ナタリー PowerPush - Twilight Shower
Mummy-D×田我流「B-BOYイズム対談」
ウタさんは飛ばして俺のカッコいいとこだけ
田我流 俺、今回対談があることもあって「メイドインジャパン~THE BEST OF RHYMESTER~」に載ってるライナーノーツを読んできたんですよ。
Mummy-D へー、どんなこと書いてあったっけ? もう忘れちゃったよ。
田我流 俺、2枚目の「B級映画のように2」作ったら、次何作ればいいかわかんなくなっちゃったんですよ。でも、リスナーのハードルは前より確実に高くなってるだろうし……、とか不安になってて。でもライナーを読んで「あ、そういうときはやっぱホテルとかこもって書くものなんだ」ってスッキリしたんですよ。
Mummy-D あはははは!(笑) やってないやってない、そんなこと全然やってない。
田我流 マジですか!? でもああいうのを残してもらえると後輩としてはありがたいんですよ。戦場の体験記じゃないけど、「あっ、すげー創意工夫してこういう作品になったんだな」って知ることができるじゃないですか。
Mummy-D 確かにそういうの、わかんないからね。俺も昔Pete Rock and C.L.Smoothが制作を行ってるという地下室のすげー小さい写真を雑誌の片隅で見つけて、「すっげ! こんななってんだ」みたいに興奮してたからね(笑)。「あのレコードがある」とか、「機材は俺らと同じの使ってるよ!」とかね。そういうのを観るときって、少ない情報の中からいろんなことを得ようとするじゃん。あとレコーディングの裏話とか、人となりが匂ってくるような話はやっぱりすごい面白いよ。
──田我流さんは「B級映画のように2」の制作裏話みたいのないんですか?
田我流 いや、もうとりあえずよく泣いてたっすね。
Mummy-D はははは(笑)。
田我流 泣くんすよ、なんか。めっちゃ「よしいい曲できた」ってときはなんか涙出てくるんですよね。俺、自分で感動して泣けなかったらダメだと思うんですよ。まずそこが1つのボーダーライン。でも相当恥ずかしいと思います。人には見せれないっす、本当に(笑)。
Mummy-D 俺もね、そういうのある。でも、泣かないよ(笑)。
田我流 あとCDができあがった直後に、俺は1人でドライブするという儀式がありまして。レコーディング作業が終わるのって、だいたい朝なんですよ。しかも3日間くらい寝てない。そういう状態で、できたてのアルバムを曲順通りに聴きながら山中湖方面を流すんです。そこで自分で自分に感動する(笑)。
Mummy-D で、泣く(笑)。
田我流 うーっつって、むせび泣くっす。
Mummy-D アホですねえ。
田我流 ここ、いいリバーブかかってるとか。
一同 あははは(笑)。
田我流 それで自分を総括して、寝るっていう。
──あはは(笑)。Dさんにもそういう儀式みたいなのあるんですか?
Mummy-D レコーディングが終わったら、まず家帰って、ビールを飲んで耳を麻痺させつつ、気持ちはひたすら高揚させていくんですよ。それで深夜にヘッドフォンで自分のカッコいいとこだけを何度も聴く(笑)。もちろん爆音で。
田我流 ヤバいすね、それ(笑)。
Mummy-D カッコいい自分だけに気づくシチュエーション作りが重要なんだよ。お気に入りのバースを繰り返し繰り返しiTunesで聴いて「やっべー、俺、天っ才!」とかやってるね。
──そこに宇多丸さんのバースは入ってこないんですか?
Mummy-D ウタさんのとこはペッて飛ばしちゃう(笑)。だから意外とトータルの再生回数は2回とか。
──iTunesは曲の最後まで聴かないと1回とカウントされませんからね(笑)。
Mummy-D あっれー? もっと聴いてるはずなのに……って。
俺、Dさんのビートでラップしてみたいです
──今日はお2人のさまざまな「B-BOYイズム」を聞かせていただきました。
Mummy-D いやー、今日は楽しかったよ。
田我流 俺、Dさんの作ったビートでラップしてみたいです。
Mummy-D やるやる。
田我流 ひとつ質問があるんですけど、「キング オブ ステージ」のトラックを作るのってどれくらい時間かかったんですか?
Mummy-D うーん、1晩2晩だよ。サンプリングしてドラム足して「できたー! 俺、天才!」って。
田我流 あの曲って大味ですよね。
Mummy-D うん(笑)。
田我流 実は俺、最近大味な音楽がすごく好きなんですよ。Diamond Dの「Stunts Blunts & Hip Hop」をよく聴いてて。あのアルバムとか、ネタとビートのバランスが悪すぎるんだけど、たぶん「でもこれ最高! グルーヴがヤバい」みたいなノリで作ってるじゃないですか。
Mummy-D あれカッコいいんだよねー。なかなかああいうネタは見つかんないんだよ。
田我流 Dさんの初期の曲ってけっこう大味なんだけど、ノリがすげえヤバくて。で、改めて最近「何が俺をヒップホップにここまでのめり込ませたのかなあ」とか考えると、やっぱその大味加減なんすよね。
Mummy-D ラフネスね。
田我流 ラフネスなんすよ、やっぱ。
──ありがとうございます。なんか、これを機会に2人がいい形で結ばれれば。
田我流 大味な曲を作っていただいて(笑)。
Mummy-D 全然やります。ライブとかも定期的に一緒にやっていきたいよね。
- スペースシャワーTV「Twilight Shower」
スペースシャワーTV「Twilight Shower」
<出演者>
SUMMIT(PUNPEE, GAPPER, SIMI LAB, THE OTOGIBANASHI'S)、SOIL & "PIMP"SESSIONS、DJみそしるとMCごはん、田我流 feat. Stillichimiya、toe、七尾旅人、やけのはら+ドリアン+VIDEOTAPEMUSIC、RHYMESTER
<放送日時>
- 2013年10月18日(金)
24:00~25:30(初回放送) - 2013年11月14日(木)
26:00~27:30(リピート) - 2013年11月25日(月)
25:00~26:30(リピート)
Mummy-D(まみーでぃー)
日本を代表するヒップホップグループ・RHYMESTERのラッパー / プロデューサーで、グループのトータルディレクションを担う司令塔。ジャンル外からの信望も厚く、椎名林檎、スガシカオなど多くのアーティストの作品にラッパー、プロデューサーとして参加している。2004年にはSUPER BUTTER DOGのギタリスト・竹内朋康とラップ&ギターという変わった編成のユニットマボロシを結成し、3枚のアルバムをリリース。最近ではテレビのクイズ番組で活躍するなどといった一面も見せる才人。
田我流(でんがりゅう)
山梨を中心に全国的に活躍するラッパー。2011年に公開された富田克也監督の映画「サウダーヂ」で主演を務めたことをきっかけに名前が広がり、2012年4月に発表したアルバム「B級映画のように2」でその評価を確固たるものにする。その後eastern youthの企画イベント「極東最前線」にヒップホップアーティストとして初めて出演し、さらにフラワーカンパニーズとのツーマンライブも実施。ヒップホップというジャンルを超えて、さまざまな音楽シーンで活躍している。最新作はライブDVD「B級TOUR -日本編-」。