ナタリー PowerPush - Twilight Shower
Mummy-D×田我流「B-BOYイズム対談」
おっさんを褒め殺すのはもう止めて
Mummy-D そういえば、「Twilight Shower」の2週間くらい前に地元で軽く飲みに行ったら、かわいい顔した男の子にいきなり声かけられたんだよ。俺もたまにそういうことあるから、ちょっと話してたら「実は自分、THE OTOGIBANASHI'Sというグループをやってまして」とか言い出して(笑)。
──それはもしかしてbimくんですかね(笑)。
Mummy-D そうそう! 「PV観たよ!」って言ったらステッカーくれた(笑)。
田我流 俺もよく会うんですよねえ(笑)。
Mummy-D その2週間後に同じステージに立ってるんだから面白いよね。
──若手との絡みといえば、DさんはSALUくんの「Changes feat. Mummy-D」に客演で参加されてましたね。
Mummy-D いやー、緊張したよー。だっておっさんラッパーがどういうスタイルでくるか、若者にはすごく注目されちゃうじゃん。
田我流 でもDさんのバースはマジでハンパじゃなかったですね。普通16小節で、あんなに理路整然とした歌詞は書けません。
──田我流さんが好きなDさんの曲ってほかにもありますか?
田我流 「ダーティーサイエンス」に入ってる「It's A New Day」ですね。あの曲聴いて、「うわ、なんだこれ」と思って。「なんでこんな簡単で、誰もが使える言葉なのに、こんなに(情景が)浮かんでくんだ」みたいな。もはやこれはアートだなって思ったんですよ。本当にヤバい、食らいました。
Mummy-D あー、本当。
田我流 出だしの「23時のメトロ なだれこむ乗客 / 人差し指で撫でる ガラスのタッチパネル / ヘッドフォンから漏れる 耳障りな四つ打ち / だけどそれよりさらに 耳障りな誰かの舌打ち」とか、もううまい!って(笑)。
Mummy-D それはうれしいけどね。でも俺は性格的にどんどん整理してっちゃうタイプだから、それがなんかね……。さっき田我流が言ってたみたいな、整理しきれない感情の塊みたいなものが出てしまうのに憧れる。ないものねだりかもしんないけどね。っていうか、おっさんを褒め殺すのはもうやめてください(笑)。
「やべ~勢いですげー盛り上がる」の面白さ
──Mummy-Dさんが好きな田我流の曲はありますか?
Mummy-D 「やべ~勢いですげー盛り上がる」。あの曲すごいよ。わかりやすい言葉のパワーがあったから、ちゃんとヒップホップの中で新しいクラシックになったよね。
田我流 俺、あの曲がCMとかで使われたら、100%売れると思うんだよなー(笑)。
Mummy-D どこかから話来ないの?
田我流 来ないっすねー。
Mummy-D あの曲が素晴らしいのは、「やべ~勢いですげー盛り上がれ」じゃないとこなんだよね。普通、あの場合は「盛り上がれ」なんだけど、あの曲は「盛り上がる」なんだよ。自己完結してる(笑)。ヒップホップとかロックにありがちな命令じゃない。それで田我流たちはステージで超楽しそうに大暴れするから、観客はその勝手さにもはや笑うしかない。
田我流 実は、それとまったく同じ指摘をつい最近フラワーカンパニーズの鈴木圭介さん(Vo)から受けたんですよ。「ロックだったら『盛り上がれ』だよね」って。
──そもそもこの「やべ~勢いですげー盛り上がる」はどんな経緯でできたんですか?
田我流 stillichimiyaのMMM(トリプルエム)がフライヤーで誰かを紹介するときに書いた一文なんですよ。それがあまりにも面白いから、これで曲書こうって話になって。
Mummy-D 俺も「この曲、面白れーなー」って聴いてたんだけど、途中からこの面白さはなんだ?と思って注意して聴いたら、「あれ? 語尾がおかしいぞ」。……「盛り上がる」?……「る」!? みたいな(笑)。
田我流 これ読んだ広告業界の方、CMのお話、お待ちしてます!
- スペースシャワーTV「Twilight Shower」
スペースシャワーTV「Twilight Shower」
<出演者>
SUMMIT(PUNPEE, GAPPER, SIMI LAB, THE OTOGIBANASHI'S)、SOIL & "PIMP"SESSIONS、DJみそしるとMCごはん、田我流 feat. Stillichimiya、toe、七尾旅人、やけのはら+ドリアン+VIDEOTAPEMUSIC、RHYMESTER
<放送日時>
- 2013年10月18日(金)
24:00~25:30(初回放送) - 2013年11月14日(木)
26:00~27:30(リピート) - 2013年11月25日(月)
25:00~26:30(リピート)
Mummy-D(まみーでぃー)
日本を代表するヒップホップグループ・RHYMESTERのラッパー / プロデューサーで、グループのトータルディレクションを担う司令塔。ジャンル外からの信望も厚く、椎名林檎、スガシカオなど多くのアーティストの作品にラッパー、プロデューサーとして参加している。2004年にはSUPER BUTTER DOGのギタリスト・竹内朋康とラップ&ギターという変わった編成のユニットマボロシを結成し、3枚のアルバムをリリース。最近ではテレビのクイズ番組で活躍するなどといった一面も見せる才人。
田我流(でんがりゅう)
山梨を中心に全国的に活躍するラッパー。2011年に公開された富田克也監督の映画「サウダーヂ」で主演を務めたことをきっかけに名前が広がり、2012年4月に発表したアルバム「B級映画のように2」でその評価を確固たるものにする。その後eastern youthの企画イベント「極東最前線」にヒップホップアーティストとして初めて出演し、さらにフラワーカンパニーズとのツーマンライブも実施。ヒップホップというジャンルを超えて、さまざまな音楽シーンで活躍している。最新作はライブDVD「B級TOUR -日本編-」。