ナタリー PowerPush - 上坂すみれ

モモーイ! ボトムズ! テクノポップ! プロジェクトすみぺ第2章の幕が開く

指導者すみぺ、かく語りき

上坂すみれ

──「SUMIRE #propaganda」は本格的なドラムンベース。倍速ドラムとレゲエを基調にしたベースでリズムを構成して、そこに乗る上坂さんのボーカルもメロディを歌うのではなく、1つの音色、声ネタのように扱われている。こういう楽曲って上坂家のCD棚には?

まさか自分が歌うことになるとは思ってなかったんですけど、好きで聴いてはいました。それこそ佐野さんが作った「リッジレーサー」の曲みたいに、レーシングゲームのサントラには、こういうスタイリッシュなダンスミュージックって多いですよね。摩天楼が似合うサウンドというか(笑)。で、その摩天楼系でスタイリッシュなドラムンベースに、「裏切りは罪さ」「腐敗は全て消し去れ」という、畑さんの軽いディストピア的な歌詞と、私の声が乗る不思議な組み合わせの曲になったかなって思ってます。

──確かにケミストリーが起きてますよね。歌詞カードだけ見るとちょっと言葉が強すぎる気がするんだけど、そこに佐野さんの音と上坂さんの声がミックスされることでドラムンベースならではの浮遊感が生まれている。

もしかしたら私が勝手に思っているだけなのかも知れないんですけど、後衛の上坂すみれのように、ちょっとアナクロで現代になじみきれていない、そういう葛藤の中に生きている人には、この不思議な食い合わせの曲を気に入っていただける気がするんですよ。

──あっ「SUMIRE #propaganda」は同志をプロパガンダするための楽曲だったんですか(笑)。

「そういう同志諸君に届いたらいいな」って指導者たる前衛の上坂すみれは思ってるはずです(笑)。「佐野さんの手がけたゲーム音楽や、OMYのアルバムと一緒に聴きたまえよ」って。

私は“過渡期スクール”

──ちょっと話が前後してしまうんですけど「げんし~」がオープニング曲に採用されている「げんしけん二代目」の描くテーマの1つにオタクの世代の対比があります。

はい。

──オタクサークル「げんしけん」のOBである斑目くんのような、オタクであることにちょっとコンプレックスのあるオールドスクールなオタクと、新人げんしけんメンバーのような、オタクであることに屈託がなくてアクティブなニュースクール型のオタクの両方が物語に登場する。上坂さんはどちらだと思います?

オールドスクールですね。で、中学生のとき、いろんな同人誌の即売会やコスプレのイベントに連れていってくれた同級生がいたんですけど、その友人はまさにニュースクール、ニュージェネレーションでした。

──ニュー“ジェネレーション”って、同級生ですよね?(笑)。

そうだ、ジェネレーション一緒だ!(笑) でもその人は即売会に行くと「スケッチブックにイラストを描いてください」とか「コスプレの写真を撮っていいですか?」って感じでいろんな人と交流しているんですけど、旧型のオタクである私はそれが全っ然できなくて! コスプレを観るのが大好きだったんですけど、1年くらいはなんにも写真に収めることができずにただひたすらおとなしく買い物をして帰ってきてたんですよ。「なんか最近のオタクっていうのは明るいなあ」って言いながら(笑)。だから斑目さんの気持ちはよくわかりますね。

──なのに1年もの間、誘われるたびについていっていたんですか?

イベントに行くこと自体は好きでしたから。でも1人で行く勇気はなかったので、誘ってくれたことがホントにうれしくて。それに1年通ったことでコスプレイヤーさんに「写真撮ってもいいですか?」って声をかけられるようにもなりましたし。だから私はオールドスクールやニュースクールではなくて、“過渡期スクール”なのかもしれない(笑)。そして過渡期スクールだからこそ、桃井さんが作ってくれた「ヲタもサブカルも どっちだっていいじゃない」っていう歌詞を歌えることがうれしいんだと思います。

上坂すみれ 2ndシングル「げんし、女子は、たいようだった。」 / 2013年7月10日発売 / スターチャイルド
初回限定盤[CD+DVD] / 1700円 / KICM-91455
アニメ盤[CD] / 1500円 / KICM-91456
通常盤[CD] / 1200円 / KICM-1457
CD収録曲
  1. げんし、女子は、たいようだった。
  2. テトリアシトリ
  3. SUMIRE #propaganda
    (※通常盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「げんし、女子は、たいようだった。」Music Video
上坂すみれ(うえさかすみれ)

ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。小学生時代よりジュニアモデルとして活動。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューし、同年「中二病でも恋がしたい!」や「ガールズ&パンツァー」など注目作に立て続けに出演する。その一方でラジオ、イベント、アニメ誌、カルチャー誌などを通じて、無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることがファンの知るところに。2013年4月、その趣味の世界をダイレクトに反映したシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。7月に桃井はるこ作詞作曲による2ndシングル「げんし、女子は、たいようだった。」をリリースした。