高みを目指したのに沈んでいた

──では、カップリング曲の話もしましょう。「てっぺん底辺」という曲ですが、これはいつ頃作ったんですか？

高校3年生の終わりぐらいですね。「オールカテゴライズ」を高校3年の夏に書いて、それで自分の気持ちが外に向き始めたので、その勢いに乗って書きました。

──テンポ感からもその勢いが感じられますね。バンドサウンドで、すごく疾走感がある。このくらいスピード感を持ったテンポは、焚吐さんの得意とするところなのでは？

確かにアップテンポのほうが作りやすいですね。さっきも言った通り、自分はもともと歌詞に言葉を詰め込みたいタイプなので。

──歌詞から察するに、あがいてもちっとも思い通りにならないジレンマを吐き出したい、という衝動に駆られて書いたものでしょうか？

ちょうどこの曲を作っていたとき、人間関係も楽曲制作も出口が見えない状態に陥っていたんです。高みを目指していたつもりだったのに、実は沈んでいたみたいな感覚があって、どう改善すればいいのかわからなくなっていた。その気持ちをそのまま歌にしたんです。

──特にどんな部分でジレンマを抱えていたんですか？

人と話す上での言葉遣いですね。どんな言葉がその場に一番ふさわしいのか、すごく神経質になっていたところがあって。はっきり言ってしまうと相手が傷付くし、でもぼかしてしまうと誤解を生むし……。そういうさじ加減がわからないジレンマを抱えてましたね。

──コミュニケーション上のジレンマですね。

「てっぺん底辺」を作る際も、どの言葉を選べばこの気持ちが一番伝わるんだろう、という悩みがあって。この曲を完成させることで、それを打破しようとしていたんです。

──アレンジは「オールカテゴライズ」に続いてNeruさんが手がけてます。焚吐さんから何かリクエストはしたんですか？

ラストのサビが終わったらいきなり間奏が途切れる、という感じでデモを作っていたのでそれを生かしてもらいつつ、Neruさんの得意な曲調で攻めてほしいとお願いしました。てっぺんから底辺を行ったり来たりしてる歌詞の世界観とリンクしたものになればいいなと。

──アレンジが上がってきて、どう思いました？

いい意味で「やってくれた！」というか。素晴らしいと思いました。歌う際はとにかくメロディと同じように、楽曲の勢いが途絶えないように歌いましたね。

1つのことだけじゃなく、いろんな面を見せていく

──この2曲をはじめ、表現の幅が広がっているようですが、今後はどんな曲を制作してみたいですか？

和風の曲を作ってみたいですね。和楽器を使って、旋律的にもそれを生かした曲作りができたらいいなと思ってます。あとはパーカッションとボーカルだけしかない、ワールドミュージックみたいな曲も作ってみたい。1つのことしかできないというよりは、いろんな面を見せていくほうがカッコいいと思うので。もちろん自分らしい音楽性を突き詰めたい気持ちもありますが、あまりそこに固執せず、いろんなことを試していきたいと思ってます。

──5月からはアコースティックライブも始まりますね。

これからやっていきたいのはバンドサウンドなんですけど、今まで弾き語りを続けてきたので、その一面も見せないともったいないという気持ちもあって。そこから徐々にいろんなことを試して、その時々の音楽に合わせた楽器も導入しながら、自分の幅を広げていきたいですね。