tofubeats「REFLECTION」インタビュー|突発性難聴、上京、コロナ禍、結婚……さまざまな変化と向き合い、自分自身を観察した日々の記録 (4/4)

4組のアーティストが語るtofubeatsと「REFLECTION」

Kotetsu Shoichiro

Kotetsu Shoichiro

「VIBRATION feat. Kotetsu Shoichiro」の制作を振り返って

男子三日会わざれば刮目して見よ、と松尾芭蕉も言っていますが、三日どころか四年という長きに渡ればこれはもう、これはもうですよね。tofubeatsの四年ぶりのアルバム……あっ、私はKotetsu Shoichiroと申しますつまらん音楽(おと)芸者くずれの半端もんで御座ェやす──昨年の春より「最近ですか?普通にアルバム作ってますね~」と語るtb(私は、トーフさん、と呼ぶのもトーフ、と呼び捨てにするのもしっくり来ず、人との会話ではもっぱらこう呼んでいます。tb means tofubeats。あるいはTB-303。あるいはビートたけし)を「コロナでどこも停滞ムードなのに、tbは曲作ってて偉いなあ。自分も頑張ろう!ダイエットとか」などと完全に他人事決め込んでいたら「小鉄さん、アルバムにラップで参加しませんか?」などと言われるじゃないですか。いや、自分なんてとても……とは一秒も考えず「やるやるやります、何でもやりまっせ」と即答。そしてそれより素早い返信(この世はLOVELESS、だけどtbはいつでも即レス)で送られてきたトラックはBPM100チョイのほんのりラテン風味のパーカッシブな遅ハウス。tbのリリックは既にほぼほぼ入っており、曲のテーマやコンセプトはあえて詳しく聞かず、リリックを聴き込んでこっちで熟考&妄想「まあ、こういう事でしょう!多分」とこちらもリリックを書いてよこし、地元(私は四国の香川に住んでいます)のスタジオで録音、更に自分のパートを受けてtbがトラックに更に+アルファ的にサンプリングを追加(実際に聴いてみて下さい)したりなど経て完成。ということで今作のM-10"Vibration feat. Kotetsu Shoichiro"と相成りました。「トーフビーツの難聴日記」でも吐露されたtbの瀬戸内海に対するオブセッションを受け、不肖私めが四国代表としてひとつまみのSETOUCHI FEELINGをアルバムに振りかけております。どうぞ感じちゃって下さい。〆

プロフィール

Kotetsu Shoichiro(コテツショウイチロウ)

ミュージシャン、著述家。2017年にMarutenn Booksからビート集「MAVDISC」、2020年にHIHATTから3曲入り音源「Ge' Down E.P.」をリリースする。ピクニック・ディスコのメンバーであり、自主レーベル&スタジオ「STUDIO MAV」も主宰している。またライターとして「ミュージック・マガジン」「Quick Japan」「ユリイカ」などに寄稿しており、プロモーションビデオのアニメーション制作なども手がけている。

中村佳穂

中村佳穂

「REFLECTION feat. 中村佳穂」の制作を振り返って

tofuさんからオファーを電話で頂いたとき
私の新作「NIA」のコンセプトが「傍にいる見えないもう1人の私」だったのですが
その説明されているtofuさんの話が自分の話を聞いているようで
不思議と気持ちがパチパチと弾けたのを覚えています。

「コロナ禍でなければ自分はこんな人生もあったのかも?」
とふと振り返ってしまうこの時代に
似たようなことを思う、もう1人の私のような人と
曲を通じて話せるのがとても嬉しかったし、
レコーディング中に聞いた他の参加の人たちの
エピソードを聞く程に「あ~きっといいアルバムになるんだろうな~」と
勝手に確信していました。

というのは心の内の話で
会った時は「こんにちはぁ~」って言って
美味しいパン屋さんの話とか
関西の近所のおばちゃんみたいな話しをしながら、楽しく録音させてもらいました。
どっちの雰囲気も兼ね備えた曲になったなと思っています:)

tofubeatsへのメッセージ

オファーが来た時「うわ~選んでもらえた!!!」と内心大変なことになってました。
全部ずっ~~~とファンです。歌詞に打たれながらREFLECTION歌いました。
この作品が色んなものに反射していって、眩い光を放ち続けますように!

プロフィール

中村佳穂(ナカムラカホ)

1992年生まれ、京都を拠点に活動するミュージシャン。20歳の頃から本格的な音楽活動をスタートさせ、2018年11月にリリースしたアルバム「AINOU」で一躍脚光を浴びる。2021年6月にシングル「アイミル」を配信リリース。同年7月公開の細田守監督最新作「竜とそばかすの姫」で、主人公・すず / Belle役の声および劇中歌を担当し、大きな話題を呼ぶ。同年12月にはmillennium paradeとのコラボで「第72回 NHK 紅白歌合戦」への出演を果たした。2022年3月にはニューアルバム「NIA」を発表。9月からはホールツアー「中村佳穂 TOUR ✌ NIA・near ✌」を開催する。

Neibiss

Neibiss

「don't like u feat. Neibiss」の制作を振り返って

ratiff

トーフさんからビートが何個か来て、don't like uのビートを聴いた瞬間にこれだ!!ってなって、その勢いでサビのメロとバースを書きました。次の日くらいにヒョンに送って、ヒョンもすぐ返してくれて良いスピード感で完成したなと思っています。

hyunis1000

遂に…⁈まさか…⁉︎自分の中でトーフさんのアルバムに参加してる自分がいるだけで世界が今までと違って明るい気持ちです!

tofubeatsへのメッセージ

ratiff

アルバムのデータが届いた日に本作にも参加しているUG Noodleさんとたまたま一緒にいてて、聴いていたのですが、アルバムを聴き終え、とりあえず外に飛び出そうという感情になりました(笑)
一曲目から引き込まれるように聴き入ってしまい、最後の最後まで飽きることなくバリエーション豊かな楽曲に驚きの連続でした
個人的には各曲の中での転調の仕方やビートスイッチの方法に感銘を受けました
こんな最高なアルバムに参加させて下さったトーフさんには感謝しかありません...
またご飯連れてってください!

hyunis1000

朝になっても楽しすぎてクラブから出れなくなった日があってratiffが朝9時に"もう出よう!!"と言って PEAK TIMEを流して階段を2人で駆け上がっていく瞬間があったんですけど
その時にこのアルバムを聴けば
ループする毎日から少し抜け出せるのかもと思えました
最高です
またご飯連れてってください!

プロフィール

Neibiss(ネイビス)

神戸を中心に活動するトラックメイカー / DJ / ラッパーのratiff(ex. kaisei)とラッパーのhyunis1000からなるユニット。2018年に活動を開始し、楽曲をリリースしながらさまざまなイベントへ出演し実績を積み重ねていく。2020年に1stアルバム「HELLO NEIBISS」、2021年に2ndアルバム「Sample Preface」をリリースした。

UG Noodle

UG Noodle

「恋とミサイル feat. UG Noodle」の制作を振り返って

去年の夏頃にトーフさんからデモ音源を受け取り、歌詞と歌唱を担当してほしいとのご依頼をいただきました。その頃はコロナ禍の影響で外を出歩く機会が極端に減り、内省的な時間を過ごすことが多かったと記憶しています。そんな中で受け取ったその音源は、ボサノヴァ調の軽快なリズムとハーモニーで構成されており、第一印象は爽やかだなと思いましたが、何度か聴き直しているうちに、寂寥というか、「狂気」のようなものが聞こえてきました。自分が病んでいるのだと思いましたが、自分だけのものじゃないようにも思えました──この朴訥とした調子の中に潜む「狂気」を私は知っている、と。とにかく、自室にぽつねんと枝を張っているパキラが、部屋を吹き抜けていく夏のぬるい風にあたらしい葉をなびかせているのをぼんやりと眺めながら、このしずかな「狂気」はじつは、なにか個人を超えた大きな力によって生じているものなのかもしれないと考えるようになりました。そこでペンを取り、マイクに向かい、したためた音源を持って、いっしょにsumahama?というグループをやっているTakashi Kusudaやseizo、そしてサックス奏者のeccoさんを訪ねて回り、この「狂気」にリズムとハーモニーを足してもらって、トーフさんにお返ししました。みんなこの仕事に満足しています。

tofubeatsへのメッセージ

ご本人にはお伝えしましたが、控えめに言って最高傑作だと思います。みんなが抱いてはいるものの、うまく言葉にできなかったMOODを、見事に昇華されていると思います。「REFLECTION」に収められた言葉とサウンドのすべては、まさにわれわれにとっての「鏡」になっていると言えるでしょう。おかげでずいぶんと励まされました。トーフさん、また一緒に仕事ができて光栄です。ありがとう。お会いできるのを楽しみにしていますよ。

プロフィール

UG Noodle(ユージーヌードル)

神戸市在住のシンガーソングライター / 軽音楽研究家。2013年に1stアルバム「The Indian Waltz」、2020年に2ndアルバム「ポリュフェモス」をリリースする。2021年には「ポリュフェモス」から2曲をシングルカットした7inch「夢の恋人 (Lovers Rock Edit feat. seizo) / ポリュフェモス」を発表。

tofubeats配信ライブ情報

tofubeats「REFLECTION」online release party 2022.05.26

配信日時:2022年5月26日(木)OPEN 20:30 / START 21:00
<出演者>
tofubeats / Neibiss / UG Noodle / Kotetsu Shoichiro / 中村佳穂

配信はこちら

プロフィール

tofubeats(トーフビーツ)

1990年生まれ、神戸在住のトラックメイカー / DJ。学生時代からさまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。2013年4月に「水星 feat. オノマトペ大臣」を収録した自主制作アルバム「lost decade」を発売。同年11月には森高千里らをゲストボーカルに迎えたミニアルバム「Don't Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEからメジャーデビュー。2014年10月にメジャー1stアルバム「First Album」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表している。2022年5月には約4年ぶりとなるニューアルバム「REFLECTION」と、初の書籍「トーフビーツの難聴日記」を同時に発表した。