音楽ナタリー Power Push - 焚吐

街から生まれた混沌の音楽

ほかの方の力を借りることで、自分の作品を高めていける

──「トーキョーカオス e.p.」にはいろんな方がアレンジャーとして参加されましたね。

焚吐(撮影:木場ヨシヒト)

自分の意見もありますけど、アレンジャーの皆さんの意見もたくさん詰め込むことで、よりカオスな作品になったと思います。一時期は作詞作曲は全部自分で手がけることにこだわっていたのですが、Neruさんやカラスヤさん、ササノさんと出会って、ほかの方の力を借りることで自分の作品を高めていけることを知りました。今回はそれが投影できたと思います。

──焚吐さん自身、ライブを通して成長したことも本作には反映されているわけですが、焚吐さんはライブをはじめた頃から、人前で歌うのは好きだったんですか?

そうでしたね。初めて人前で演奏したのが中学1年生のときで、その頃はお客さんのことをあまり考えず、自分がやりたいことをやる発表会的なものだったんですよね。でもプロになってライブをすると、「どのくらいお客さんが喜んでくれるのか?」っていうことを意識しはじめて。これからもお客さんがどう感じているか考えつつ、自分を磨いていきたいです。

僕は音楽に助けてもらってばっかり

──7月に行われた初ワンマン「リアルライブ・カプセル Vol.0」はいかがでしたか。

新しい発見づくしでした。お客さんも緊張している印象だったんですけど、コール&レスポンスに応えてくれたり、トークで笑ってくださったり、手拍子もしてくれて、お客さんとの距離が縮められました。

──お客さんも緊張してると思ったのはなぜ?

リリースイベントの時はシャイな方が多かったので。それからデビュー曲の「オールカテゴライズ」はネガティブなものが根本的に潜んでいる楽曲で、それに共感するっていうことはほの暗い一面がある内向的な方なのかなって思ったし。だからこそ、自分からファンの皆さんのもとへ歩み寄っていきたいです。

──ご自身の性格はどうでしょうか?

ど内向です(笑)。高校時代は誰とも話してなかったですね。ゲームで知らない人とチャットするくらいで、家族とも全然話してなくて。でも音楽を通して、今まで知らなかった自分が見えてきたんです。ステージに立つことで意思疎通ができるようになったし、僕は音楽に助けてもらってばっかりだと思います。

──もしも音楽をやっていなかったら、内向的なままだったかもしれませんね。

そうですね。音楽っていう感情を出せるものがなければ、人と関わりを持つきっかけがまったくなかったので。

──でも、焚吐さんご自身が内向的な性格だったからこそ、お客さんの気持ちもわかるのでは?

焚吐

そういう部分はあるかもしれません。僕自身、以前はほかの人のライブに行くのは好きじゃなくて、どんなに好きなアーティストのライブでもアンコール前に帰るくらい、人混みや熱気が苦手だったんです。でも自分がステージに立つことで、ほかの方のライブにも興味が湧くようになって。あの頃の自分にライブの楽しさを伝えるように、お客さんにもライブの面白さを味わってもらえるようになりたいです。

──焚吐さんがどのような思いを抱いているか知ることで、お客さんも勇気が湧くと思いますよ。

ファンレターに「初めてライブを観たのが焚吐さんでした」って書いてくれた方もたくさんいるので、そのお客さんが嫌がることはしたくないですね。バンド特有のノリも必要ですけど、あまり過剰になると不快に感じる方もいると思うので、いい塩梅で調整していきたいです。

──11月には2度目のワンマン「リアルライブ・カプセル Vol.1」も控えていますが、こちらはどんな内容になりますか?

1回目と同じくバンド編成でライブを行いますが、弾き語りのコーナーも用意しようかという話も出ていますし、ほかにも新しいことができたらいいなって。ワンランク、ツーランク上の自分を見せられたらと思います。

YUIからたまに遡る音楽遍歴

──これから、どんな作品を作っていきたいですか?

新しいことを突き詰めていきたいです。自分のルーツはフォークソングなので、それを根本としてメッセージを伝えるというスタンスは変わらないんですけど、Vocaloid楽曲なども一緒に聴いてきたので、ほかのジャンルの要素を盛り込むことにも挑戦したいです。フォークとボカロって両極端ですけど、歌詞の言葉数の多さとか、自由度は通じるものがあるので。

──フォークはどんなアーティストの楽曲を聴いていたんですか?

もともとはYUIさんが好きで、そこから矢井田瞳さんといった具合に、どんどんさかのぼっていって、フォークに行き着きました。メジャーな方だとさだまさしさんや森田童子さん、バンドだとたまもよく聴いてました。「かなしいずぼん」とかいいですね。

──たまは意外ですね。確かに、悲しいけれど愉快な様子で描くところは通じるものがあります。

たまは中学生の頃、知久寿焼さんと共演したことがきっかけで知ったんです。

──なるほど。これからも時代やジャンルをミックスして、焚吐さん流の音楽が生まれていくことを、楽しみにしています。

ありがとうございます。

新作CD「トーキョーカオス e.p.」
2016年10月26日発売 / 1400円 / Being / JBCZ-4026
Amazon.co.jp
収録曲
  1. 僕は君のアジテーターじゃない
  2. クライマックス
  3. 四捨五入
  4. 人生は名状し難い(e.p. Ver.)
ライブ情報
リアルライブ・カプセル Vol.1
2016年11月4日(金)東京都 池袋 RUIDO K3
OPEN 18:30 / START 19:00
リアルライブ・カプセル Vol.2
2017年2月25日(土)大阪府 ヒルズパン工場
OPEN 17:00 / START 17:30
2017年2月26日(日)愛知県 ell.FITS ALL
OPEN 17:00 / START 17:30
2017年3月5日(日)東京都 WWW
OPEN 16:15 / START 17:00
「トーキョーカオス e.p.」リリース記念イベント “ニッポンカオス”
2016年10月26日(水)東京都 タワーレコード渋谷店
START 21:00
2016年10月28日(金)愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店 店内イベントスペース
START 18:30
2016年10月29日(土)兵庫県 ミント神戸 2Fデッキ特設ステージ
START 13:00
2016年10月29日(土)大阪府 枚方 T-SITE 2Fオーディオスペース
START 16:30
2016年10月30日(日)東京都 タワーレコード池袋店 6Fイベントスペース
START 18:00
2016年12月3日(土)神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店
START 18:00
焚吐(タクト)

1997年2月20日生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。小学4年生でギターに目覚め、1年後にはオリジナル曲の制作をスタートさせた。2012年、ビーイング主催「トレジャーハント~ビーイングオーディション2012~」において審査特別賞を受賞。2015年12月にはシングル「オールカテゴライズ」でビーイングよりメジャーデビューを果たす。2016年5月には2ndシングル「ふたりの秒針」をリリース。表題曲はテレビアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマとして使用された。さらに同年7月から8月までの期間中には、P'PARCOで計60公演にわたるアコースティックライブ「ノンブレス・ノンリプレスライブ」を実施。10月にはNeru、ササノマリイ、カラスヤサボウをアレンジャーに迎えた新作CD「トーキョーカオス e.p.」を発表した。