音楽ナタリー PowerPush - TWEEDEES

清浦夏実と沖井礼二が生み出したバンドマジック

TWEEDEESが与えてくれた何か

──清浦さんの持ち味がおそらく沖井さんの音楽にも作用しているのだろうなと感じられる要素が、今回のアルバムには多々あって。「ブリキの思い出」みたいな曲って、今までの沖井さんにはなかったタイプですよね。クレジットを見ずに聴いたときは「これは清浦さん作曲なのかな?」と思いました。

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沖井 そうなんですよ。ええ。それはレーベルの人も言ってました。自分らしくない曲を作ろうとか思ったわけじゃなくて。自分でもびっくりした曲ですね。こういう曲を、なおかつこういうアレンジで今の僕ができるとは思ってもいなかったので、間違いなく彼女からの影響、気付かされた何かだと思います。FROGでは出てこなかっただろうし、ほかの方への提供曲でもこれは出てこなかったと思う。TWEEDEESが与えてくれた何か。

──「ブリキの思い出」は清浦さんの作詞家としてのセンスも冴えているなと感じました。

清浦 うれしいです。これはデモの段階で「ブリキの思い出」というタイトルが付いていたんですよ。ブリキの思い出ってどんな思い出だろう、というところから書いていったんですけど……泣きながら書いてました。いい話やあーって(笑)。

沖井 この人は幸せな人だなあと(笑)。自分の作品を泣きながら書いて。

──歌詞はお2人とも書いていますけど、映画的な背景というのが2人の共通項かなというのを感じます。アメリカンコメディ的なものやヨーロッパのロマンティックな映画、あるいはディズニー映画を感じさせるものなど。「ブリキの思い出」も上品で童話的、ディズニー的な優しさがあって。

清浦 それは初期設定で出てきたものですね。「あなたにはがっかり」は私は「不思議の国のアリス」だと思って書いているし、「月の女王」のファンタジー感もそうですね。

僕たちがやろうとしていることはド王道

──カバー曲として「Over The Rainbow」というド王道をあえて選んだのも、2人が持つこのバンドへのイメージを明言するためのものなのかなと。

沖井 「Over The Rainbow」は20世紀で最もきれいなメロディの1つですし、誰もが知っている曲だから、彼女も歌うのは大変なプレッシャーだったと思うんですけども、今僕たちがやろうとしていることはまさにド王道なんだなと思うんです。この曲はバンド結成のかなり初期の段階でやろうって言ってたんだよね。

清浦 映画音楽のカバーをやりたいというのがまずあって。でも適当な映画音楽じゃダメだぞと。「Over The Rainbow」は「オズの魔法使」の音楽ですけど、「オズの魔法使」は映画がちょうど白黒からカラーに移った1作目なんですよね。それってすごくTWEEDEESっぽいなとも思っていたし、新しい何かが始まる感じが今の私たちの気分に合うなって。

沖井 「オズ」は見方によってはすごくサイケデリックな映画で。ただきれいな曲というだけじゃなく、我々なりにサイケデリックなアレンジにしてみました。

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清浦 逆にジミヘンは今回カバーして初めて知りました(笑)。

──「Crosstown Traffic」ですね。

沖井 逆にこの人が「ジミヘン大好きです」って言うような人だったら、このバンド自体やってなかったかもしれない。

清浦 初ジミヘンさんでした。

沖井 ジミヘンさん(笑)。いいね。ジミヘン先生、ジミヘン親方……。

清浦 ジミヘン師匠(笑)。

生き生きバンド、TWEEDEES

──それぞれの持ち味を生かしつつ、それぞれが持っていない部分を覚醒させながら作り上げた、非常にバンドらしいアルバムになっていると思います。

沖井 TWEEDEESは沖井礼二のことを知らない人、清浦夏実を知らない人に届けたいという気持ちが特に強いですね。10代20代に届けばいいなと。どうせ10代20代に響く音楽は30代40代にも届くんですよ。わざわざ30代40代のために音楽を作る必要はないという気付きが……ちょうどFORTEZZAからTWEEDEESに変えようと思ったときにその思いが強く芽生えたんです。それを気付かせてくれたのは彼女や竹坊(竹達彩奈)だったりするんですけど。

──では最後に、今後このバンドをどうしていきたいかを……あえて沖井さんではなく清浦さんに聞きましょうか。

清浦 面白いバンドにしたいというのがまずあって。なんでも笑えるようなバンドになりたいというか。あとは、もっと生っぽくしていきたい。

沖井 アレンジ的な意味で?

清浦 そう。もっと生き生き……? なんだろう、アルバムのレコーディングを進めるにつれて、曲がどんどんシンプルになってきたんですよ。もっとその方向で進めてみたいと思います。

──それを清浦さんなりに表現すると「生き生き」なんですね(笑)。沖井さんはこの意見どう思いますか?

沖井 いや、生き生きバンドであることはとてもいいと思いますよ(笑)。ただね、あなたはたぶん質問に答えられていない。自分のバンドへの気持ちはそうかもしれないけど、対世間に向けてどう打って出たいかを聞かれてるんだと思うよ。

清浦 ……あんま考えてなかったな。

沖井 や、それでいいんだと思うよ(笑)。ニュートラルなのがこの世代の特徴だと思うんですよ。ここで24歳の女の子がとうとうと能書きを垂れてたら、あまり説得力がないんじゃないかな。

──清浦さんがニュートラルにまっすぐ立っていることが、TWEEDEESにとって重要なことかもしれませんね。

沖井 そう思います。でも好奇心は大事にしてほしいですね。彼女が何に反応するのかを見て、研究するのが僕の仕事だから。

TWEEDEES
1stアルバム「The Sound Sounds.」/ 2015年3月18日発売 / 3024円 / 日本コロムビア / COCP-39060
収録曲
  1. あなたにはがっかり
  2. Rock'n Roll is DEAD?
  3. 月の女王と眠たいテーブルクロス
  4. The Sound Sounds.
  5. 祝福の鉄橋
  6. Boop Boop Bee Doop!
  7. 蝉時雨の止む頃に
  8. Crosstown Traffic
  9. ブリキの思い出
  10. 電離層の彼方へ
  11. Over The Rainbow
  12. KLING! KLANG!!(album mix)
TWEEDEES(トゥイーディーズ)
TWEEDEES

シンガー清浦夏実と作曲家・音楽プロデューサー沖井礼二によるバンド。2015年1月にバンド結成を発表し、同時にオリジナル楽曲「KLING! KLANG!!」を配信限定シングルとしてリリースした。同年2月には東京・Future SEVENにて初ライブ「TWEEDEES Premium Show」を実施。同年3月に1stアルバム「The Sound Sounds.」を発表する。