音楽ナタリー PowerPush - TRUSTRICK

デビュー7カ月で早くも2ndフルアルバム 神田沙也加×Billy、それぞれの変化

アニソンへの挑戦で発見した新たな表現方法

──ここからは新作について細かくお聞きしたいと思うのですが、まずは先行シングルとなる「FLYING FAFNIR」の話を。この曲はアニメ「銃皇無尽のファフニール」のオープニングテーマで、神田さんが作詞のみならず作曲も手がけていますが……さすがアニヲタだなと(笑)。アニソン的な快楽を知り尽くした人が書いた曲だなという印象でした。

神田 ありがとうございます(笑)。一応2人で1曲ずつ書いたんですけど、最終的にこっちになりました。私自身これまで何曲も心を揺り動かされるアニソンに出会ってきたし、最初で最後かもしれないアニメタイアップだから、全力で作品に寄り添ったものにしたかったんです。タイトルには絶対「FAFNIR(ファフニール)」って入れたくて。シングルはアルバムへの橋渡し的な役割もあるし、ここまでアニソンに特化した曲をシングルとして出したら先々の展開にも影響あるんじゃないかとも思ったんですけど、アニメでTRUSTRICKを知る人にゾクゾク鳥肌を立ててもらわないと次につながらないんじゃないかって。

──音作りはBillyさんを中心に?

Billy(G)

Billy 僕のところにシンセで弾いたメロだけ送られてきて。そこに思いの丈をたっぷりと注ぎました(笑)。自分にとってはアニソンは初めてのチャレンジだから、まずはとにかくいろんなアニソンを聴きました。いろいろ聴いて、アニソンというのは人を振り向かせるフックとなる要素が非常に優れたジャンルだと改めて感じて。自分なりに太刀打ちできる方法はなんだろうと考えたときに、今までやろうとしなかったライトハンドのタッピングという派手なものを詰め込んでみました。

神田 サビの間中ずっとね(笑)。

Billy 普段なら歌の邪魔になるから避けてるんですよ。自分の傾向としては真逆で。

──Billyさんはギタリストながら、基本的に歌を中心にしたポップス志向ですよね。

Billy はい。ギターソロよりもバッキングが好きだし、ごちゃごちゃ弾いてるよりもジミ・ヘンドリックスのチョーキング一発のほうがカッコいいなっていうような。だから自分がやる音楽としてタッピングを入れるようなアレンジは排除する傾向にあったんですけど、今回はここまでやってもいいんだなって。

──アニソンを通ってない人からすると、あの詰め込まれた情報量と快楽の置き方みたいなものはいろいろ発見と試しがいがありそうですね。

Billy 「FLYING FAFNIR」もメロディとメロディの間からいろんなものが伝わってきたんですよね。リスナーに対してはもちろんですけど、まずはこのアニヲタである歌い手の人に納得してもらわないといけないので(笑)。

神田 途中からアニソンを楽しみ始めているのが伝わってきてうれしかったですね。

──カップリングには1stアルバムのリード曲「ATLAS」の英語バージョンや「FLYING FAFNIR」のアニメサイズが入っていたり、アルバムでデビューしたトラトリがシングルとしての様式も楽しんでいる作品になったのかなと。

神田 そうですね、満足してます。余は満足なり(笑)。

こんなはずじゃなかったんですけどね

──そしてアルバム「TRUST」ですが、けっこうギリギリまで練り込んでましたよね。

神田 ギリッギリまでやってましたね。けっこう時間は与えられてたはずなんだけど、だんだん形が見えてきてフルアルバムの実感が湧いてくると、もっとこうしたいという欲求が出てきて。

──1stアルバムではいろんなバリエーションを見せながらも「TRUSTRICKはこうである」という指標を示さないといけなかったと思うんですけど、今作では一旦TRUSTRICKのスタイルを提示したあとがゆえの、より自由な広がりを見せているように感じました。

神田 こんなはずじゃなかったんですけどね。次は照準絞っていきたいって豪語してたのに。だからすっごい恥ずかしいです(笑)。

Billy いやいや、恥ずかしくはないですよ(笑)。前作を踏まえつつ広がりを見せることができたかなと思うので。「MIRRORS」や「snow me」なんかはまさにそうですけど、少し大人なトラトリにシフトできたかなと思います。

神田沙也加が歌う“前向きな逃避”の肯定

──ではここから1曲ずつ詳しく解説をお願いします。まずはオープニングの「TRUST」。前作の1曲目「Ever Blue」しかり、幻想的な導入でアルバムの世界観に引きずり込む要素がある1曲ですね。

神田 順序で言うと最後にできた曲なんですよ。もともとは今回「Ever Blue」のような要素は入れないつもりだったんですよ。ミニの予定だったところからフルアルバムに変更したとき、やっぱりタイトルロールのようなものが欲しいと思ったんです。次の「Escape」が私はすごく気に入っていたので、メッセージ的にも「Escape」につながるように。あとはアルバムを試聴した人が気持ちよく次まで聴いちゃうような、トラップ的な曲にしたくて。試聴者ホイホイ的な?

──試聴者ホイホイ(笑)。重厚なコーラスとオルガンがかなり荘厳な雰囲気で。

神田 コーラスは1人で同じ音を30ぐらい重ねてるんですよ。ちょっと聖歌隊みたいになりましたね。

Billy 続く「Escape」の歌詞に「Escape from Monochrome」というフレーズがあって。その情景が浮かぶようなサウンドを目指してみました。

──その2曲目の「Escape」はすでにライブでも披露していますよね。逃避というある意味すごく強い主張、メッセージを持った曲ですけど。

神田沙也加(Vo)

神田 あまり言いたいことを決めずに、きれいな言葉の羅列として書き進めていったんですけど、書き終えた頃に「これは今回のテーマにしてもいいな」と思ったんですね。あまりにも自分の感覚が失われるような苦難からは逃げてもいいんじゃないかなって。自尊心のために逃げる、前向きな逃避っていう。そういう自分なりの考えが書けたんじゃないかなと思って、すごく気に入っています。

──ここでは「あの神田沙也加」が歌っていることが重要なところだと思うんですけど、マスな立場なら「逃げちゃダメだ」と歌うことを望まれると思うんですよ。神田さんが“前向きな逃避”を肯定することに意味があるなと。

神田 肯定したかったんですよね。今は“好き”のジャンルが枝分かれしてる時代だから、人から批判されるからダメだとか少数派だから生きにくいとか、すごくヤだなと思って。「Escape」という言葉自体はネガティブに聞こえるかもしれないけど、華麗に逃避するみたいな(笑)。そういうイメージですね。さわやかなものにはしたかったんです。それが私がTRUSTRICKでできるようになったことだから。

──そしてシングル「FLYING FAFNIR」を経て、4曲目の「いつかの果て」はトラトリの真骨頂と言えるバラードソングで、アルバムのリード曲としてPVも制作されています。

Billy やっぱり神田沙也加のボーカルはバラードでこそ生きるんじゃないかと思って。一緒に作業を進めているうちに、ここまでは歌えるというキーのレンジが広がってきたので、彼女の歌が一番際立つところを試行錯誤しながら作った曲ですね。こんなに前のほうに置くつもりはなかったんですけど、図らずもいい曲になったので(笑)、早めに聴いてほしいなということでリード曲にしました。

神田 前作でいろんなバリエーションを広げつつも、どの曲が好かれるかはわりと固まるんです。でも今回はまず内部で割れに割れて。リード曲がなっかなか決まんなくて、会議を3回ぐらいやったんですよ。結局、シングルでアップテンポなものが続いてたので、原点に戻る意味でもバラードにしようかって。

Billy あと最終的にストリングスを入れたことで印象が変わったのも大きかったんですね。彼女の歌声とストリングスはこんなに合うんだなって。

神田 今回一番の意外な収穫だよね。

2ndアルバム「TRUST」2015年1月28日発売 / 日本コロムビア
Type-A [CD+DVD] 3564円 / COZP-1001~2 / Amazon.co.jp
Type-B [CD] 3024円 / COCP-38938 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. TRUST
  2. Escape
  3. FLYING FAFNIR
  4. いつかの果て
  5. MIRRORS
  6. キャミソール
  7. Kaleidoscope
  8. Ray of Light
  9. 永遠
  10. Sunny Day
  11. On your marks!
  12. snow me

[Bonus Track]

  1. World's End Curtain Call -theme of DANGANRONPA THE STAGE-(TRUST Mix)
Type-A DVD収録内容
  1. いつかの果て(Music Video)
  2. snow me(Music Video)
  3. いつかの果て(Making Clip)

[TRUSTRICK Eternity Tour 2014 @SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE 2014.9.15]

  1. kissing
  2. If -君が行くセカイ-
  3. Jealousy Jelly
2ndシングル「FLYING FAFNIR」2015年1月14日発売 / 日本コロムビア
Type-A [CD+DVD] 1728円 / COZA-997~8 / Amazon.co.jp
Type-B [CD] 1404円 / COCA-16961 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. FLYING FAFNIR
  2. ATLAS(English Version)
  3. FLYING FAFNIR(Instrumental)
  4. ATLAS(Instrumental)
  5. FLYING FAFNIR(Anime OP Version)
Type-A DVD収録内容
  • FLYING FAFNIR(Music Video)
  • FLYING FAFNIR(Making Clip)
TRUSTRICK(トラストリック)

TRUSTRICK

舞台女優としての活動を中心に、声優、モデルなど幅広く活躍する神田沙也加(Vo)と、2006~13年に上杉昇(ex.WANDS、al.ni.co)率いるバンド・猫騙のメンバーとして活動していたBilly(G)からなるユニット。2014年4月にユニット結成を発表し、6月発売の1stアルバム「Eternity」で日本コロムビアよりメジャーデビューを果たした。ユニット名は「TRUST=信頼、信用」「TRICK=いたずら、策略」の2語を合わせた造語で、少しの毒とファンタジーが共存する独自の世界を構築している。2015年1月にはテレビアニメ「銃皇無尽のファフニール」のオープニングテーマとなるシングル「FLYING FAFNIR」、2ndフルアルバム「TRUST」を続けてリリース。3月には5都市を回るライブツアー「TRUSTRICK TRUST TOUR 2015」を行う。

TRUSTRICK TRUST TOUR 2015
  • 2015年3月14日(土)宮城県 HooK SENDAI
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2015年3月16日(月)愛知県 Electric Lady Land
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2015年3月17日(火)大阪府 Music Club JANUS
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2015年3月19日(木)福岡県 DRUM Be-1
    OPEN 19:00 / START 19:30
  • 2015年3月27日(金)東京都 LIQUIDROOM
    OPEN 18:30 / START 19:30

料金:前売 3500円(全公演共通・ドリンク代別)
一般発売:2015年2月14日(土)10:00

TRUSTRICK Premium Showcase II【ver. TRUST】
  • 2015年1月28日(水)東京都 下北沢GARDEN

<内容>
【第1部】TRUSTRICK(神田沙也加+Billy)、北平誠治(映像監督 / COLOURFIELD Inc.)、松田剛(アートディレクター / quia)によるトークショー
【第2部】TRUSTRICK LIVE

料金:2500円(ドリンク代別)
一般発売:2015年1月10日(土)10:00~