豊崎愛生|初ベストに込めた趣味とこだわり / 念願のアナログ制作現場へ

今だからこそ歌えた「猫になる」

──豊崎さんの場合、毎回新しいリリースがあるたびに作家や演奏者のクレジットを確認するのも楽しいんですよね。何組か常連になっている作家さんもいますが、今作のために制作された新曲「猫になる」は、こちらも9thシングル「CHEEKY」(2013年8月発売)以降おなじみとなっている安藤裕子さんの書き下ろしでした。

「猫になる」は、実は今回のベストアルバムを作る前に、安藤さんが作ってくださっていた曲なんです。ほぼほぼそのまんまのデモをいただいていて。前に安藤さんのライブに遊びに行ったときに「また曲を作ったの。めっちゃくちゃ暗いやつと、めっちゃめちゃ明るいやつ、どっちがいい?」って(笑)。

──結果、めっちゃめちゃ明るいほうが届けられたんですね。

豊崎愛生

おそらく(笑)。この曲は今だからこそ歌えた曲だなと思います。本当にかわいくてポップで、一見ファンタジーみたいな印象ですけど、掘れば掘るほどリアリティを感じる魔力のある曲で。歌い方でその芯の部分を表現する方法もあったと思うんですけど、そうはしませんでした。聴いた人がそれぞれに、オブラートに包まれた中にあるものを感じてもらえると本望です。たぶんデビューしてすぐの頃だったら、ただただかわいい曲として歌ってたと思うんですよね。「わー、猫なんだー」って。

──単に「これは猫になる曲だ」と。

はい。たぶん安藤さんが比喩表現で表そうとしているんだろうなーというところを、頭の中で整理して歌えていると思います。

──過去の曲と並ぶとなおさら、そのあたりがよく見えてきますね。サウンドもシンプルで軽快だけど、すごく練り込まれていて。

私、関(淳二郎)さんのアレンジがすごく好きなんですよ。今回選んだ曲は気付いたら関さん率が高くて。

──あー、確かに。16曲中6曲に関さんがクレジットされています。

「猫になる」はコーラスとか仮ボーカルも関さんが入れてくれていて。あまり聴いたことある人はいないと思うんですけど、関さんのボーカルがまたいいんですよ(笑)。今まで何曲もお世話になっていて、私の音楽の“らしさ”みたいなところって、関さんが持っているものも大きいと思うんです。

リスナー目線で残しておきたい楽しみの余白

──選曲を終えたあと、最終的に収録し損ねて後悔している曲はありますか?

めっちゃありますよ! 言い出したら「入ってない曲全部!」みたいなところもあるんですけど(笑)、あまりネガティブな、「漏れた」みたいな気持ちではないんです。私もほかのアーティストさんのベストを聴くとき、「あの曲、名曲なのにベストに入ってないぞ。でも私は知ってんだよな」みたいな優越感もあって(笑)。そういう枠があってもいいと思うんですよね。「これはシングルを買わないと聴けない」とか、「カップリングにしか入ってないけど実はこれが好き」みたいな曲があるほうが。

──その気持ちはわかります。

そう思ってもらえる曲が、人によってバラバラであればあるほどうれしいし、たくさんの人に「なんでこれ入ってないんだよ!」ってざわついてもらえたら。「love your Best」はあくまで私が思う、私を説明するのにわかりやすい曲と並べ方なので、皆さんが考える「豊崎愛生のベスト」は違うと思うんです。でも本当に、この収録曲が発表されたあと、身近な人から「なんであの曲入ってないの?」と聞かれることがすごく多くて(笑)。例えばシングルのカップリングの中でも遊び色が強い「マイカレー」(2016年8月発売の14thシングル「walk on Believer♪」収録曲)や「おさんぽの唄」(2014年3月発売の10thシングル「ディライト」収録曲)みたいな曲は私の私生活に近い、鼻歌に近い感覚の曲なので、自分を説明するうえでは入れておくべきかなと迷ったんですけどね。でもそれこそ「シングルを買った人だけが知っている曲」としてあるのがいいのかなって。

──気になったアーティストのアルバムに収まってないシングルB面曲を探すのは、音楽を聴く楽しみの中でも大きなポイントだと僕も思います。

ですよね! CDのプラケースをなんとなく開けてみたら中にメッセージが入ってたり、最近は少ないですけどCDの最後に長ーい空白があって、突然2分くらいのおまけ曲が鳴り出すとか、そういうのも音楽を探す楽しみだと思うんですよ。CDはとりあえず曲が終わっても早送りせずじっと待つとか、そういうことをやってきた側と言うか(笑)、じらされてきた側なので、そういう楽しみの余白は残しておきたいんです。

のんびりフェスでマイペースの極みみたいなライブを

──ちなみに豊崎さんが、ご自身の声質だとか立ち位置をまったく考えず、完全に好きなものだけを詰め込んだ音楽をやろうと思ったら、どんな音楽になりますか? 声優の豊崎愛生である、スフィアのメンバーであるといった表向きのイメージを全部取っ払って、完全に素の状態で好き放題に音楽を作るとしたら。

豊崎愛生

あー、どうなんだろうなあ。究極、インストみたいなことになるかもしれない(笑)。でも、私はよく「声優さんのCDじゃないみたいだね」って言われるんですけど、私は声優というお仕事に就いていなかったら曲を出すことすらできていなかったし、こうやって活動を続けることもできていなかったんですよ。すべてのことがつながって今の私があるから……今、全部を取っ払った姿を想像してみたんですけど、うまくイメージできないですね。でも面白いから1回真剣に考えてみよう。どんなことができるかなあ。

──では声優でありスフィアのメンバーである豊崎さんが、これまでの歩みを踏まえてやりたいこと、挑戦したいことはありますか?

フェス……かなあ。最近はあまり行けてないんですけど、昔は友達みんなでテント持って行ったり、お金がないときは物販のアルバイトをして漏れ音を聴いたりもしたこともあって(笑)。基本的にフェスが大好きなんです。最近、大自然の中でアコースティックなアーティストさんがいっぱい出演しているフェスに行って、「私も青空の下で、森林のマイナスイオンを浴びながら歌ってみたいなあ」と思いました。アコギ1本とかで、好きなテンポで歌って、お客さんみんながお酒を飲んだりしながら音楽を楽しんでいるみたいな。雨が降ったら降ったで演出の1つになるし、暗くなっても風が吹いても、ひっくるめて音楽になる感じが素敵だなって。

──豊崎さんの音楽はそういう雰囲気、絶対に似合いますよね。

夢のまた夢ですけど、のんびりゆるゆるなフェスで、マイペースの極みみたいなライブがやってみたいです。

豊崎愛生「love your Best」
2017年7月19日発売 / ミュージックレイン
豊崎愛生「love your Best」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3500円 / SMCL-489~90

Amazon.co.jp

豊崎愛生「love your Best」通常盤

通常盤 [CD]
3000円 / SMCL-491

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. 一千年の散歩中
    [作詞・作曲:安藤裕子 / 編曲:森俊之]
  2. 春風 SHUN PU
    [作詞・作曲:つじあやの / 編曲:関淳二郎]
  3. シャムロック
    [作詞:古屋真 / 作曲・編曲:関淳二郎]
  4. 片想いのテーマ
    [作詞・作曲:つじあやの / 編曲:関淳二郎]
  5. クローバー
    [作詞・作曲・編曲:aokado]
  6. オリオンとスパンコール
    [作詞:古屋真 / 作曲:大沢圭一 / 編曲:関淳二郎、大沢圭一]
  7. シロツメクサ
    [作詞:千葉はな / 作曲:市川和則 / 編曲:塚本亮]
  8. ほおずき
    [作詞・作曲・編曲:蔡忠浩]
  9. Dill
    [作詞:原田郁子 / 作曲:mito / 編曲:クラムボン]
  10. パタパ
    [作詞・作曲・編曲:田村歩美]
  11. 叶えたまえ
    [作詞・作曲:佐藤泰司 / 編曲:シアターブルック]
  12. letter writer
    [作詞・作曲:田淵智也 / 編曲:関淳二郎]
  13. 君にありがとう
    [作詞・作曲・編曲:奥華子]
  14. music
    [作詞:つじあやの / 作曲:mito / 編曲:よだれ虫オールスターズのみなさん]
  15. love your life
    [作詞・作曲:Rie fu / 編曲:馬場一嘉]
  16. 猫になる
    [作詞・作曲:安藤裕子 / 編曲:関淳二郎]
初回限定盤DVD収録内容
  • 「猫になる」Music Clip
  • Best Album TV SPOT 15sec+30sec
豊崎愛生「love your Best Analog Selection」
2017年7月19日発売 / ミュージックレイン
豊崎愛生「love your Best Analog Selection」アナログ盤

アナログ盤
3500円 / SMJL-101

Amazon.co.jp

収録曲

SIDE A

  1. love your life
    [作詞・作曲:Rie fu / 編曲:馬場一嘉]
  2. オリオンとスパンコール
    [作詞:古屋真 / 作曲:大沢圭一 / 編曲:関淳二郎、大沢圭一]
  3. ぼくを探して
    [作詞:Chara+加藤哉子 / 作曲:Chara / 編曲:SWING-O a.k.a.45]
  4. 春風 SHUN PU
    [作詞・作曲:つじあやの / 編曲:関淳二郎]
  5. letter writer
    [作詞・作曲:田淵智也 / 編曲:関淳二郎]

SIDE B

  1. CHEEKY
    [作詞・作曲:安藤裕子 / 編曲:山本隆二]
  2. Uh-LaLa
    [作詞・作曲:つじあやの / 編曲:関淳二郎]
  3. music
    [作詞:つじあやの / 作曲:mito / 編曲:よだれ虫オールスターズのみなさん]
  4. ディライト
    [作詞・作曲・編曲:田村歩美]

イベント情報

豊崎愛生ベストアルバム「love your Best」発売記念インストアイベント

2017年8月27日(日)東京都 AKIHABARAゲーマーズ本店
OPEN 13:00 / START 13:30
内容:握手会
イベント応募券配布店舗:ゲーマーズ全店(オンラインショップを含む)

2017年8月27日(日)東京都 アニメイト新宿
OPEN 15:15 / START 16:00
内容:握手会
イベント応募券配布店舗:アニメイト全店

豊崎愛生(トヨサキアキ)
豊崎愛生
1986年10月28日、徳島県生まれの声優 / アーティスト。2009年放送のテレビアニメ「けいおん!」で主要キャラクターの1人、平沢唯を演じて注目を集めた。同年2月には同じミュージックレインに所属する寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥と共にユニット・スフィアの活動を始め、10月にシングル「love your life」でソロデビュー。以降は、ソロ、スフィア、さらには数々のアニメのキャラクターソングなど幅広く音楽活動を行っている。2017年5月にはソロ15作目となるシングル「ハニーアンドループス」を発表。7月には初のベストアルバム「love your Best」をリリースする。