トラトリの第1歩

──TRUSTRICKはライブなどの自主活動を経てのデビューではなく、まず最初にフルアルバムを発表するというところからスタートしました。場数を踏んで作品を出すという一般的なバンドの順序とは逆でプレッシャーもあったと思うのですが、実際いかがでしたか？

神田沙也加（Vo）　最初のライブ（参照：TRUSTRICK、初ライブで神田沙也加「始まったな」）がアルバムの発売日で、ほぼ知らない曲でライブを繰り広げるような感じでしたし、その後のハイペースな活動はお客さんには負担かなって。でもアルバムをリリースしたあとは、今は動画もすぐサイトにアップできますし、少しずつTRUSTRICKの音楽を認知してもらえている感触はありました。

──1stアルバムを携えてのツアーで制作中の新曲を披露したり、すごく精力的ですよね。

神田　私たちは情報をすぐに解禁しちゃうクセがあるので（笑）。未発表の曲もすでに5曲ぐらいライブでやっちゃってますけど、これはデビュー時の反省点でもあるんです。早めに曲になじんでもらっておいて、門を広くして迎えてもらいたいなって。

──デビューライブ、初のツアー（参照：トラトリツアー千秋楽、沙也加歓喜の新情報も）、そして年末のワンマン（参照：TRUSTRICK“年末の騒ぎ納め”で2ndアルバム発売決定＆5都市ツアーを報告）とライブを重ねてきましたが、目の前にいるお客さんにTRUSTRICKの音楽を届けるのはどんな気持ちでしたか。観ていると、おそらく神田さんのファンは特にライブハウス慣れしてないのか反応がすごく初々しくて。お2人もTRUSTRICKというものをお客さんと一緒に作りながら確認しているような感じがあったのかなと。

神田　そうそう、双方慣れていってる感じというか。私はソロでもそんなにライブをやってこなかったし、ツアーに至っては初めてだから、手探り感はありますね。最近の私の活動を観てくれていた人は、ミュージカルの劇場とかからいきなりライブハウスなので「お互い場違いなところに来ちゃったね」みたいな（笑）。

──ジャケット写真やビデオクリップの印象では寡黙な執事然とした雰囲気のBillyさんが、意外とゆるふわな愛されキャラだということがライブで早々にバレたのも（笑）、親しみやすいという意味ではよかったなと。

Billy（G）　隠せませんでしたね（笑）。人前で音楽をやるとなるとやっぱり。面白くしようとしてるつもりはまったくないんですけど……。

神田　面白くしようとしたらすっごくつまんないと思うんですよ！

Billy　なるほどね。

──神田さんの厳しすぎるツッコミが入るスタンスも確立されて（笑）。そして神田さんもまた、トラトリの活動をしているときは“芸能人・神田沙也加”というイメージがほどよく崩れてるのがいいと思うんですよ。地上に降りてきてる感じというか、ライブハウスサイズの神田さんが観られる場というか。

神田　ああ、それはめっちゃうれしいですね。よかった。

──神田さんにとっての2014年は、トラトリと並行して「アナと雪の女王」のブームもあったわけで。「あの神田沙也加」「アナ雪の人」みたいな大きな看板をいろいろ背負った神田さんが、最近はどの看板を背負ってテレビなどに出ているときも、すごく自由に楽しんでいるように見えるんです。すごく大人だなというか、もし神田さんがもう少し若かったら、その看板が邪魔に感じることもあったかと思うんですけど。

神田　そうですね。背負いすぎちゃうとしんどくなるし、意識的にバランスを取っているところもあるかも。誰もの予想を超える「アナ雪」の大フィーバーも、TRUSTRICKというホームベースがあったからこそ乗り切れたのかもしれないです。

ミニアルバムのはずがフルアルバムに

──デビューからおよそ半年、初ライブやツアーを経て、もう2枚目のフルアルバムというのは珍しいペースですよね。

神田　ですよね。自分たちでもちょっと引いてます（笑）。

──以前お聞きしたときには「1stフルアルバムではいろんなバリエーションを見せたから、次はもっとコンセプトを絞ったミニアルバムを」とおっしゃってたと思うのですが。

神田　そのはず……だったんですけどね。

Billy　できちゃったんですよね。コンセプトを絞るつもりだったんですけど、結果的によりバラエティに富んだものができましたね。

神田　「snow me」のように前のアルバム制作のときにできていたけど“季節待ち”してた曲もあったし、タイアップをいただいたときは1曲決め打ちじゃなくて何曲か候補を作ったりしてたんです。でも曲はいくつあっても困らないから。曲が増えてあとあと使うカードが溜まってきたなと思ってたんですけど、スタッフさんが「こんなに曲があるのに、ミニ（アルバム）に……します？」って（笑）。どれも切るのが惜しいな、今すぐ聴いてほしいなというシンプルな結論なんですけど。あと、このペースでまたフルアルバムを出したらなかなか根性ある感じになるんじゃないかなって（笑）。

──根性見せておこうと（笑）。

神田　でも前に予告していた通り「TRUST」と「TRICK」で構成しようと思うと、次もフルアルバムじゃないと許されないと思うので、Billyが生きていられるかどうか……（笑）。

──年末のライブのMCでも予告のように「『TRUST』ということは次は……」とおっしゃってましたもんね。

Billy　ハードル上げちゃいましたね。このタイトルを付けることによって。「どんなトリックだろう？」という期待にも応えなくちゃいけない……っていう、早くも次回作の不安が（笑）。