ナタリー PowerPush - Twilight Shower

Mummy-D×田我流「B-BOYイズム対談」

10月18日(金)24:00からスペースシャワーTVにて、「Twilight Shower」という番組が1時間半にわたって放送される。この番組は、8月30日に山梨・山中湖交流プラザきららで開催された「SWEET LOVE SHOWER 2013」の前夜祭「Twilight Shower」の模様を収めたもの。番組ではRHYMESTERや田我流、toe、七尾旅人らといったジャンルレスなアーティストが集い、個性あふれるパフォーマンスを繰り広げた当日の模様がダイジェストで届けられる。

ナタリーではこの番組の放送を記念して、日本のヒップホップシーンを代表するアーティストであるMummy-D(RHYMESTER)と、地元・山梨を中心に活動するラッパー・田我流の対談を企画。イベントの総括から2人のヒップホップ観に至るまでさまざまなテーマについて話し合ってもらった。「Twilight Shower」のサブテキストとしてぜひ楽しんでもらいたい。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 雨宮透貴

ヒップホップ地獄のイベントを一緒にやりましょう!

──出演者として「Twilight Shower」はどんなイベントでしたか?

写真左から田我流、Mummy-D。

田我流 気持ちよかったです! ロケーションはいいし、メンツは面白かったし。あと俺ら的には地元・山梨で開催されたフェスに出演できたのがすごくうれしかったですね。山梨にもフェスはあるのに、なぜか俺らは全然呼ばれないんですよ(笑)。

Mummy-D あはは、そうなんだ(笑)。でも、田我流のライブすごかったよ。

田我流 マジですか!? ありがたいっす!

Mummy-D とにかくエネルギッシュで、俺ら、食らっちゃってさ。田我流がステージから放つ意思みたいなものをビシビシ感じてしまったんだよ。しかもさ、ライブ中に富士山にかかってた雲が晴れたじゃん。それが銭湯の壁画みたいで。

──「Twilight Shower」のメインステージは富士山が直接見える設計でしたね。

Mummy-D そうそう。それで田我流が富士山を背負ってるように見えちゃったんだよ。もう「参りました!」って感じだったけど、正直ちょっと感動したんだよね。しかも、田我流やPUNPEE、SIMI LABのような今勢いのあるラッパーたちと一緒に出られるイベントが少ないからさ、俺らもかなり気合い入っちゃって。でも今考えると、ちょっと気負いすぎたかなって反省してる(笑)。

田我流 宇多丸さん(RHYMESTER)の「富士山背負ってんのは田我流だけじゃねえんだよ!」っていうMCはかなりパンチありましたからね。俺ら、RHYMESTERのステージ観てめっちゃ感動しちゃって。今度、俺らとイベント企画しましょうよ! ヒップホップ地獄な感じの。

Mummy-D ヒップホップ地獄、いいね(笑)。

3万人の頭にはてなマークが浮かぶのが見えた

──Mummy-Dさんも田我流さんも今回の「Twilight Shower」のような他ジャンルとの対バンはかなり積極的に行っていますよね。

田我流 そうすね。この前フェスかなんかの動画でRHYMESTERがすごい人数の観客を前に「俺たちはヒップホップをもっと広げたい」的なことを言っていて。「ヒップホップがチャートにどんどん食い込んで、マジヤバい音楽だっていうの俺たちが証明する」みたいな。それにすごい感動したんですよ。確かバックバンドがBank Bandだった気がするんですけど……。

──「ap bank fes」ですかね、それは。

Mummy-D うん。3万人くらいのお客さんがいたんだけど、俺らが出て行った瞬間にはてなマークが3万個くらい浮かぶのが見えた(笑)。

──確かに「ap bank fes」だと、通常のフェス以上にヒップホップリスナーが少なそうですよね。そういう場合、RHYMESTERはそのアウェー空間をどう切り崩していくんですか?

Mummy-D そこはテクニックだよね。音楽で真っ向から勝負を挑んでもどうにもならないことがあるから、そういうときはウタさん(宇多丸)とMCでおどけたりして。そのあとに俺たちがこの場を心から楽しんでいるっていう姿を見せたりする。そういうのって驚くほどすぐにお客さんに伝わるんだよね。そうやって徐々にアウェーの空気感を変えていくんだ。で、気付いたときにはヒップホップに引きずり込んでいる(笑)。

──田我流さんもロックバンドとのツーマンが多いですよね。直近だとeastern youthとかフラワーカンパニーズとか。

田我流

田我流 今Dさんの話を聞いて、「あ、やっぱ同じなんだ。よかった」とか思いました。俺の場合は、すでに完成された世界観を持っているアーティストとやらせてもらうことが多いから、毎回が戦いです。そういうアーティストのファンの人は、新しい価値観を必要としてない場合が多いんですよね。でも俺はドMだからそういう雰囲気がたまらない(笑)。どうやったら、そういう人たちに「これも悪くねえ」って言わせられるか?みたいな。

Mummy-D いや、むしろドSでしょ(笑)。だってそれ、寿司屋で握りを頼んだ客に「カレーです! どうぞ!」って出してるようなもんじゃん。

田我流 確かに(笑)。でも、そういう人に「これも悪くねえな」って言わせたときの快感を知ってしまったんですよ。だから、どんどんそれを求めてしまう。俺、この前思ったんですよ。ヒップホップ以外との他流試合は野球で言ったら、9回2アウト満塁を背負ったピッチャーみたいな感じだなって。投げる球全部狙ってくみたいな。わざと外してみたり、カーブで攻めてみたり。最後抑える球も、頭の中に確実にあるけど、そこまでどういうふうに配球してくかっていう。ただ1つ言えるのはミスができない。

──それはライブの最初から最後まで?

田我流 そうっすね。自分のダメなとこも全部含めて、使える武器は全部使う。

Mummy-D 「Twilight Shower」のステージを観てて思ったけど、田我流はステージ進行がうまいよね。あと、Young-G(stillichimiya)がいろいろやりすぎだよ!(笑) トラック出し、スクラッチ、田我流とのMCの掛け合い、あげくの果てにラップまで……。ウタさんと一緒に観てて「これ、うちのJIN(DJ JIN / RHYMESTER)より忙しいんじゃないか」とか話してたんだ。

田我流 すさまじいですよね。本人はDJやりながらセックスできるって言ってました。

Mummy-D マジかよ!(笑) でもさ、さっき言ったライブ進行とか、Young-Gとのコンビネーションとかそういうのは、やっぱ他流試合とかで磨かれていったものなの?

田我流 はい。あとツアーですね。

──DVDにもなった「B級TOUR -日本編-」ですね。

田我流 うん。でも俺はまだ3万人の前でライブしたことはないし、Dさんからは学ぶことが多いですね。

スペースシャワーTV「Twilight Shower」
スペースシャワーTV「Twilight Shower」
<出演者>

SUMMIT(PUNPEE, GAPPER, SIMI LAB, THE OTOGIBANASHI'S)、SOIL & "PIMP"SESSIONS、DJみそしるとMCごはん、田我流 feat. Stillichimiya、toe、七尾旅人、やけのはら+ドリアン+VIDEOTAPEMUSIC、RHYMESTER

  • SUMMIT(PUNPEE, GAPPER, SIMI LAB, THE OTOGIBANASHI'S)
  • SOIL & "PIMP"SESSIONS
  • DJみそしるとMCごはん
  • 田我流 feat. Stillichimiya
  • toe
  • 七尾旅人
  • やけのはら+ドリアン+VIDEOTAPEMUSIC
  • RHYMESTER
<放送日時>
  • 2013年10月18日(金)
    24:00~25:30(初回放送)
  • 2013年11月14日(木)
    26:00~27:30(リピート)
  • 2013年11月25日(月)
    25:00~26:30(リピート)
Mummy-D(まみーでぃー)

日本を代表するヒップホップグループ・RHYMESTERのラッパー / プロデューサーで、グループのトータルディレクションを担う司令塔。ジャンル外からの信望も厚く、椎名林檎、スガシカオなど多くのアーティストの作品にラッパー、プロデューサーとして参加している。2004年にはSUPER BUTTER DOGのギタリスト・竹内朋康とラップ&ギターという変わった編成のユニットマボロシを結成し、3枚のアルバムをリリース。最近ではテレビのクイズ番組で活躍するなどといった一面も見せる才人。

田我流(でんがりゅう)

山梨を中心に全国的に活躍するラッパー。2011年に公開された富田克也監督の映画「サウダーヂ」で主演を務めたことをきっかけに名前が広がり、2012年4月に発表したアルバム「B級映画のように2」でその評価を確固たるものにする。その後eastern youthの企画イベント「極東最前線」にヒップホップアーティストとして初めて出演し、さらにフラワーカンパニーズとのツーマンライブも実施。ヒップホップというジャンルを超えて、さまざまな音楽シーンで活躍している。最新作はライブDVD「B級TOUR -日本編-」。