「Turkey!」特集 第4回|アザミ×伊藤彩沙 対談 (2/2)

伊藤さんに歌っていただけて本当によかった

アザミ 自分の歌に関しては、けっこう楽器っぽい声の使い方をしているので、そんなに感情が乗らないタイプの声質なんですけど、伊藤さんに歌っていただいたバージョンは感情の振れ幅があるというか。さすが声優さんだけあって、歌声自体に非常に気持ちが乗っているのを感じました。

伊藤 うれしいです。でもアザミさんの歌声からはいろんな情景が浮かんできますし、私は本当に感動しました。とにかくもう、なんといっても声がカッコいい!

アザミ あははは。

伊藤 Bメロの抜け感とかもカッコよくて、技術的にも表現力的にも憧れますし、勉強にもなりました。視聴者の皆さんにも、まずはやっぱり作詞作曲をしてくださったアザミさんのオリジナルを聴いて、ニュアンスを含めたすべてを食らってほしいなと思います。そのうえで、七瀬が歌ってみたほうは「ほう、こんな感じか」と違いを楽しんでいただけたらうれしいですね。

二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

アザミ この「Strike freedom!」というタイトルは「自由を掘り当てろ」という意味なので、伊藤さんの歌声からはその情熱がダイレクトに伝わってくるなと思いました。サビは音程がだんだん上がっていくメロディで……歌詞では「奥」と言ってるので方向としては下ですけど、先へ先へ進んでいくイメージなんですね。自由を手に入れるために掘り進めていく推進力と言いますか、情景がすごく浮かんでくるのが非常にいいなと思いました。

伊藤 私の場合、今回に限らず、歌うときはアニメーションの映像が常に浮かんでいるタイプなんですよ。「ここでキャラクターが歩いているな」とか「ここはみんなの止め絵が使われるパートかな」とか。この曲は特にそれが鮮明に浮かんできました。

アザミ へえー、そういうものなんですね。

夏夢と二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

夏夢と二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

伊藤 自分の中では特別「アザミさんの歌唱からこういうふうに変えてやろう」とかって意識したわけではなくて。あくまで七瀬として、例えばAメロは心の中でしゃべっているようなモノローグ感があったけど、サビでは胸の内に抱えていたものをわあっと吐き出すように叫ぶイメージで歌っていたかもですね。で、「最後のページ シナリオ通りはいらない」のところで、よりグッと覚悟が決まるような感覚がありました。

アザミ だからやっぱり、アニメを観た方がより七瀬さんの気持ちを受け取れるのは伊藤さんの歌われたバージョンのほうかなと思います。本当に伊藤さんに歌っていただけてよかったです。

第2のお姉さんのような存在

アザミ 「Turkey!」は第1話の急展開もあって「ボウリングアニメじゃないじゃん!」と思っている人もいると思うんですけど、実はけっこう全編を通してボウリングというものがキーになっているんですよね。

伊藤 そうなんです。悪者をやっつけるのにボウリングのボールをぶつけたりしますし(笑)。

アザミ そうそう(笑)。しかもボウリングのストライクって、“開けていく”爽快感があると思うんですよ。「Strike freedom!」でもサビ前にボウリングのストライク音をサウンドエフェクトとして入れてますけど、キャラクター1人ひとりの未来が“開けていく”感じが物語の中でちゃんと描かれるじゃないですか。

伊藤 確かに! ボウリング部の5人全員が、戦国時代での経験を経てひと皮むけていきますもんね。

アザミ 七瀬さんで言えば、夏夢さんとの出会いで父親との確執がほどけていったり、温泉を掘り当てることで未来を切り拓いたり……伸ばし棒のほうの「ボーリング」まで関わってくるという(笑)。そういう意味で、「Turkey!」は一貫してボウリングのアニメだなと思うんです。なので、そういう気持ちでアニメもこの曲も楽しんでいただけたらうれしいです。

二階堂七瀬の父親。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

二階堂七瀬の父親。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

伊藤 アザミさんがおっしゃった通り、この作品においてボウリングって常に象徴であり続けているんです。毎話毎話、かなり踏み込んだ生々しいテーマ性が描かれていくんですけど、それを乗り越えるうえでボウリング競技の考え方が生かされていきます。「ボウリングには2投目がある」というセリフなんかも、生きるうえでの指針になり得るものだと思いますし……それぞれのキャラクターが抱えている問題と向き合っていく姿は、きっと視聴者の皆さんの心に深く残るものなんじゃないかなと思いますね。

アザミ 七瀬さんには自由をつかんでほしいですけど、逆に「自由にならないといけないんだ」みたいなプレッシャーになっちゃってもいやだなと思うんですよね。真面目な性格ゆえに、背負い込みすぎちゃうところがある感じがするので。お父さんのように自由な生き方を追求するにしても、誰かのために自分の自由を犠牲にするにしても、ちゃんと自分で納得するまで考えたうえで選択してくれるのが一番いいのかなと思います。

伊藤 なんてうれしいお言葉を……! 七瀬にとってはもう、アザミさんは夏夢さんに次ぐ第2のお姉さんのような存在ですね。

アザミ あははは。

夏夢と二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

夏夢と二階堂七瀬。テレビアニメ「Turkey!」第7話より。

プロフィール

アザミ

作詞作曲編曲、サウンドプロデュースすべてを自身で手がける。これまで4枚のフルアルバムをリリースしており、2023年春に行った初の有観客ライブ「アザミ Oneman Live ''Distract from POPs TOUR''」はチケットが早々にソールドアウトした。2025年8月にはテレビアニメ「Turkey!」第7話のエンディングテーマ「Strike freedom!」を配信リリース。他アーティストへの楽曲提供も行っており、コンポーザーとしてマルチに活動している。

伊藤彩沙(イトウアヤサ)

京都出身、響所属の声優。これまで「もういっぽん!」「BanG Dream!」「ミュークルドリーミー」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」「メダリスト」などのアニメ作品に出演しているほか、「BanG Dream!」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」「ふたりはミルキィホームズ」などの舞台作品にも参加している。2025年放送のテレビアニメ「Turkey!」では二階堂七瀬を演じている。