THE SUPER FRUIT「サクラフレフレ」2本立てインタビュー|「チグハグ」ヒット後の“勝負曲”は春の応援歌

昨年8月にリリースしたデビュー曲「チグハグ」がTikTokをはじめとしたSNSで注目を浴び、「それでは聴いてください、チグハグ」というフレーズが「TikTok流行語大賞2022」を受賞するなど、2022年は知名度を一気に高めたTHE SUPER FRUIT。「チグハグ」以降の活動に注目が集まる彼らの2ndシングル「サクラフレフレ」が3月22日にリリースされた。

音楽ナタリーでは2ndシングルの発売を記念して、「サクラフレフレ」でボーカルを務めた小田惟真、田倉暉久、松本勇輝への“ボーカルインタビュー”と、阿部隼大、堀内結流、星野晴海、鈴木志音の4人への“ダンサーインタビュー”を実施。3ボーカル+4ダンサーというグループの特徴をメンバーがどう捉えているのか、また“春の応援歌”として季節感あふれるサウンドの「サクラフレフレ」をメンバーそれぞれはどのような解釈で表現しているのか。ボーカル視点とダンサー視点の両軸から、THE SUPER FRUITというグループの魅力を紐解いていく。

取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / 曽我美芽

ボーカルインタビュー(小田惟真、田倉暉久、松本勇輝)

左から田倉暉久、小田惟真、松本勇輝。

左から田倉暉久、小田惟真、松本勇輝。

固定ボーカルは“表現すること”が好きな2人

──昨年の夏以降はデビューシングル「チグハグ」のヒットでTHE SUPER FRUITの名前が広く知れ渡りました。皆さんは「チグハグ」のヒットをどう受け止めていますか?

田倉暉久 率直にすごくうれしい気持ちがありつつ「もっとがんばらなきゃいけない」という焦りも感じています。デビューしたばかりの僕らが本来経験すべきことをすっ飛ばして、いろんなステージに立たせてもらったんじゃないか、という気持ちもあって。

松本勇輝 「チグハグ」が話題になってからは毎日のようにお仕事をいただいて、目の前のことに集中し続けている感覚だったので、それに追いついていけているかな?と思うときもありました。ずっとスピードの速いエレベーターに乗っている感じで周りの景色を見る余裕がなかったというか、ちゃんと初心に返って基礎の部分を見直すこともあって、すごく忙しかったときにはできなかったことを丁寧にやろうと意識しています。

小田惟真 僕も輝くんと一緒で「もっとがんばらないと本物のアーティストにはなれない」と焦りを感じているかなあ。もちろんバズったのはうれしい出来事だけど、その理由の1つはファンの方々がTikTokで動画を上げてくださったおかげだからそれに対してもっと恩返しをしなきゃな、と思っています。

小田惟真

小田惟真

──グループ内の空気感は変わりましたか?

田倉 大きく何かが変わったわけではありませんが、お互いがパフォーマンスに対して突き詰めるようになりました。全員の意識が大きく変わったことは間違いないので、お互いのパフォーマンスを見る目が変わったのかな。そういった部分はデビュー時よりも進化していると思います。

──前回のインタビューはメンバーそれぞれの自己紹介的な内容が中心だったので(参照:THE SUPER FRUIT&世が世なら!!!同時デビュー|仲間でありライバルでもある2組それぞれの思いを紐解く)、今回はTHE SUPER FRUITの構造的な部分の話も伺います。端的に説明すると、スパフルは小田さんと田倉さんの2人が固定ボーカリストで、そこにもう1人を加えた3ボーカル+4ダンサーというスタイルで活動しています。この構造について、皆さんはどう感じていますか?

田倉 珍しいですよね。僕と惟真は常に歌わせてもらう立場だけど、そこにもう1人が加わることで楽曲ごとにいろんな魅力が出せる。それがスパフルの大きな特徴につながっていると思います。

──固定ボーカルの田倉さんと小田さんの声質が対照的ですよね。お二人はお互いのボーカルについてどう感じてますか?

田倉 惟真と比べて、僕の声はちょっと低いんですよね。バンドにベースが入ると音楽に厚みが出るように、惟真の特徴的な声に対して僕の声があることでいいバランスが生み出されているというか。もっと言うと、僕は惟真の声を際立たせられる声を持っているんじゃないか、と最近気付きました。シングルに収録されている「サクラフレフレ」と「素敵なMy Life」の2曲を聴いたとき、腑に落ちたんですよね。「だから僕と惟真の2人なのか」って。

小田 声質のバランスもあるけど、僕と暉くんは“表現すること”が好きな2人だと感じています。自分の得意ジャンルがあるとかじゃなくて、いろんな世界観の歌を歌うことが好きな2人。曲単位で感情移入がしやすい曲が好きというか、よく言えば変幻自在なボーカリストということなのかな。そういう面で僕ら2人は共通していると思います。

“勝負曲”に欲しい3人

──シングルの表題曲「サクラフレフレ」は田倉さんと小田さんに松本さんを加えた3人ボーカルです。松本さんがボーカリストを務めるのは、スパフルの1曲目として発表された「Seven Fruits」以来ですよね?

松本 はい。「Seven Fruits」を歌えたことがすごくうれしくて、自分としてはすごく誇らしかったけど、その後なかなか僕がボーカルに選ばれることがなくて。今回2ndシングルの「サクラフレフレ」でボーカリストに選ばれて、すごくうれしかったです。

──「選ばれる」ということは、3人目のボーカリストはオーディション形式で選ばれている?

松本 楽曲のデモが送られてきた段階ではまだボーカリストが誰になるか決定していなくて、オーディションみたいに競い合うんですよ。「サクラフレフレ」は春の曲だし、僕の担当カラーがピンクだから「絶対に歌いたい!」と思って、すごく練習しました。

松本勇輝

松本勇輝

──デモの段階である程度ボーカリストを誰にするか決まっているものだと思っていました。

小田 そういう曲もあると思います。例えば「チグハグ」だったら多様性を歌う曲だから中性的な(星野)晴海が選ばれているし、「馬鹿ばっか」は大人っぽい曲だから最年長の阿部(隼大)くんだし。

──先ほど田倉さんは「ボーカルによっていろんな魅力が出せる」と話していましたが、松本さんを加えたこの3人だとどのような色になると感じていますか?

田倉 やっぱりスパフルの最初の曲である「Seven Fruits」のボーカルがこの3人だったことには意味があると思うんです。これは個人的な意見ですが、この3人の場合は誰か1人が突出して目立つわけではなく、バランスがすごくいい。3人で合わせたとき、遠くまで通るような音になって広がっていくイメージがあって。“勝負曲”にこそ欲しい3人ですね。

小田 わかる。この3人がスパフルというグループのコンセプトに一番近いというか。何て表現すればいいのか難しいですが、声質的にもガツガツしているわけではなくて、落ち着いているけどどこか強さがある、みたいな。

田倉 穴の小さい水鉄砲みたいな(笑)。穴が大きいと水がたくさん出るけど、遠くまでは飛ばない。穴を小さくすると細いけど遠くまで届く。そういうところが、僕ら3人の歌にあるんじゃないかな。

田倉暉久

田倉暉久

小田 僕ら3人は声を重ねたときのハーモニーがすごくきれい。「サクラフレフレ」はほかの曲に比べて3人で歌う部分が多いので、誰がボーカルになるかによってユニゾンが多かったり、ソロが多かったり、傾向が変わるのも面白いですね。

田倉 この3人で合わせて歌うと、本当に強い音になるよね。「サクラフレフレ」に勇輝が選ばれたとき、僕は「やっぱりそうだよな」と思ったから。

松本 うれしい。「Seven Fruits」のときもそうだったけど、節目の曲を歌わせてもらっている感覚があるんですよね。今回は「チグハグ」後のシングルだからプレッシャーも感じたけど、「僕らは“チグハグ”ではなくて、スパフルだ」という思いを持って、がんばって歌いました。

2023年3月24日更新