吾妻光良 & The Swinging Boppers「Scheduled by the Budget」 PR

吾妻光良 & The Swinging Boppers|愛され続けて40年!ハナレグミ、浜野謙太らも敬愛するバッパーズの魅力に迫る

吾妻光良 & The Swinging Boppersが5月22日に5年8カ月ぶりとなるニューアルバム「Scheduled by the Budget」をリリースした。

吾妻光良 & The Swinging Boppersは、バンマスの吾妻光良(Vo, G)を筆頭に、8人のホーンセクションとリズム隊、ピアノという編成からなる総勢12名のジャンプブルースバンド。40年前に大学の卒業記念にと集まったのが始まりで、全員れっきとした社会人として仕事をする傍らバンドを続けてきた。ブルースやR&B、ジャイブといった黒人音楽をベースにした愉快で味わい深いバッパーズのサウンドは、ハナレグミ、EGO-WRAPPIN'、浜野謙太(在日ファンク)、ゴスペラーズなど多くのアーティストから熱烈な支持を集めている。そんな彼らの魅力を探るべく、音楽ナタリーでは吾妻、牧裕(Contrabass)、渡辺康蔵(A.Sax)の3人にインタビューを実施。バンドの歴史を紐解きながら新作について語ってもらった。

取材・文 / 今井智子 インタビュー撮影 / 沼田学

左から牧裕、渡辺康蔵、吾妻光良。

大学の卒業公演のために結成

──結成40周年おめでとうございます。ほぼ不動のメンバー12人で40年というのは素晴らしいですね。

吾妻光良(Vo, G) いつの間にか(笑)。誰もやめようと言わなかったんですね。

吾妻光良

──そもそもは、早稲田大学時代に卒業公演をやるために集まったと伺っています。

吾妻 そうそう、そうです。

渡辺康蔵(A.Sax) 吾妻はロッククライミング(音楽サークル)、俺と牧はダンモ(モダンジャズ研究会)。

──吾妻さんは当時からブルースがお好きだったそうですが、どうしてビッグバンドを組もうと思ったんですか?

吾妻 1970年代、日本にブルースブームが嵐のように吹き荒れましてね。それこそラジオで「中村とうようのブルースの世界」という番組をやったぐらいで、私もすっかりやられてしまい。その頃そうやって同じくやられてしまった人間が多かったんですね。当時は、ブルースを聴かないのは人間ではないというぐらいの感じで(笑)。

牧裕(Contrabass) 俺、人間じゃなかったんだ。牛だったんじゃないかな(笑)。

吾妻 いや、聞け(笑)。ブルースがそれだけ流行ってたんだ。だから高3のときから顔の黒い人のレコードしか買わなくなった。顔の黒いおじいさん、もしくは死んだ人のレコードしか買わなくなって、大学入学以降もロックとか聴いたことがない。ブルースじゃないのは音楽じゃないですから(笑)。康蔵と牧くんは隣のサークルですけど、強いて音楽的な共通点を挙げるとしたら、ナット・キング・コールだよ。1940年代の音源は、ほぼブルースですからね。ブルースというかR&B。

 まあどっちかというとね。

吾妻 それぐらいだったら、ちょっとやってくれるかなと思って。細かくは省きますが、ジャンプブルースというのをやろうということで、メンバーを集めたんです。ジャズをやってる奴がいないとできないですからね、フルバンドになると。

 ブルースから来たのは岡地(曙裕 / Dr)だけだよね。

吾妻 完全なブルース畑は、俺と岡地だけですね。

ジャンプブルースの魅力とは

──吾妻さんがそれほどやりたかったジャンプブルースという音楽の魅力とは?

吾妻 ブルースだと、ロバート・ジョンソンから始まるソロの弾き語りで、というスタイルからいろんな経緯を経て編成が大きくなったとき、チャーリー・クリスチャン(1940年代に活躍した米ジャズギタリスト)と同じ時代にTボーン・ウォーカー(ブルースにエレキギターを持ち込んだと言われる40年代のブルースギタリスト)という人がいて。大人数の管楽器隊を従えて、しかも自分でリフも弾いて、みたいな。当時そのスタイルにものすごく憧れたんです。

牧裕

 まあ、“オレオレ”の音楽ですよね。

吾妻 違うよ、“オレオレ”じゃないんだよ。“オレオレ”だったらソロばっかり弾いてるだろ。

 リフを一緒に弾いて、ソロも弾いてるじゃん。

吾妻 やりたいこと全部やってる(笑)。そういう見方もあるな(笑)。

大所帯バンドの醍醐味

──吾妻さんはギター奏者ですけど、管楽器と一緒にやる面白さがあるんですね。

吾妻 これは後年に勉強してわかったんだけど、それまでバンドの中で、ギターは何を弾いても聴こえなかった。エレキギターが登場して、大きな音が出せるようになって、やっと市民権を得たんですね。そこでエレキギターも管楽器と一緒に合奏したい、だからリフも一緒に弾きたいというのが40年代当時の人たちのスタイルだった。

──ギターが音の大きさで管楽器と同列になったんですね。

吾妻光良

吾妻 そう。50年代になると、だんだんソロを演奏する楽器になっていったけど、40年代はチャーリー・クリスチャンもTボーン・ウォーカーも、ソロも弾いたけどリフも一緒に弾いてた。こんなこと言って若い人に伝わるかなあ?

──大所帯バンドの迫力や面白さは、例えば東京スカパラダイスオーケストラにも通じることなので、わかると思います。音圧とかアンサンブルが、少人数のバンドとはまったく違いますよね。

吾妻 やるまではわからなかったけど、やってみて、「ああこういうことか」と思ったのは、やっぱり人数なんですよ。どんなにつまらないものでも、数の力は侮りがたい。ひどいこと言うな(笑)。何がすごいかというと、管楽器8人の勢いというのがね、ほかの4人では止められないんですよ。で、この8人が平気で間違えるわけ(笑)。すると、「うわーっ」って全員で間違えちゃう(笑)。

渡辺 そんなことないよ。俺らがダメみたいじゃん(笑)。

吾妻 ほんとだよ、すごいんだから。岡地がどれだけ直そうとしても、俺がいくら止めようとしても、直らない。それぐらいの圧力が面白いなと思う。

渡辺康蔵

渡辺 全体の音はでかいよね。吾妻たちのバンドサウンドに、俺ら8人の管楽器の音が合わさるとホントに音がでかくなる。

吾妻 だけど40年やると、自己修正機能が働くんだよね。まあこれがすごいよな。

渡辺 最近は演奏が止まることないもんね。

吾妻 止まらない。間違えても自動的に修正がかかる。だから昔より、はるかに楽ですね。バンドになったんだな。それは長くやってる、めっけもんですね。自動で走るようになりましたね。

──バッパーズのオフィシャルサイトのスケジュール欄には「We play old R&B everynight!」と書いてあります。バッパーズは古いリズム&ブルースを演奏するバンドだ、と?

吾妻 すごく悩んでそう書いたんですよ。ただね、B.B.キングもインタビューで言ってましてね。「ジェイムス・ブラウンをリズム&ブルースだという人がいて、アレサ・フランクリンのことはソウルだという人がいて、私のことはブルースだという人がいるけど、私に言わせれば全部リズム&ブルースだ。だってリズムのあるブルースなんだもん」って。「なんだそれは」って思うけど、B.B.キングが言うと説得力がある。ルイ・ジョーダンも自分がやってる音楽をリズム&ブルースと言うもんね。

 そうだね、あれをソウルとは言わないね。

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