ナタリー PowerPush - The Flickers
個と個をつなぐ音楽を目指して
曲作りは遺書を書く行為
──パンキッシュであること、ロック然としていること、そのためには何が重要だと思ってますか?
安島 やっぱり詞です。人間味のある言葉を書きたい。ちゃんと人生が反映されたもの。
──安島さんがそうであるように、The Flickersの歌に出てくる登場人物は、生きるのが不器用な人たちですよね。
安島 そうですね。今の時代では、どちらかと言えばマイノリティの側に立ってると思うんですけど。そこでちゃんと胸を張って、自分たちの色を出していきたいなと思ってます。もともと自分にとって音楽って、遺書を書くみたいな行為だったんですよ。
──遺書!?
安島 ちょっと言葉は強いですけど、本当にそういう気持ちだったんです。自分が社会的に死ぬために必要だった行為というか。だから、それは死ぬのと同時に、音楽の世界で生きていくための行為で。社会の中で上手に生きられない自分を許すことができるのが、唯一、曲を書くことだったんです。
──ここまで作品を何枚かリリースしてきて、ライブも頻繁にやるようになって、そこで変わってきた部分はあります?
安島 ありますね。最初は僕が部屋の中で1人、自分の存在を許すために作曲をしていたんですけど、それをスタジオに持っていってメンバーと共有したときに、僕の曲がよければみんなが楽しそうに演奏してくれて。そしたら僕も楽しくて、そこで一度救われた気持ちになるし。今度はその曲を小さいライブハウスで演奏すると、そこにいるお客さんたちと共有できる。それが少しずつ大きくなって今があるから。最初は僕1人のものだった曲が、目の前にいる人に届くという経験は、何ものにも代え難いですね。結局は世界のどこかにいる、他人と何も共有できないと思っている自分みたいな人間と、何かを共有できたらという思いでやっているんだと思うようになりました。
音楽は1対1で向き合うもの
──最初に大きな野心を抱いて、そこにたどり着くための方法論を真剣に考えて、それを1つひとつ実践していくバンド。その一方で、まずは目に見える範囲から少しずつ雪だるま式に大きくなっていくバンド。その2通りがあるとしたら、The Flickersは完全に後者ですね。
安島 そうですね。わりと地下活動も長かったですし、地図を描いて、その通りにできるような器用さはまったくないんで。
──たまにいますよね、ミュージシャンとしても成功してるけど、音楽以外のことをやってもあなたたぶん成功したでしょっていう人(笑)。でも安島さんは間違いなく、音楽以外のことができないタイプですよね。
安島 ちょっと想像できないですね。何もできる気がしない(笑)。
──でも、それは音楽をやっていることの意味、そして音楽そのものの強さにつながるものだと思います。
安島 そうですね。そういう気持ちで臨んでいるところはあります。
──こういうアッパーに作用するんだけど、個に訴えるような音楽というのは、実は今の時代にすごく貴重な気がしていて。
安島 ダンスミュージックをやってるのに、ライブもクラブもわりと苦手なんですよ(笑)。基本的に自分にとっての音楽って、1対1で、部屋のスピーカーで1人で向き合うものなんです。音楽を作る人って、たぶん自分の音楽を誰かが聴いてる姿を想像したりするものだと思うんですけど、自分の場合、それはどこかで誰かがイヤフォンで聴いてるイメージだったり、悲しいときに部屋に1人でいて、そこでスピーカーから流れているイメージだったりするんです。
個と個をつないでいきたい
──今って、CDがあまり売れない一方で、フェスにはすごく人が集まる。つながろうつながろうっていうある種の強迫観念のようなムードが広がってる時代ですけど、そういう中にこういうバンドがいるとすごくホッとするし。フェスのような空間であっても、個と個でつながる音楽があってもいいと思うし、これからThe Flickersにはそういうものを見せていってほしいなと思うんですよね。
安島 日本のライブやフェスの会場でも、ただ手を挙げたり踊ったりするだけじゃなくて、みんなが目をつぶって音と1対1になるような景色がもっともっとあってもいいと思うんですよね。僕がやりたいのは、享楽的なものだけでは終わらない音楽、人の生活に残っていく、心に残っていく音楽なんです。だから、今の時代の音楽の在り方について、悩むところはもちろんありますけど。ただ、それを別に不満に思ってるとか、文句を言いたいとか、そういうつもりはないんです。
──そこで自分たちは、ほかとは違うものを聴かせていきたい?
安島 そうですね。どっちが原始的でどっちが現代的かっていったら、1対1の音楽の方が現代的なものだと思うんですよ。大昔はみんなで集まって石でリズムを叩いて踊って、クラシックもレコードができる前はみんな演奏会に集まらないと音楽に触れることができなかった。日本だと盆踊りで、みんなで踊ったりするのが好きで。今って、その時代に逆戻りしている気がして(笑)。それはそれで面白いと思うんですけど、自分たちはもっと現代的な音楽をやってると自覚してるし、そこで勝負していきたいと思ってるんです。
──面白いですね。音楽シーン全体が逆戻りしている中、あくまでも先に進もうとしている。
安島 はい。それがThe Flickersの音楽だと思います。
ライブスケジュール
The Flickersワンマンライブ
- 2013年7月14日(日)大阪府 梅田Shangri-La
- 2013年7月15日(月・祝)愛知県 名古屋APOLLO THEATER
- 2013年7月20日(土)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
スペースシャワー列伝 ~第九十四巻 早暁(そうぎょう)の宴~
- 2013年6月26日(水)東京都 Shibuya O-nest
OTOSATA Rock Festival 2013
- 2013年6月29日(土)長野県 茅野市民館
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013
- 2013年8月2日(金)茨城県 国営ひたち海浜公園
SUMMER SONIC 2013
- 2013年8月10日(土)千葉県 QVCマリンフィールド&幕張メッセ
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO
- 2013年8月17日(土)北海道 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
RUSH BALL 15th
- 2013年8月31日(土)大阪府 泉大津フェニックス
- 1stアルバム「A PIECE OF THE WORLD」/ 2013年6月19日発売 / 2200円 / HIP LAND MUSIC / RDCA-1032
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CD収録曲
- love destruction
- 二重惑星
- 自転車に乗って
- babys bay byebye
- white heat
- noiz me
- fight club
- electrical parade
- supersonic
- ダークナイト
- 永遠
- lovender
The Flickers(ふりっかーず)
安島裕輔(Vo, G, Syn)、堀内祥太郎(B, Cho)、本吉“Nico”弘樹(Dr, Cho)の3人からなるロックバンド。ガレージロック、ニューウェイブ、エレクトロなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集める。2011年11月にタワーレコード限定で 1stミニアルバム「WONDERGROUND」を、2012年5月に初の全国流通盤となる2ndミニアルバム「WAVEMENT」を、12月に初の日本語タイトルの「永遠」を含む4曲入りCD「Fl!ck EP」をリリースした。2013年6月19日に1stフルアルバム「A PIECE OF THE WORLD」を発表。さらに7月には初のワンマンライブツアーを東名阪で開催する。