音楽ナタリー PowerPush - TWEEDEES

清浦夏実と沖井礼二が生み出したバンドマジック

ソロシンガーとして活動していた清浦夏実と、元Cymbalsでサウンドプロデューサーとしても活躍する沖井礼二が、新たなバンドTWEEDEESを結成した。2年以上におよぶ長い準備期間を経て完成した1stアルバム「The Sound Sounds.」には、“バンド”ならではの有機的な変化を感じさせる12曲が並んだ。インタビューでは、2人がバンド結成に至った経緯や長きにわたったアルバム制作の裏側、TWEEDEESが“バンド”であることにこだわる理由をじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 須田卓馬

僕には顔とノドがない、彼女には曲を書くペンがない

TWEEDEES

──新人バンド……ですよね。

沖井礼二 はい。右も左もわからないですが、よろしくお願いします。

清浦夏実 タチ悪いわあ(笑)。

──新人バンドではあるんですが、それぞれにキャリアがあって知っている人は十分に知っている2人組で。ただ、この2人で“バンド”として活動することは多くの人が予想外だったと思うんですよ。まずはなぜバンドを結成したのかを教えてください。

沖井 彼女のソロアルバム「十九色」(2010年2月発売)が出た頃、私が旅先で寄った植物園から話は始まるんですけど……植物園を散歩していたら、彼女の「アノネデモネ」という曲が流れていて「これはなんだ」と。植物どころではなくなってしまって。FM放送だったから、曲のあとにタイトルコールがあるわけですよ。そのタイトルコールを聴き逃さないように必死で。

──園内スピーカーに耳をそばだてて。

沖井 そうそう。「清浦夏実さんで『アノネデモネ』でした」というタイトルコールを書き留めて、帰宅後すぐにネットで調べたんです。その頃はFROGというソロユニットをやっていたので、あわよくばゲストで歌ってもらおうと思っていたのですが、調べてみたら「19歳かあ……」と。FROGは大人の人に向けた音楽を考えていたので、そこでは「清浦夏実という若くて素晴らしいボーカリストがいる」というだけで収まったんですよ。その2年後ぐらいかな……そこから先はこの人が話したほうがいい。

清浦 沖井さんがSCOTT GOES FORというバンドで活動を始めた頃、私のbayfmのラジオ番組にスコッツがゲストに来てくれたんです。私は大学3年生で、ちょうどその頃Cymbalsの音楽に出会ったばかりだったんですよ。大学の友達に「なっちゃん絶対Cymbals好きだから聴いてみなよ」っておすすめされて。それで「That's Entertainment」(2000年1月発売のメジャー1stアルバム)を聴いて「うわ、すごくいい!」と思った最中にスコッツの音源をbayfmの方からいただいて「……これは!」と。だから番組収録を楽しみにしてたんですけど、そこには沖井さんが来なかったんですよ(笑)。

TWEEDEES

沖井 新井(仁 / Vo, G)くんと坂木(誠 / G)くんが行ったのかな。僕も行く予定だったんだけど、前日まで実家にいて東京に戻ってきた直後だったから「これから幕張のラジオ局に行くのはしんどいなあ」って感じだったんじゃないのかな(笑)。

清浦 せっかくCymbalsの人が来ると思ったのに(笑)。そのあとスコッツのライブにお誘いいただいて、初めてご挨拶したときに「十九色」をお渡ししたら……。

沖井 家に帰ってアルバムを聴いてみたら「……あの植物園の子か!」と。それでメールでやりとりしているうちに「どうやらこの子はウマが合うな」と感じて、最初はFROGのゲストにと思ってたんだけど、これだったら一緒にバンド始めちゃったほうがいいかもしれないなって思ったんです。

清浦 話は早かったですよね。お互いの音楽を知ってたから、あっという間に話は進んでバンド結成に至ったという。

──プロフィールにある「世界観の類似」というのはそのメールのやりとりなどで見つけたところだと思うのですが、気になるのは「利害の一致」というフレーズですよね(笑)。

沖井 んふふ(笑)。簡単に言えば、僕には顔とノドがない、彼女には曲を書くペンがないという。すごくシンプルな利害関係の一致だったと思うんですよ。ただ、逆にそれが罠だったということに後日気付くわけですけれども。

歌い続けるためには何が大事か

──清浦さんは今回のバンド結成に至る前、一度音楽活動を自ら宣言して休止しましたよね。そのあたりのことを改めて話してもらえますか。

清浦 限界だな、って思っちゃったんですよね。ソロで作ってきた楽曲が「十九色」というアルバムにまとまったときに、できあがった安心感と同時に、このまま続けても「十九色」が何枚もできるだけだなという不安も浮かんだんです。このまま続けてもお客さんは喜んでくれないし、いずれ飽きられてしまう。じゃあ何が必要だろうと考えたときに、1本大きな幹がないとだめだなと思って。それまではすべてディレクターさんに委ねてたんですけど、自分が本当に好きな音楽はなんだろうって模索することに躍起になってたのが2011年、2012年ぐらいの頃で。

TWEEDEES

──音楽はずっとやりたかったんですね。

清浦 はい。歌い続けるためには何が大事かを考える時間が必要だったんです。

──20歳前後という年齢や大学生という環境も大きかったかもしれないですね。周りのみんなが将来について考える時期で。

清浦 そうですね。“進路先”を考えたと言ってもいいかもしれない(笑)。

1stアルバム「The Sound Sounds.」/ 2015年3月18日発売 / 3024円 / 日本コロムビア / COCP-39060
収録曲
  1. あなたにはがっかり
  2. Rock'n Roll is DEAD?
  3. 月の女王と眠たいテーブルクロス
  4. The Sound Sounds.
  5. 祝福の鉄橋
  6. Boop Boop Bee Doop!
  7. 蝉時雨の止む頃に
  8. Crosstown Traffic
  9. ブリキの思い出
  10. 電離層の彼方へ
  11. Over The Rainbow
  12. KLING! KLANG!!(album mix)
TWEEDEES(トゥイーディーズ)
TWEEDEES

シンガー清浦夏実と作曲家・音楽プロデューサー沖井礼二によるバンド。2015年1月にバンド結成を発表し、同時にオリジナル楽曲「KLING! KLANG!!」を配信限定シングルとしてリリースした。同年2月には東京・Future SEVENにて初ライブ「TWEEDEES Premium Show」を実施。同年3月に1stアルバム「The Sound Sounds.」を発表する。