音楽ナタリー Power Push - 山中さわお（the pillows）×登坂絵莉（リオ五輪レスリング女子金メダリスト）

金メダル獲得を支えた戦いの歌

主人公が自分から「キミ」へ

──歌詞の変化はどうですか？

作ってるときには気付いてなかったんだけど、主人公が自分じゃなくなってる曲が多いんだよね。これまでは山中さわおの歌ばかりを歌ってきたはずなのに、メインが「キミ」になってる。例えば、「王様になれ」は「俺がなってみせる！」ではなくて、「こうやっていこうよ」って提案をしてるような曲なんだ。「パーフェクト・アイディア」「ジェラニエ」といった、アルバムの核となる曲がほとんどそういうタイプで。

──それは気付かなかったです。

ピロウズが活動休止する前あたりは人生で一番心が疲れてたんだけど、憂鬱に憑りつかれた時期を抜け出せた経験が大きいかな。「脳みその隅っこ」というタイトルになったのも。毎日がつらかったときは「もう、未来は楽しいことなんかない」と思い込んでたのが全然変わって、最近なんてメンバーの関係性もよくなるしさ。つまり、まだ自分で自分の脳みそ全体を把握し切れてないんだなと。今まで一度も開いたことのない小さな引き出しみたいなのが実はあって、そこに目の前の毎日を楽しくできるアイデアがあるんじゃないか。ならば、アイデアを取り出すためにチャレンジしようよっていう哲学と希望を込めたメッセージがアルバムの軸になってるんだよね。自力でどうにもできないことで悩むのはもったいないじゃん？それにブチ当たった際、どう受け入れて、憂鬱を追い払って生きていくか。思考回路の角度を変えて、楽しい日々にしたい。そんな発想が歌詞の視点を「キミ」に寄せたのかも。

──ライブでのお客さんとのコミュニケーションでそうした変化が生じた、というわけではないですか？

それがすべてではないけど、影響はすごくある。自分の音楽を大切に聴いてくれる人への愛情表現に慎重なタイプというか（笑）。けっこう潔癖で、たまーに扉をちょっとだけ開けるくらいしかしない感じだったでしょ？そこも多少は変わってきたのかな。ファンに対して「ありがとう！」っていう説明的な歌を作っていくのとはまた違うんだけど、「王様になれ」にしても「パーフェクト・アイディア」にしても、聴き手のことが前より頭に浮かぶようにはなってる。

「山中、全然変わってねえな」

──「パーフェクト・アイディア」や「ジェラニエ」をアルバムの核と考えてるのは、どんな点が大きいんでしょう？

「ピロウズ以外に誰がこんな曲やれるんだ？」って感じなのかな。ギターリフもそうだし、歌詞もさっき登坂さんが「プロポーズ」の話をしてくれたけど、「どういう意味なんですか？」「いや、意味なんてないんだよ」という世界観でさ。これをもしほかのバンドでやれるとしたら、髭（HiGE）ちゃんくらい？でも、ここまで突き抜けてポップにはならないだろうね。ピロウズの個性が凝縮されてる曲だと思うよ。

──アルバム全体のギターサウンドについては？

うーんとね、いつもは真鍋くんが「こんなのでどう？」って音を提案してきて、それを俺がジャッジするというやり方なんだけど、その1stテイクがすごく変わったかな。今は真鍋くんがクリアなサウンドを出すことが多くなって、俺がそこに濃い味を加えるようなコーディネイトの仕方で。以前はもっと薄めてバランスを取ってたのに、役割が入れ替わった感じというか、新鮮で面白い。

──いろいろ変わってますよね、やっぱり。

そうなのかもね。ピロウズの27年間の活動で見たら、最初の頃と今の自分は別人だと思ってるくらいだし。でも、付き合いが長い上田健司さんや怒髪天の増子（直純）さんに言わせると、「山中、全然変わってねえな」ってことらしいよ（笑）。だから芯の部分、何か大事な局面での反応はきっと変わってないんだろうな。

the pillows「NOOK IN THE BRAIN TOUR」

2017年5月5日（金・祝）群馬県高崎club FLEEZ
2017年5月7日（日）長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
2017年5月12日（金）茨城県 mito LIGHT HOUSE
2017年5月14日（日）東京都 TSUTAYA O-EAST
2017年5月18日（木）岐阜県 yanagase ants
2017年5月20日（土）岡山県 YEBISU YA PRO
2017年5月22日（月）徳島県 club GRINDHOUSE
2017年5月24日（水）京都府 KYOTO MUSE
2017年5月26日（金）石川県金沢EIGHT HALL
2017年5月28日（日）新潟県新潟LOTS
2017年6月3日（土）東京都赤坂BLITZ
2017年6月13日（火）静岡県 LiveHouse 浜松窓枠
2017年6月15日（木）島根県松江 AZTiC canova
2017年6月17日（土）広島県広島CLUB QUATTRO
2017年6月19日（月）愛媛県松山サロンキティ
2017年6月21日（水）鹿児島県 SR HALL
2017年6月23日（金）沖縄県桜坂セントラル
2017年6月25日（日）福岡県 DRUM LOGOS
2017年6月30日（金）栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
2017年7月2日（日）宮城県 Rensa
2017年7月4日（火）岩手県 Club Change WAVE
2017年7月6日（木）青森県青森Quarter
2017年7月8日（土）北海道 CASINO DRIVE
2017年7月9日（日）北海道札幌PENNY LANE24
2017年7月15日（土）大阪府なんばHatch
2017年7月17日（月・祝）愛知県 DIAMOND HALL
2017年7月22日（土）東京都 Zepp Tokyo

the pillows ニューアルバム「NOOK IN THE BRAIN」2017年3月8日発売 / DELICIOUS LABEL: 初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / QECD-90003; 通常盤 [CD] 3240円 / QECD-10003

CD収録曲

Envy
王様になれ
Hang a vulture!
パーフェクト・アイディア
Coooming sooon
She looks like new-born baby
pulse
ジェラニエ
BE WILD
Where do I go?

初回限定盤DVD収録内容

Envy（Music Video）
王様になれ（Music Video）
Hang a vulture!（Music Video）

the pillows（ピロウズ）

山中さわお（Vo, G）、真鍋吉明（G）、佐藤シンイチロウ（Dr）の3人からなるロックバンド。1989年に結成され、当初は上田健司（B）を含む4人編成で活動していた。1991年にシングル「雨にうたえば」でメジャーデビュー。結成20周年を迎えた2009年9月には初の東京・日本武道館公演を行い、大成功に収めた。2012年にはバンドを一時休止し、山中と真鍋はそれぞれソロアルバムを発表。2013年の再始動後は再び精力的な活動を展開し、2014年2月には結成25周年を記念したトリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-」、同年10月にはオリジナルアルバム「ムーンダスト」が発売された。2017年3月には通算21枚目となるオリジナルアルバム「NOOK IN THE BRAIN」をリリース。5～7月には全27公演のライブツアー「NOOK IN THE BRAIN TOUR」を行う。

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