったりして。谷が書いた歌詞にあれこれ言っても、頑として譲らない。今度はオレが書いた歌詞に谷からツッコミが入ると、ムキになって反論したりする(笑)。何度もそういう言い合いを繰り返して。
谷川 そこで妥協点ではなく共存点を見つけるには、戦いが必要だということなんですよ。みんながいいと思えるものを作るためには。
──みんなが我慢してるんじゃなく、みんなが満足できるようなもの。
谷川 うちのチーム・UNCHAIN全員が納得できるもの。過去には、僕だけがいいと思ってて、ほかのみんなはよくないと思ってた曲も……あったかもしれない(笑)。
──「実は5年前に作ったあの曲の歌詞が気に入らないと思ってた」とか(笑)。
谷 心境って変わるものじゃないですか。その時は谷川の世界観を打ち出すのがバンドのやり方だと思っていた。でもその後バンドの進んでいく方向が定まってきて、これじゃダメなんじゃないかなと思うようになった。それが成長だと思うんです。そういうのがうまく噛み合ったアルバムなんじゃないかな。
「歌うのは1人のボーカル」という常識を打ち壊したかった
──なるほど。例えばご自分が書いた歌詞にあれこれみんなから突っ込まれる。最初は何言ってるんだと反発する。でもどこかで納得して、意見を聞き入れるときもあるわけですよね。それはどういう瞬間ですか。
谷 1人でやってるんじゃない。4人でやってるものなんで。みんなの意見を取り入れたもののほうがいいのか、自分の意見を押し通したほうがいいものになるのか、それはやってみないとわからない。実際にやってみたらみんなも満足がいって、よいものになった、ということも多々あったんです。レコーディングの日程が延びたのは、そういう理由もあったんですよ。
吉田 谷の書いた曲はすげえ時間がかかった。
谷川 谷くんはがんばって今回4曲も歌詞を書いてきてくれたから。
谷 ホントは全曲書くつもりだったけど……(笑)。
吉田 全然無理だったけどね(笑)。
──歌詞に目覚めたきっかけは何かあったんですか。
谷 僕はヒップホップが好きなんですよ。それで自分で歌いたいと思ったのがきっかけで。
──歌いたいという気持ちが先にあったわけですか。
谷 最初はなかったんですよ。でも最初に僕の曲のデモを出したときに、メンバーやプロデューサーが「これは谷が歌ったほうがいいんじゃない?」って言われて。「いいのかな?」って。
谷川 そこも暗黙の了解があったんですよ。歌うのは僕しかダメ、みたいなルールが。そういう勝手に作ったルール、常識みたいなものを打ち壊したかった。ジャケットもそうなんですよ。オレンジをめくったらオレンジが出てくるんじゃなくて、地球が出てくる。当たり前のことを当たり前に思わないでほしい。常識とかしきたりとか。そんなの……どうでもよくないですか?(笑)
佐藤 谷が歌うにしても僕が歌うにもしても、ライブではやっていたんです。それが面白くて。(「Love & Groove Delivery」収録の)「丸の内サディスティック」の後奏で谷ラップしてるじゃないですか。あと「Eat The Moon」の「4U」という曲で、韻シストのBASIくんがラップやってるところを、ライブでは谷がやってる。そういうとこでお客さんが盛り上がったり、僕が歌うとわーっとなったり。そういうのも自分たちで楽しめたし高揚できたから、じゃあCDでもやってみようかと。
谷川 2年ぐらい前から「壊し続けるスタイル」って言ってますけど、ホントにルールなんてなくて、どんどん壊していけばいいと思ってます。だから佐藤が歌うのも谷が歌うのも、UNCHAINにとってはアリなんですよね。
- ニューアルバム「Orange」/ 2013年6月5日発売 / [CD+DVD] 3000円 / Cloud Cuckoo Land inc. / YZSM-20011
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CD収録曲
- Makin' Pleasure Cake
- Take Your Mark
- Smile Again
- ジーン・ラプソディ
- The Inner Light
- Cuckooland
- 迷宮パスワード
- King of Comedy
- Time Machine Blues
- Hossana
- ウインド・ギア
DVD収録内容
5th Album Release Tour "Eat The Moon Parade" Final 2012/6/21@Shibuya CLUB QUATTROよりライブ映像を収録
- Eat The Moon
- Rusty Love
- テレスコープ・トリッパー
- 愛の未来 ~I Saw The Light~
- 暁のコドウ
- I'll Be The Music
- Lovely Barks
UNCHAIN(あんちぇいん)
京都府京丹後市出身のロックバンド。1996年に中学の同級生だった谷川正憲(Vo, G)、谷浩彰(B)、吉田昇吾(Dr)によって結成される。後に佐藤将文(G)が加入。ジャズ、ブルース、フュージョン、ソウルなど幅広い音楽を独自の解釈で昇華させたグルーヴ感あふれるサウンドや、フロントマン谷川のクリアでソウルフルなボーカルなど、豊かな音楽性が耳の肥えたリスナーから支持を集める。2005年に発表した1stミニアルバム「the space of the sense」は無名の新人バンドにもかかわらず、好セールスを記録しその名を一気に全国区へと拡大。ライブバンドとしても定評があり、初出演を果たした「COUNTDOWN JAPAN 07/08」では彼らのパフォーマンスを観るために数多くの観客が詰め掛けた。結成当時から英詞にこだわっていたが、よりメッセージを伝えるために2008年リリースの作品から日本語詞を採用。2011年12月からカバー楽曲配信シリーズ「Love & Groove Delivery」を3カ月連続で敢行し、2012年に通算5枚目となるフルアルバム「Eat The Moon」をリリースした。2013年もカバーアルバム「Love & Groove Delivery」、オリジナルアルバム「Orange」を短いスパンで発表するなど精力的な活動を展開している。