ザ・リーサルウェポンズ特集|話題の楽曲「あいさつメタル」も!“第3のポンズ”と語るMV撮影裏話 (3/3)

すぐにトイレに駆け込んで、ゲロをぶわーって

──ほかに、強く印象に残っているMVはありますか?

アイキッド 私の地元の群馬で撮った「キングオブポップ」ですかね。「eスポーツ酒場」というイベントに出演したときに群馬県庁に行ったんだけど、そのときの控え室に黄色いピアノが置いてあったんです。「これを撮影に使いたい!」と思って、「キングオブポップ」のMVでフィーチャーすることにしました。名倉さんに「群馬に来てくれ!」って電話して。

名倉 「デンジャーゾーン」という曲のMVを群馬の僻地で撮った思い出があるから、「群馬の秘境じゃないですよね!?」と確認しました(笑)。

アイキッド 群馬県庁だからちゃんと街中ですし(笑)、真面目なMVを撮りたかったんです。モノクロで始まったあとに黄色いピアノをフィーチャーするっていう。非常にシックなMVになりましたよね。都立家聖歌隊という親父ギャグみたいな名前のクワイアも撮影に参加させて。あれは全員、近所の西武新宿線沿線に住んでる人たちです。MVに出ている人たちと実際に歌ってる人たちは違うんですけど(笑)。

名倉 そうなんだ(笑)。てっきりあのMVの人たちが本当に歌ってるんだと思ってた。みんないい感じの顔で歌唱シーンに参加してたし。

アイキッド ただの近所の商店街のお友達です(笑)。西武新宿線沿いは演劇界隈の人たちが多いんですよ。レコーディングではプロのクワイア、ゴスペルの人に歌ってもらいました。まあそれはそうと、群馬県民でMVを撮れる日が来るとは思ってなかったですよ。群馬県出身者としてクラスが1つ上がったかな。

ジョー グレードアップだ。

アイキッド あと、「さよならロックスター」のMVは初めて白バックで撮影したのが印象深いですね。エディ・ヴァン・ヘイレンをオマージュして書いた曲だから、「小細工はなしだ!」って普通に撮ったんですよね。

名倉 普通に撮ったけど、あれだけ完全な白バックでほかに何にもないと、どういう仕上りになるのか見えなくて、撮ってるときはちょっと怖いなと思ってた。でも完成した映像を観て、やっぱりアイキッドはさすがだなと感じました。

ジョー よかったけど、先生がちょっとジャンプしすぎて。

アイキッド 2番のAメロに入る前、私がくるっと回ってジャンプするシーンがあるんですけど、運動神経がないものだから、うまく回れなかったんです。50回くらいやり直して、撮影が終わって「おつかれさまでした」って言ったあとすぐにトイレに駆け込んで、ゲロをぶわーって。そのあとも車の中でずっとぶっ倒れてました。

ジョー ハハハハ!

名倉 ヘルメットを被りながらやるから、余計に気持ち悪くなるんだよね(笑)。

アイキッド あれはすみませんでした。ソーリー。バッドスメルだったね。

ジョー いえいえ。「サムライディスコ」のMVも大変だったね。先生、刀で刺されてた。

アイキッド 眉村ちあきさんをフィーチャーした曲で、MVが時代劇風。私が眉村さんに刺されるシーンがあったんですよ。本来は脇を刀が通過するというか、横から見たら刺されているように見える画を撮る予定だったんですけど、模造刀で思い切り心臓を突かれまして(笑)。

ジョー ハハハハ!

アイキッド まあ、眉村さんはファニーな女の子ですし(笑)。スタジオの終了時間が迫っていて、たいしたディレクションができなかったんですよね。

ジョー 撮影のときに使ったちょんまげ、まだ持ってます。

名倉 意外と似合ってたね。

アイキッド ジョーくんは「影の軍団」(「服部半蔵 影の軍団」)とか、そういう昔の時代劇が好きなんですよ。千葉真一とかね。

ジョー Yeah! Sonny Chiba! だから「サムライディスコ」の撮影は楽しかった。でも大変だった。

アイキッド まあ、私は殺陣をほとんどやってないんだけど(笑)。百學連環っていう剣劇の集団がいまして、私の殺陣はそこのわたなべみつおっていう殺陣師に演じてもらいました。

名倉 YouTubeのコメント欄に「アイキッドが急に細くなってる」みたいな指摘がありましたね(笑)。

これ警察に見られたらどうすればいいんだ

──撮影中の苦労話が多いですが、一番気に入っているMVを挙げるなら?

ジョー うーん、なんだろう……「ウェザーリポート」かなあ。なんか、撮影の日はすごい1日だったし。気に入ったね。

アイキッド まあ、君はいいですよ。MVに出るだけなんだから。こっちは車こすってるんだよ。

名倉 はははは。

ジョー 先生がセーラー服を着て車を運転して。私も高校の制服を着てその横に座ってて、ああ、これ警察に見られたらどうすればいいんだと思った。

アイキッド その格好のままロケ地を車で移動してたんだよね。しかも私はヘルメットを被らずに、すっぴんのおっさんがセーラー服を着てたから、すれ違う人がみんな二度見をするんです。この状態でポリスメンが来たら、ポンズの危機だなと思ってました。

ジョー そう! おばあちゃんが自転車を漕ぎながらびっくりしてた。でも、いい思い出だね。いい夕暮れのシーンもあるし。

──もしジョーさんからMVの内容やシチュエーションをリクエストできるとしたら、どんなMVを撮りたいですか?

ジョー 「ボウズ」みたいな撮影、ずっとやりたいです。

名倉 はははは。楽だからね。

アイキッド それは私もそうです。me too。でも、そうもいかないんだよね。私が気に入ってるMVは、自分で監督したものから挙げるとすると「東海道中膝栗毛」と「雨あがる」かな。「東海道中膝栗毛」はグリーンバックで撮った映像を浮世絵に合わせたんですけど、あんな細かい作業をよくやったなと自分でも思うし、大成功というかね。自分の新たな人生の境地が開けた感じがします。「雨あがる」はGoogle Earthのフライトシミュレータ機能を使って空を飛んでいるような映像を作ったんですけど、フライトシミュレータの映像に合わせて体の向きを変えながら撮影しなくちゃいけなかったし、本当に編集が大変で。非常のお気に入りのMVですが、あの作業は2度とやりたくないですね(笑)。

名倉 僕も特に気に入ってるMVが2つあります。1つは「特攻!成人式」。グリーンバックをあそこまで使ったのが初めてで、CGの合成が大変だったけど、かなりコミカルにできていてお気に入りです。もう1つは「夏の日のメガドライブ」で、少年時代の夕暮れ時みたいな空間を作るのにけっこう照明にこだわったりして。僕の好きな岩井俊二監督の作品っぽいライティングを作ろうとスタッフと話していたし、美術の面でこだわったものを作れたという点でも、懐かしくてきれいな映像ができたんじゃないかなと思いますね。

アイキッド MVを撮影した部屋が私の実家そっくりでね。本当に自分の家かと思いました。ところで、この記事を呼んでいる人にMVを楽しむヒントを与えるとですね、あの家の中に名倉さんの個人的な宣伝が入っているので、探してみてください。

名倉 あははは! 気付いてました?

アイキッド 撮り終わってから映像を観て、「おい、ポンズのMVで勝手に宣伝するんじゃねえ!」って(笑)。

左からサイボーグジョー、名倉健郎、アイキッド。

左からサイボーグジョー、名倉健郎、アイキッド。

プロフィール

ザ・リーサルウェポンズ

アメリカ生まれのサイボーグジョー、ももいろクローバーZや上坂すみれへ楽曲提供した経歴を持つ作詞家 / 作曲家のアイキッドからなる2人組ユニット。2019年1月に活動を開始し、4月に1stアルバム「Back To The 80's」を配信およびライブ会場、通販限定で発表。1980~90年代のポップス、パンク、ディスコ、プログレ、シンセウェイブを取り入れ、その時代のエンタテインメントをオマージュした楽曲群と、アイキッドが自ら監督を務めるミュージックビデオで話題を集める。中でも「きみはマザーファッカー」のMVはインターネット上で大きな注目を浴びた。2021年8月にシングル「半額タイムセール」でメジャーデビュー。2022年2月にメジャー1stアルバム「アイキッドとサイボーグジョー」をリリースし、9月に東京・中野サンプラザホールでのワンマンライブを成功させた。2023年9月にはメジャー2ndアルバム「OKシンセサイザー」を発表。11月に東京・両国国技館で音楽ライブとプロレスのバトルロイヤルを融合させたイベント「地獄の国技館バトルロイヤル」を開催した。2024年5月にBlu-ray作品16作を同時リリース。5月から6月にかけて全国ツアー「OKシンセサイザー全国ツアー」を行った。2024年12月25日にはミュージックビデオ集が発売される。