THE CHARM PARK|5年の歳月を経て生まれ変わった最初の1枚

5年前の自分に「心を開いて」

──「Gravity」はもっとも古い曲だとおっしゃっていましたが。

7月にリリースしたミニアルバム「Standing Tall」は、“自信を持つ”“背筋を伸ばす”という意味のタイトルで、自分自身がそうあるべきだと思って付けたのですが、実は5年前に「Reverse & Rebirth」を作ったときも同じ気持ちだったんですよね。どうやったら自分のことを誇りに思えるのだろう、どうやったら自信を持って「これが俺の作品」と言えるようになるのだろうって。そんな中で「Gravity」ができたときにちょっと勇気をもらったというか、「あ、これでほかの曲も作れるかも」と思えたんですよね。

──和声がクラシカルなのも印象的です。

ああ、なるほど。バンドではギターを弾いていたので、その反動なのかTHE CHARM PARKをスタートさせた当初、ギターで曲を作ろうとは思わなかったんですよね。新たな手法を試したくて、初めてピアノで作ったのがこの曲でした。ピアノの腕前は大したことなくて、好きな曲をたまにコピーしていた程度なので、その範囲で思いついたコードやリフを弾いて、それをもとに作っているのですが、その発想の変化が和声にも影響を与えているのかも知れないです。ギタリストからすると、鍵盤って面白くて。あと「Gravity」は重力という意味じゃないですか。この曲を作っていた頃はいつも以上に重力や重圧を感じていて。「そこからどう抜け出すか?」を考えながら作ったんです。ギターは本体を横にしてかき鳴らすけど、ピアノは上から鍵盤を押さえつけるように弾きますよね。だからより重力が必要。そういったことも無意識につながっていたのかもしれないです。

──「Open Hearts」は、今年できた新曲とおっしゃっていましたね。

はい。一番古い曲と一番新しい曲を並べてみて、当時と今で大きく変わったなと思うのは、自分の性格がちょっと明るくなったかもしれないなと。それが歌詞に表れているような気がします。このモノクロームな世界観のアルバムの中で唯一色味のある曲だという気がしますし、サビの「心を開いて」というフレーズは、5年前の自分に歌っているようにも感じます。

──「Anyone」の「I find myself searching for lost memories alone within a dream」というラインには、Charmさんの当時の喪失感がうかがえますし、サビの「Is there anybody out there?」は、歌うべき相手も見つからずに暗闇を彷徨っている感じがしますよね。

そうですね。この曲を作った5年前はもっとも孤独を感じていたし、誰かを求める気持ちも強かったと思います。そしてこの時期はとにかくテンポの速い曲が多い(笑)。おそらくそれは、楽曲の疾走感の中に宿る切なさや悲しさみたいなところを表現したかったからだと思います。

THE CHARM PARK

秋はアイロニックな季節?

──「Free Man」は、ボン・イヴェールやカニエ・ウェスト、フランシス・アンド・ザ・ライツあたりを彷彿とさせる声の加工がとても印象的です。

当時この曲をリリースしなかったのは、ちょっと寄せすぎかもと思ったからなんです。おっしゃるように、ボコーダーを使ったボイス加工がものすごく流行っていた時期なので。ただ今回改めて聴き直してみたらやっぱりいい曲だと思えたから、音色などをちょっと今っぽくトリートメントしてアルバムに入れることにしました。

──こういう加工はすでに手法の1つとしてデフォルトになっていますよね。改めて、その魅力はなんだと思いますか?

歌モノにとって声は欠かせないメインの楽器ですけど、1人で和音を歌うことはできないじゃないですか。でもボコーダーを使えばそれが可能になるのが面白くて。「Free Man」は途中ピアノがほんの少し入る以外はベースとドラム、それからハーモナイズした声のみで成立させている。声の持つ力のようなものを、ボコーダーが再認識させてくれました。それに、ボコーダーは歌わないとコードも鳴らせない。呼吸に合わせて鳴る楽器という意味では、鍵盤ハーモニカにも近い気がします。

──なるほど。声をコントロールしていると同時に、声によって楽器をコントロールしているとも言えるわけですね。

そうなんです。トークボックスも仕組みとしては近いものがあります。ボコーダーはその可能性を、今のテクノロジーでもう少し広げたというか。“声の延長線の楽器”とも、“楽器の延長線上の声”ともいえるのが不思議だし、魅力を感じる部分ですね。

──「There is no reason to live without a dream」(夢がなければ生きる意味がない)というラインは、どんな思いで入れたのでしょうか。

当時は日記を書いていて、その中にあった言葉の1つだったと思います。この曲はアイロニーも含まれた歌詞なんですよ。「Free man for sale」という歌詞が出てきますが、“free man”だけなら“自由人”だけど、“free man for sale”とすることによって“無料で売り出している人”という意味になる。自由ではあるけど、縛られてもいる……みたいな。“dreamer awake”も、“目が覚めた夢想家”。そんなふうに、ちょっとアイロニックにも取れるような言葉遊びが昔から好きなんです(笑)。

──確かにそういうCharmさんのアイロニックな考え方は歌詞の中にも、そしてこうやって話している中にもユーモアとして感じるときがあります。

しかも自分のそういう部分が最近また復活してきた気がします。秋になるとそういうモードになりやすいというか。ただ会話の中にも出てきてしまうのは、なんだかヒネクレ者みたいであまりよくないですよね。反省します(笑)。

──いやいや(笑)、あまり物事を「こうだ」と言い切らず、常に多角的な視点で捉えようとしている姿勢は見習いたいと思っています。

そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。確かに、「そんなに真面目に捉えたら人生面白くないよ?」と自分に言い聞かせているところがあるかもしれないです。