音楽ナタリー PowerPush - TK from 凛として時雨
TKが求めた最上級の“Magic感”
TK from 凛として時雨が2ndアルバム「Fantastic Magic」をリリースした。今作にはテレビアニメ「東京喰種トーキョーグール」のオープニングテーマとしてオンエア中の「unravel」や、Charaとのコラボレーション曲「Shinkiro」など全10曲が収録されている。
今回ナタリーではTKにインタビューを行い、ソロとバンドで求められることの違いや、新作のインプレッション、ライブに対する思いなどを語ってもらった。
取材・文 / 大庭利恵
ソロらしさってなんだろう
──3月に「contrast」をリリースした後、7月にはアニメ「東京喰種トーキョーグール」のオープニングテーマとして「unravel」を発表しました。楽曲制作に向かう意識は両作でそれぞれ違いましたか?
「contrast」のときは、ソロらしさってなんなんだろうってことを考えてましたね。激しさが少しでも入ると「時雨に近くなってしまう」って身近な人に言われることも多かったから。このときは楽曲の質感として、ピアノを中心としたシンプルな音像を軸に作りたいなと思ったんですよね。
──「flowering」(2012年6月発売の1stアルバム)をリリースしてから、凛として時雨での活動を挟んだことで、バンドとの差別化について考えるようになった?
バンドとソロの差別化については、どちらかというと聴き手から問われることが多かったですね。自分の中では曖昧なものなんだけど、みんな想像以上に激しさ=時雨だって思いがあるんだなって。ソロでもちょっとギターが激しかったり、アップテンポになるとやっぱり時雨っぽいと言われますから。でも核となって作っているのは結局どちらも自分ですし、今は3人でやる音楽以外は全部ソロなんだっていうところに行き着いたので、自分の中で境目を気にせずに作るほうがいいのかなって感じてます。
──バンドとソロでは曲作りの方法も同じなんですか?
時雨は自分のギターも含めて3人で鳴らす音だったけど、ソロではピアノの音色に導かれることが多かったですね。ずっとギターで曲を作っていると、触れているフレットから出る音が全部見たことのある景色のような気がしてしまって。少し目線を変えれば全然変わるのかもしれないのに、この左手にある音は、すべてもう知っているものなんじゃないかって思ったりしちゃうんですよね。
──同じコードでも、ギターとピアノでは感じるものが違う?
そうですね。ちょっとした角度の違いで新しく浮かんでくる言葉があったし、全然違ったインスピレーションを受けました。
──それは具体的にいうと、どういう違いですか?
時雨では、常に3人でギリギリまで自分たちの音を突き詰めているんで、そういった意味ではどちらも色を求めてると思うけど、あまり触れてないピアノのほうが今はカラフルなんですよね。たぶん、音色のつけ方が違うんだと思う。ソロのほうがピアノの中に色彩の豊かさを求めてる気がしますね。
グロテスクな中に命の美しさがあった
──「unravel」は、アニメの主題歌として依頼を受けて作り始めたわけですよね。
そうですね。以前、石田スイ(「東京喰種トーキョーグール」の原作者)さんが時雨のライブに来てくださったときに初めてお会いしたんです。改めて依頼を受けてから原作を読み込んで、その世界観にすぐに引き込まれましたね。続きが気になってそのまま残りの巻を買いに行きました(笑)。
──かなりグロテスクな作品ですけれど、楽曲とのハマり具合は、アニメファンの方々からも大絶賛ですよね。
一見、グロテスクな部分で捉えがちなんですけど、読み込んでみると命というものがすごく美しく描かれているなと思って。そこに焦点を絞ったら、とても鮮明に描けたというか、いつもより自分の殻を破って言葉にできた気がしました。
──声だけで曲が始まるインパクトもあり。
静寂を感じさせつつも突き刺さる何かが欲しかったんですね。声だけというのは、今までやったことがないので、自分の声から世界が始まったら面白いかなと思って。
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- 2ndアルバム「Fantastic Magic」 / 2014年8月27日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3888円 / AICL-2715~6
- 通常盤 [CD] / 3240円 / AICL-2717
CD収録曲
- Fantastic Magic
- unravel
- kalei de scope
- an artist
- tokio
- Shinkiro
- Dramatic Slow Motion(album version)
- Spiral Parade
- fragile
- contrast
初回限定盤DVD収録内容
- haze(Music Video)
- contrast(Music Video)
- unravel(Music Video)
- Fantastic Magic(Music Video)
TK from 凛として時雨 TOUR 2014
「Fantastic Color Collection」
- 2014年10月8日(水)
- 東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2014年10月16日(木)
- 宮城県 Rensa
- 2014年10月22日(水)
- 愛知県 DIAMOND HALL
- 2014年10月23日(木)
- 大阪府 なんばHatch
凛として時雨(リントシテシグレ)
TK(Vo, G)、345(Vo, B)の男女ツインボーカルとピエール中野(Dr)からなる3ピースバンド。2002年に地元・埼玉で結成し、2005年に自身で立ち上げたレーベル「中野Records」より アルバム「#4」をリリースした。ハイトーンの男女ツインボーカルと、轟音かつプログレッシブなギターロックサウンドで多くのファンを獲得。その後も順調にライブの動員を増やし続け、2008年12月に1曲入りシングル「moment A rhythm」でメジャー移籍を果たす。2010年4月にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを開催し、同年5月には初のイギリスツアーを敢行した。9月にリリースした4枚目のフルアルバム「still a Sigure virgin?」はオリコン週間ランキング1位を記録。2013年4月に通算5枚目となるアルバム「i'mperfect」を発表し、同年6月には東京・日本武道館で初の単独公演を行い、成功を収めた。バンドと並行して、メンバーそれぞれがソロ活動、サイドプロジェクトも活発に行っている。