TK from 凛として時雨「egomaniac feedback」特集|TK from 凛として時雨×谷口悟朗(アニメ「コードギアス」シリーズ監督)|常に自分を疑い続け、自分の作品に興奮し続ける妥協なき表現者2人の対話

今年でソロ活動10周年を迎えたTK from 凛として時雨が、10月13日に自身初のベストアルバム「egomaniac feedback」をリリースした。アルバムは2枚組となっており、DISC 1にはアニメや映画を彩った主題歌やライブでの定番曲、DISC 2にはmilet、阿部芙蓉美、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)をフィーチャーした新音源を含む、さまざまなアーティストとのコラボ楽曲が収録されている。

またTKは同じく10月13日に、ベストアルバムにも収録されている新曲「will-ill」をリリース。この曲は、初回放送から15周年を記念して再放送中のテレビアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」の新エンディングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。そこで音楽ナタリーはTKと、「コードギアス」シリーズに長年関わっている監督・谷口悟朗による対談を企画。「will-ill」の制作秘話はもちろん、ともにアニバーサリーイヤーを迎えた2人に、作り手としてのこだわりを聞いた。

また特集の後半には、ベストアルバム「egomaniac feedback」のレビューも掲載する。

取材・文 / 金子厚武撮影 / 中野敬久

エンディングを改めて作ることのハードルの高さ

──まずは谷口さんに伺いますが、今回「コードギアス 反逆のルルーシュ」を再放送するにあたって、なぜTKさんにエンディングテーマを依頼したのでしょうか?

谷口 再放送でテーマ曲を新しく作るということがそもそもあまりないパターンなんですけど、そういうことを試してみたいと制作からアイデアを受けたときに、私の中では2つ選択肢があったんです。1つはオープニングとエンディングをそれぞれ男性と女性にお願いするパターン。もう1つは、どちらかを今までのシリーズに関わっていただいた方、どちらかをはじめましての方にお願いするパターン。その2つを考えて、今回は後者でいくことにしました。

──オープニングは15年前と同じくFLOWが新曲を提供していて、エンディングはTKさんが初めて「コードギアス」シリーズに参加、という形ですね。

谷口 最初の放送から15年経っているので、「『コードギアス』というタイトルは知っているけど観たことがない」という人に対しては、より今の時代に近いアーティストの方のほうが伝わりやすいだろうという考え方でした。「この作品のテーマ曲といえばこの人たち」というような閉じ方はあまり好きではなくて、間口を広げたかったというのもあります。ただ、TKさんはたぶんやりづらかったんじゃないかな(笑)。以前の楽曲があるわけで、それとは違うものにしつつ、そこに自分の主張も入れ込まないといけないとなると、ハードルが高かったんじゃないかなって。

TK ハードルは高かったですね(笑)。僕はこれまで何作かアニメのテーマ曲を作ってきましたけど、担当させていただくことが決まってからアニメを観ることがほとんどで、もともといろんなアニメを観るタイプではないんです。それでも「コードギアス」という名前は知っていたし、マネージャーからも「コードギアスですよ!」と言われて、一度終幕している作品のエンディングを改めて作ることのハードルの高さはすごく感じました。ただ、これまではシナリオがあって、大枠しかわからない中で曲を作っていたのに対して、今回はすでに完結しているアニメを観ることができたので、今までにないパターンだったんですよね。

谷口 今までテーマ曲をやられてきた「東京喰種」や「pet」は原作のマンガを先に読んで、イメージを固めたりしたんですか?

TK そうですね。マンガ原作だとまだ助かるんですけど、オリジナルアニメだと、大まかなシナリオから想像を膨らませて、視覚的にも見えない中でどんな世界観かを決めていく必要があって。海外のものだと入ってくる情報がかなり限定されていて、しかも「結末がまだ変わるかもしれません」みたいな(笑)。そういうのに比べると、すでにアニメが完成していて、視覚的に物語を追えるのは、ものすごく曲をイメージしやすかったです。もともとのエンディング映像に新しく作ったデモを合わせて聴いて、「こういうテンポ感だと合わないかな」とか、ストーリーを見たあとにどういう感情になって、どういう音が欲しくなるか、そういうシミュレーションもしながら作れたので、楽しかったですね。

左から谷口悟朗、TK。

気付いたらやってくる過去からの使者

──谷口監督は15年前の作品が再放送されることに対して、どのような心境ですか?

谷口 正直あまり実感がないんです。まだ放送が始まってないのもあるし……当時もですけど、私はエゴサーチなどはせず、スタッフに整理してもらった情報だけを受け止めるようにしていて。そうじゃないと、ごく一部のファンに向けて作っちゃったり、落ち込んで何もやる気がなくなったりしてしまう。周りでそういう人たちを見てきているんですよね。私が初めてアニメを監督したときに、その作品は原作のマンガがあったんですけど、「週刊少年ジャンプ」の鳥嶋(和彦)さんに「『ジャンプ』の作品でも何万人単位の敵ができる。でも、もし10万人敵がいても、100万人味方がいたらこっちの勝ち。それが『ジャンプ』の考え方です」と言われて、すごくいい言葉だと思ったんですよ。気が楽になったというか。なので、100万人の味方を手に入れるためにどうすればいいかだけを考えるようになりました。

──「コードギアス」のシリーズ自体は、新作アニメ「コードギアス 奪還のゼット」の制作が決定したり、スマートフォンゲーム「コードギアス Genesic Re;CODE」がリリースされたりと、今もリアルタイムで動き続けているわけで、ある意味、今回の再放送もその延長線上にあるというか。完全にストップしていたものを改めて動かすのとは、きっと心境も違いますよね。

谷口 そうなんですよ。サンライズの谷口(廣次朗)くんをはじめとした制作の人たちががんばってくれているおかげで、プロジェクトとしてはずっと継続していて。なので、ネガティブな意味ではなくポジティブな意味で、特別な感慨はあまりないですね。

TK 僕は今年ソロ活動10周年で、ベストアルバムを出すことになったんですけど、谷口監督は自分の過去の作品を振り返ることってあるんですか?

谷口 あるにはありますよ。きっと同じだと思うんですけど、昔の仕事は自分の技術不足とか、意欲だけ空回りしていたりとか、恥ずかしい部分もありつつ、当時の自分じゃないとできなかった何かを再発見できたりもして、その両方がありますね。ただ、「コードギアス」に関しては、テレビでやった後に5.1ch化しているので、その関係でもう1回アフレコの音データを確認したり、ダビングしたり、向き合うことも多くて。そういう意味では、「気付いたらやってくる過去からの使者」みたいな、そういうイメージですね(笑)。

感情がつながる部分をどうやって探すか

──TKさんは「コードギアス」という作品からどのような印象を受け取り、楽曲の制作に向かったのでしょうか?

TK もともと「コードギアス」には、硬質で冷たい作品という印象をなんとなく持っていたんです。それはロボットアニメ全般に対する僕のイメージだと思うんですけど。そこに自分がどういう感情を乗せられるのかというのは、最初はけっこう未知数だったんですよね。アニメの曲を作るときは、もともと自分の中にある感情と、作品のテーマや主人公の感情がつながる部分をどうやって探すかを一番大事にしているんです。「この気持ちは自分の中のあのときの感情に似てるな」というポイントが見つかるといいんですけど、今回は「ロボット乗ったことないしな」と思って(笑)。ただ、作品を観ていく中で、人間の心が剥き出しに生々しく描かれている部分の魅力にだんだん気付いていって。

──回を重ねるごとにどんどんハマっていってしまう作品ですよね。

TK

TK 今回僕は1クール目のエンディングを担当するので、本来であれば1クール目だけ観ればいいわけですけど、気付いたら最後まで全部観てしまって。「コードギアス」を初めて観る方も多いとは思うんですけど、当時終幕まで観ていて、もう一度初めから観るというファンの方もたくさんいると思うんです。なので、自分が担当するクールだけではなく、作品全体の中から自分が魅力的だと感じた部分や通じると思った感情を広げていき、作品の中に潜り込んで書いていきました。

──「反逆のルルーシュR2」の衝撃のラストまでを観ていると。

TK あの衝撃が刻まれた状態で1話目を観ると、それぞれの関係性や言葉がまた違うふうに感じられる気がして。そういう人にとっても、魅力的なエンディングテーマにしたいと思ったんです。

谷口 実はTKさんからいただいたデモを聴いた瞬間に、今回のオープニングとエンディングの絵の配置のコンセプトが決まったんです。当初は違うコンセプトを考えていたんですけど、TKさんのデモを聴いて、オープニングは主人公であるルルーシュの主観に近い出来事や人物像を描こうと。そして、エンディングはその裏側というか、スザクのバックボーンを軸にしようと思ったんです。それはアニメの表層的な部分ではなく、心情面にアプローチしていただいたからこそ、そうなったんだと思います。

──ちなみに、もともとはどんなコンセプトだったのでしょうか?

谷口 もともとはごく普通のコンセプトというか……。テレビシリーズのオープニングとエンディングにはそれぞれ役割があって、オープニングは「このお話はこういう起承転結を持ったシリーズです」「こういうキャラクターが出てきます」というのを伝えるもの。そしてエンディングは情感を担うんです。映画のエンドロールのような感じで、観ながら気持ちを消化してもらう。それで言うと、今回はオープニングもエンディングも、どちらもオープニング的なアプローチとして捉えられると思います。