The Birthdayチバユウスケ&フジイケンジ インタビュー|バンドサウンドが導く光

The Birthdayが11thアルバム「サンバースト」をリリースした。

1stシングル「stupid」のリリースから15年、フジイケンジ(G)加入から10年を迎えたThe Birthday。ニューアルバム「サンバースト」は11曲入りで、引き締まったサウンドで歌われるチバユウスケ(Vo, G)のリリックは、これまで以上にユーモアとスリルをたたえている。

ライブバンドとして名を馳せるThe Birthdayはコロナ禍をどう過ごしていたのか。音楽ナタリーではメンバーのうちチバとフジイに「サンバースト」の制作秘話をはじめ、昨年唯一の単独ツアーとなった「GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020」について話を聞いた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 岩佐篤樹

弾かなかった、弾く気もなかった

──コロナ禍はどう過ごしていたんでしょうか。

チバユウスケ(Vo, G) スタジオ、入ってた。

──普段と変わらない気持ちでスタジオに入れました?

The Birthday

チバ うん、曲はずっと作っていたので。ツアーやらなんやらが全部飛んだからさ、ライブやれないんだったらレコーディングしようって。

──今回のアルバム「サンバースト」のレコーディング期間は1年くらい?

チバ いや、もっと前からだね。2019年の年末ぐらいからやり始めて、そしたらコロナがきて、そのままずっと曲作りとレコーディングっていう。

──ライブがやれなくなってレコーディングに影響はありましたか?

チバ 曲を作ってレコーディングするって作業に関しては全然いつもと変わらないし、もちろんライブを想定しながら曲も作るし、そういうのはなんにも変わらない。

──フジイさんはどうでした?

フジイケンジ(G) 俺も全然大変なこともなく。ライブができないっていうのは残念だけど、レコーディングさせてもらえる恵まれた環境だったんで、そのぶん制作ができるんだったらそっちに時間を割ければ、それはそれでバンドとしても有意義ですよ。

──前向きに過ごしてたんですね。

チバ でもさ、最初は(緊急事態宣言で)自粛って言われて、だったらなんにもしねーと思って、楽器を全部しまった。部屋にあるギターも何もかも全部片付けて、弾かなかった。弾く気もなかった。

左からフジイケンジ(G)、チバユウスケ(Vo, G)。

──どうしてですか?

チバ なんでだろうね。そう思ったから。でもよかった、楽器捨てなくて(笑)。

フジイ そんなことがあったの? 知らなかった。

──楽器は捨てちゃダメですよ(笑)。曲作りもすべて止めて?

チバ いや、曲は作ってた。そのときのデモも残ってるけど、コードを弾く楽器がないからワーワー歌ってるだけで、メロディがよくわからないから使わなかったけどね(笑)。

もう「サンバースト」と決めてた

──レコーディングには時間をかけたんですか?

チバ 普段とそんな変わんないよね。

フジイ レコーディングの期間自体は変わってないと思う。プリプロはちょっと長めだったとは思います。

──「サンバースト」というアルバムタイトルはどこからきたんでしょう。

チバ なんとなく。

──気に入っているサンバースト(中央部から外周部にかけてグラデーション状に濃くなっていく塗装のこと)のギターがあるんですか?

チバ ギターのサンバーストのイメージじゃないんだよね。普通に雲の間から、太陽がバーンと出てきたのをサンバーストっていうじゃん?

──雲間から急に日が差すことをサンバーストって言いますね。

チバ それそれ。真っ白な光が差してる。レコーディングの途中ぐらいから、もうタイトルは「サンバースト」って決めてたんで。

──メンバーに相談はあった?

左からチバユウスケ(Vo, G)、フジイケンジ(G)。

フジイ いや、相談っていうか、「『サンバースト』にするから!」と宣言されて(笑)。

──「以上!」みたいな?(笑)

フジイ そう。タイトルは毎回そんな感じで決まりますね。

──今回のアルバムは、極端に音数が少ない気がしました。

フジイ ギターはなるべく引き算してフレーズを作るようにはしてた。ライブでもできるような音像にしたかったんで。

──ライブでそのまま再現できるようにレコーディングしたんですね。

フジイ うん。あんまダビングはしてないですね。けっこう俺はフレーズを和音にするのが多いほうですけど、今回は「レボルバー」のフレーズも単音だったりして、そういう印象になったのかもしれないです。

──ギターソロで一番好きなのは「ショートカットのあの娘」ですね。定番のギターソロなんだけど、この曲並びの中で聴くとすごく印象に残ります。

フジイ そうですか。どんなんだったっけ?(笑)

チバ 俺も全然覚えてない。

アウトロは自然に長くなった

──「サンバースト」を聴いて、ポップで短い曲が多いという印象も受けました。「晴れた午後」とか「ショートカットのあの娘」とか。

フジイ まあ確かに。

チバ そう?

──どちらも3分を切ってます。

フジイ 切ってます。

チバ あ、そう。詳しいな。

──インタビューのために聴いてきたので(笑)。

チバ 俺、もう聴いてないもん。マスタリングまで全部終わったら、車で聴いて終わり(笑)。

──「晴れた午後」も「ショートカットのあの娘」も3分を切ってるんですけど、1曲の密度が濃いからあまりそう感じないですね。あと2曲目の「息もできない」はギターリフが凝ってるなと。

フジイ 頭の音? あれはベースです。

チバ そっか。あれを聴くとギターかベースか、わからなくなるときあるよね。

フジイ あるある。

──ベースなんですね。

左からチバユウスケ(Vo, G)、フジイケンジ(G)。

フジイ あれは最初からチバくんのイメージがあったみたい。

チバ うん。こういうベースで始まってっていう全体像はあった。

──終わり方も面白かったです。アウトロがけっこう長くて。

チバ 長いでしょ、エンド(笑)。

──ライブを想定して?

チバ そう。でも俺、暇なんだわ。あそこ、俺、なんもしてないから(笑)。

──(笑)。Led Zeppelinのドキュメンタリー映画(2006年公開の「レッド・ツェッペリン:オリジン・オブ・スピーシーズ(LED ZEPPELIN : The Origin of the Species)」)で、ほかの人がソロを録ってるとき、ボーカルのロバート・プラントが暇そうにドラム台に腰掛けてるシーンがありました。

チバ そうだね。そういうイメージもあるかな。レコーディングのときもずっと俺、聴いてただけだもん。やることないから(笑)。

──「エンディングは長く弾いて」と頼んだわけではないんですね。

チバ 頼んではないと思うよ。自然にそうなったっていうか。「ああ、カッコいいね」って言って。