tofubeats「REFLECTION」インタビュー|突発性難聴、上京、コロナ禍、結婚……さまざまな変化と向き合い、自分自身を観察した日々の記録

tofubeatsがニューアルバム「REFLECTION」をリリースした。

tofubeatsのフルアルバムリリースは2018年発表の前作「RUN」以来およそ4年ぶり。この間に彼の身の回りには、突発性難聴の発症や、生まれ育った兵庫・神戸の街を離れての上京、コロナ禍による活動制限、そして結婚など、公私ともに劇的な変化が起こった。そういった環境の変化や時代のムードをまとった新作「REFLECTION」には、Kotetsu Shoichiro、中村佳穂、Neibiss、UG Noodleといった面々が参加した全16曲が収められている。

またtofubeatsは本作と同タイミングで、2018年に突発性難聴の診断を受けたことを機に非公開で書き始めた3年4カ月分の日記を再構成した初書籍「トーフビーツの難聴日記」を発表した。音楽ナタリーでは「トーフビーツの難聴日記」を軸に、tofubeatsがこの変化の期間をどのように過ごし、「REFLECTION」をどういった思いで作り上げたのか話を聞いた。

特集の後半には、アルバムに参加したゲスト陣による「REFLECTION」に対するコメント、tofubeatsへのメッセージを掲載する。

取材・文 / 天野史彬撮影 / トヤマタクロウ

長い時間をかけるからこそ得られる感情

──「REFLECTION」は前作「RUN」から4年ぶりのフルアルバムとなります。トーフさんにとってフルアルバムというフォーマットで楽曲をリスナーに届けるというのは、どういった意味を持つ行為だと思いますか?

単純に長い時間、人を拘束することによってできることってあると思うんです。特にこの4年間で濱口(竜介)監督の映画で劇伴をやらせてもらったりもして、長い時間だからこそできることをすごく意識させられたんですよね。それに今回のアルバムのテーマはコロナ前から考えていたから、当時はDJをがんばろうと思っていたけど、それは叶わなかった。そういうこともあって、この4年間は長い時間をかけて何かをわかってもらうことや、何かを伝えようと試みることに改めて面白さを感じる期間だったなと思います。

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──長い時間をかけて何かを体感するというのは、確かにフルアルバムの持つ効能の1つですよね。最近は動画なんかも倍速で見るのが当たり前のような時代ですが。

僕もバラエティ番組とかは倍速で観ますけどね(笑)。余談ですけど、「水星」を一緒に作ったオノマトペ大臣は「小津安二郎を倍速で観る」という名言を残しています(笑)。

──(笑)。

僕はそういう人に文化を教えてもらった人間なので、ものぐさな部分もある。ただ、それこそ濱口監督の映画を観ても思いますけど、やっぱり長いものを長いまま観ないとわからない感情ってあるんですよね。小説だって1冊を読むから小説なわけで。それを2倍速で観たり、要約を知るためにまとめサイトであらすじだけを追うことは別に悪いことではないし、僕もしますけど、それとこれとは違う行為だということはわかっていないといけないなと思う。ちゃんと長い時間をかけて表現しているものに対しての軽視はよくないなと。「短い時間ですべてを理解したい」というのは陰謀論なんかに近付いていってしまう気もするので。時間の長さって、ほかに替えることができないじゃないですか。僕も今回、前のアルバムから4年経ちましたけど、4年って長いんですよ。長いからこそ、このドキュメンタリーのようなアルバムができたし、今回、本を出そうと思った理由もそこにあるんですよね。4年分の愚痴がこの本にはあるので(笑)。

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なぜ“鏡”だったのか?

──アルバムと同時に出版される「トーフビーツの難聴日記」も読ませていただきました。トーフさんが2018年に突発性難聴を患われてから、今回のアルバムが完成するまでをつづった書籍で、すごい濃度でした。上京があり、結婚があり、コロナ禍があり……さまざまな事象の中でのトーフさんの心象がつづられていて。

本の中で上京して借りたスタジオ用の物件が水漏れしたエピソードが出てきますけど、ここがあの部屋です(笑)。(※この取材は、都内のtofubeatsのスタジオで行われた)

──今回の「REFLECTION」というアルバムを制作するにあたり、まず「鏡・反射」というテーマがコロナ以前の段階で生まれていたことも「トーフビーツの難聴日記」にはつづられていますよね。改めてなぜこの時期のトーフさんにとって「鏡・反射」というモチーフは重要なものだったのですか?

「鏡」が重要だと思ったからテーマになったというより、鏡を見て「ヤバい」と思ってとっさに写真を撮ったことがあって、「なんで自分は鏡を大事なものかもしれんと思ったんだろう?」という、その理由を発見していくことが今回の「REFLECTION」というアルバムのテーマになりました。なぜ、自分は鏡というありきたりなものに反応したのかを探すようにアルバムを作っていったというか。なので、例えば「Keep on Lovin' You」のシングルでは山根(慶丈)さんに「ジャケットに鏡を入れてほしい」とお願いしたり、意識的にほかに人が作った「ミラー」がタイトルに付く曲を聴くようにしたり、このアルバムの制作期間は自分の意識が鏡に向くように仕向けていった部分もあります。それによって自分から何が出てくるかを見たかった。あと大きかったのは、検温器なんかで自分の顔を見ることが増えたことですね。検温器では体温というレイヤーが乗っかってきますけど、ああやって自分が思い描いているのと少しズレた自分の姿を興味深く観察している時期は長かったと思います。

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──「トーフビーツの難聴日記」の中で、難聴になったことをSKY-HIさんに告げたときに、彼もまた左耳が聞こえていないことを知った、というエピソードがありますよね。そういうふうに自分には見えていなかったものや、自分の周辺にあるものまで映し出すものとしても、「鏡」というモチーフは意味のあるものだったのかなと思いました。

そうですね。難聴になった直後に日高くん(SKY-HI)としゃべったことは、実はけっこう大きくて。耳が聞こえないなんて1ミリも思っていなかった人に、「俺のほうが聞こえていないよ」と言われて、「自分よりも聞こえていない人に俺は相談していたのか!」と驚いたんですよ。いかに自分が、そういうことを考えていなかったかに気付かされたというか。あれは自分にとって大きな事件でしたね。