演奏してるより飲んでる時間のほうが長い

──バンドが40年も続いた秘訣はなんでしょう。

吾妻　ほかに趣味がないからじゃない？　ゴルフもしないし釣りもいかないしねえ。

渡辺　俺はゴルフはするけど、バンドが飲みに行く口実というのはあるよね。だって俺たち演奏してるより飲んでる時間のほうが長いじゃん（笑）。

──打ち上げで一緒に飲みたくて対バンを組むみたいな（笑）。でもメンバーが12人いたら集合も移動も大変ですよね。よく終演後の楽屋で楽譜の整理をしているところに遭遇しますが、あれも大変そうで。

吾妻　装置産業ですからねえ。今はそういう言い方しないのかな。いわゆる舞台装置とか、そういう設えがないとできない。衣装の白シャツと蝶ネクタイから始まって。

渡辺　譜面台とかね。必ず蝶ネクタイ忘れる奴が1人はいて、紙で作ってたりする（笑）。遠くから見ればわからないだろうって。

吾妻　「ない！」って買いに行って、ある奴は100円ショップで、ある奴は洋服店で5000円ぐらいのを買って、悲喜こもごも（笑）。

──今回のジャケットもそうですか。

渡辺　これは名取（茂夫）さん（Tp）が素晴らしい活躍をした。「みんな、ズボンは黒だよ！」って。言わないと黒じゃないのを履いて来る奴がいるからさ。靴もちゃんと黒にしてね。

──1人ひとりの譜面ファイルがあるようですが、その管理はどのように？

吾妻　最近は俺が多い。あれがなくなると演奏できない曲があるんですよ。昔は管理ができてなくて、ライブ当日に「あの箱がない！」ってことになって底なしの恐怖を味わって。それ以来、人のせいにするわけにいかないから、私が運んでる。

──すごい量ですよね。1週間ぐらい行けそうな旅行用スーツケース一杯あって。

吾妻　岩のように重い。思い出のために譜面だけじゃなくて、曲順表とか入れてる人たちがいっぱいいるんですよ。やめてくれっていうんだけど（笑）。

渡辺　だって面白いんだもん。昔の譜面を見るのも面白い。雨に濡れたそのままで、4分音符か2分音符かわからないとか（笑）。毎回同じところを確認してる。

メンバーの奥さんが電話に出ると大変

──リハーサルはどんな感じでやるんでしょう。

吾妻　ライブ当日だけ。まあ何年もやってますからね。譜面を見れば大体の曲はすぐできる。中には譜面を見ても「なんだっけ？」というのもあるけど（笑）。

牧　リハをやろうって言っても集まらないからね（笑）。ギャラで釣ったこともある。この前のギャラを渡すからって。そしたらだいたい集まったね（笑）。昔は携帯とかメールとかなくて、連絡先が家の電話なんですよ。電話すると半分ぐらいは親が出て半分ぐらいは奥さんが出る。で、奥さんが大変なんです。奥さんに、「いついつライブがあるんですけど」と言うのがつらいんですよ。向こうにしてみれば遊んでるわけですから（笑）。

──「うちの旦那をまたそんなところに誘って」って？

牧　そう。だから不機嫌な声を出されることが多くて。親が出ると「あんた誰？」みたいな感じだし（笑）。

吾妻　手分けしてもすごく時間がかかった。メーリングリストというものが出てきたとき、最高の発明だと思ったね。

──電話からFAX、そしてメールと、昭和から平成への足取りが見えますね（笑）。

渡辺　よく40年もやったよね。2カ月に1回ライブやってるとして、40年間そんなに会ってる仲間はほかにいないもんね。

牧　学生のときは、パーマネントのグループになるなんて思ってなかった。俺たちの世代は、卒業して仕事と並行してバンドやれるなんて誰も夢にも思ってなかった。学生のときに最後にライブをやったのが、高円寺のJIROKICHIだったんですよ。それで卒業して「さよなら」って散り散りになったんですけど、その年の年末にJIROKICHIから「もう1回やらない？」って声がかかって。それでなんとか集まってライブをやったんです。それから今に至るまでズルズル。

吾妻　今は可処分時間が増えてきたから（笑）。昔は仕事で突然ライブに行けなくなるとかありましたからね。うちは1人でもメンバーが欠けたら絶対ダメなんだ。だから急遽、代わりに誰かを呼ぶんだけど、呼ばれた方もかわいそうで、何をやるかわからない（笑）。たまに譜面を読めない人が来ると大変で、よくやってくれたなあと思う人もいる（笑）。

──改めて40年続いているすごさを感じますね。

吾妻　さっきも言った通り、ほかにやることがなかったんだね、俺たち。レコード聴いて、本を読むぐらいしかないから、それじゃ限界あるよ。

──で、集まってライブやって、お酒を飲んで（笑）。

吾妻　昔話が多いからねー。

渡辺　昔から昔話（笑）。

牧　毎回同じ話してるし。

吾妻　塩昆布みたいに、噛めども噛めども尽きぬ味わいがある（笑）。

牧　違うよ、食ったこと忘れてるだけ。

吾妻　それは言える（笑）。