ムチャぶりを形にするのが好き
アイキッド MVの撮影はなぜか千葉や茨城方面の多いですね。「クレイズィードクター」は「ウェザーリポート」のときと同じ校舎だったんですけど、部屋に冷房がなくて大変でした。
名倉 いやー、あれはね。「ウェザーリポート」のMVを撮った音楽室は冷房が使えたから大丈夫だろうと思ってたんですけど、「クレイズィードクター」のときに借りた化学室は旧棟の校舎でエアコンがなかったんです。しかもMVが夜の設定だったから遮光して、そしたら熱気がこもっちゃって。
アイキッド いつもの衣装の上に白衣を着なきゃならなかったし、とにかく暑かったです。あのMVに出てくる人造人間みたいな装置も全部、名倉さんが作ったんですよね。
名倉 時間がなかったし、なんとなくそれっぽく見えればいいかなと思ってたんですけど、作ってるといろいろとこだわりが出てきて、最終的にしっかり作っちゃいました(笑)。
アイキッド 「ヒャッハー!」も茨城での撮影でしたね。採石場みたいなところで撮って、あれも大変でした。
名倉 出演者が多かったけど、参加してくれたチームがしっかりまとまっていたから助かりました。
アイキッド エキストラの方が参加する撮影は大変なことが多いんですよね。普段ではありえないような事態も起きたりしますから。
ジョー そういう意味では「スシダンス」も大変だったね。
アイキッド 子供たちがダンサーとして参加したから、その練習がなかなかね。
ジョー いやー、子供にディレクションするの、大変だね。
アイキッド 「これはこういうふうにやって」と説明していたら、子供が私のヘルメットを見てポカーンとしていました。この姿で話しかけてきても、そりゃ意味わからないよなって(笑)。
名倉 はははは! あのMVはNHK風な映像にしたいということで、撮影場所の飾り付けを考えるのに苦労しました。MVに出てくる寿司の絵はうちの息子に描いてもらいました。
アイキッド そうそう。キッズダンサーは、特にセンターの女の子が大活躍で。あの子は「夏の日のメガドライブ」のMVにも子供時代のアイキッド役で出てもらいました。ヘルメットを被って。
名倉 あのミニヘルメットも僕が作りましたからね。
ジョー すごいなー!
アイキッド 基本的に、「こういうの作って」って伝えたら全部作ってくれるんですよ。
名倉 「段ボールでバイクを作ってください」とか、だいたいムチャぶりしか来ないんだけど(笑)、その無茶を形にするのがけっこう好きなタイプなんですよ。「川中島の戦い」の鎧も作るのにかなり苦労しましたね。あのMVは実際に長野の川中島で撮影して。
アイキッド あの不安定な足場で騎馬戦をやるのはなかなか大変でした。でも、名倉さんは川沿いで撮るのがうまいですよね。
名倉 「熱血ティーチャー」のMVも川沿いで撮ったんですけど、「川中島の戦い」はそのグレードアップ版というイメージが自分の中にありました。カッコいい雰囲気で撮ろうと。
アイキッド 撮影の最後のほう、いい感じに日が落ちてきて、ちょうど我々の後ろに日輪が出てきたんです。
名倉 全シーンを撮り終わったタイミングだったんですけど、2人の後ろに太陽が降りてきて、「すみません、もう1回撮らせてください!」って。最後の夕日の演奏シーンはマジでカッコいい画が撮れました。最初はイメージになかったので、本当に偶然の産物ですね。
ジョー すごいねー。
撮影が一番楽だったMVは
名倉 編集という点だと、「パーティースーパースター」は「特攻!成人式」と並ぶくらい大変でした。自分の部屋で作った模型を背景にして撮ったり、グリーンバックを使ったり、手描きのイラストを合成したり。家で1人で何回も撮り直しました。
アイキッド 作ってもらっておいてあれなんですけど、カボチャ型のヘルメットが通気性ゼロだったんですよ(笑)。
名倉 通気性のことを考えてなくて、ガッチガチに固めちゃったから。「頭が入った! よかった!」と思ったけど、これは暑いだろうなと(笑)。
アイキッド サンリオピューロランドのライブでも被ったけど、曲のアウトロで酸欠になりそうでした(笑)。
ジョー あと、編集とか合成は「ねこねこヘヴン」も大変だったんじゃない?
名倉 あのMVは、絵本作家のひらつかかつじ先生が絵を描いてくださったんです。だから、ひらつか先生が大変だったと思う(笑)。紙人形を使ったMVを作りたいという話をアイキッドとしていて、ひらつか先生にお願いしたら「いいですよ」って快諾してくれたんですよ。でも「何体くらい? 5、6体ですか?」と言われて、「まあ、100体くらい……」と答えたら驚かれました(笑)。お願いしてから撮影まで時間がなかったんで、撮影当日も現場で紙を切ったりしてくれていました。
アイキッド ちょっと気になってたんですけど、私の素顔に激似の猫が登場してません?
名倉 いると思いますよ。ひらつか先生がそういう伏線を入れてくださったんです。
ジョー 「ねこねこヘヴン」のMVは一番楽だったんじゃないかな。
アイキッド 楽も何も、出演すらしてないじゃないか。
ジョー うん、何もしてない(笑)。気付いたら撮り終わってた。
名倉 はははは。撮影をちょっと手伝ってくれたけどね。
アイキッド 「Tick Tack」も撮影は楽だったと思います。
ジョー 「ポンズのテーマ」もそうだね。
名倉 一発撮りだったからね。5分かからなかった。
ジョー あと、「ボウズ」も一発撮りだった。
アイキッド 「ボウズ」のMVは私が自分で撮影しました。「魚が釣れない」っていうのが曲のコンセプトなんで、ただ釣りをしている私と、その横で歌っているジョーくんを三脚の定点で撮っただけ。ジョーくんを車で迎えに行って海沿いで降りて、15分ぐらい、カメラを3回しだけして帰ってきました。「ポンズのテーマ」は煙を出したりと仕込みがあったけど、「ボウズ」の撮影は本当に楽でしたね。そんなMVで一番手を抜いた曲が、なぜかテレビのタイアップ(フジテレビ系「週刊ナイナイミュージック」エンディングテーマ)に決まりました(笑)。
ジョー ハハハハ。
撮影中にやらかした大失態
──中にはゲストが出演しているMVもありますよね。「半額タイムセール」にはたけし軍団、「押すだけDJ」にはDJ KOOさんが登場します。
名倉 「半額タイムセール」は、撮影中に今でも覚えてる大失態をしてしまったんですよ……。
アイキッド それ覚えてます。スーパーの中で撮影していてね。
名倉 そう。たけし軍団の方々に出てもらって、Aメロパートの終わりぐらいまで撮っていたんですけど、途中で「あれ、ジョーいなくね……?」って気付いて。ジョーがちょっと現場を抜けてる間にどんどん撮り進めちゃって(笑)、結局20カットぐらい撮り直しました。
アイキッド そーっと寄ってきて、「ちょっとミスちゃったかもしれない……」と言い出して。
名倉 「これ、ジョーが映ってないとまずいシーンですよね」って。もう冷や汗かきましたね。各所に頭を下げました(笑)。
ジョー そうだったんだ。知らんかったー。
アイキッド メジャー1発目のMVなのに(笑)。でもスーパーを借り切って撮影して、あれは楽しかったな。「押すだけDJ」のMV撮影もよかった。
名倉 DJ KOOさんが本当にいい人すぎて。やっぱり大御所の方だから、ちょっと堅いところがあるのかなとか思っていたんですけど、現場にいらっしゃった瞬間にすごく和やかで優しくて、すごく撮りやすかったです。
アイキッド 気を使ってくれるんですよね。本当にすごい方だなと思いました。
名倉 スタッフにも優しく声をかけてくれて。うどんをこねるシーンはさすがに怒られるかなと思ってたけど、普通に「いいね!」って言いながらやってくれました(笑)。
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すぐにトイレに駆け込んで、ゲロをぶわーって