崎山くんがあふれさせてくれた
──ハイブリッド感はリード曲「I My Me Myself」にもよく出ていますね。同時に竹内さんの自己紹介ソングのようにも聞こえました。
この曲の歌詞はけっこう時間がかかりました。いろんな自分がいる中で、好きな自分もいれば、こういうところが嫌いだ、みたいなことをノート1冊分書き出して。でも、嫌いな自分をどっかに放っちゃったらダメで、そういう自分も含めて全部認めてあげないと成長できないなということを、この1年いろんなことを経験してすごく感じたんです。なので、あなたらしくないね、君らしくないねって言われても「そんな自分も私なんです」と自信を持って言えたら、もっと毎日が楽しくなるだろうなと思って作った曲です。
──どんな自分を嫌だなと思いましたか?
取材していただくとき「趣味はなんですか?」という質問が多いんですけれども、デビューしてしばらく私、趣味と言えるものが全然なくて。「温泉卵にハマってます」くらいしか言えなくて、いやそれは趣味じゃないよなと思いました(笑)。それで「ギター以外に自分を構成するものってなんだろう? ないのかな?」と考えてたら、すごく落ち込んだ時期があったんです。そこで自分が音楽以外の何かに興味を持ってなかったことに気付いて。それを認めたくない自分が嫌いだったんですけど、1回それを認めてしまうとすごく楽でした。趣味がないことを落ち込むのではなくて、ないと認めてそんな自分を好きになればいいじゃんって1回私なりに消化してから、いろんな場所に出向いてみたり、これまで興味がないと思っていた分野にあえて触れてみたらすごく楽しくて。今はだいぶ趣味が増えたなと思います。
──今ではマンガ、アニメ、ゲーム、歴史建造物探訪……すごく多趣味ですよね。
好きなものが増えると、こんなに毎日楽しいんだなと感じてます。そういうことがあって、まずはどんな自分も自分なんだと認めることから始まる何かがある、もっともっと毎日が楽しくなるという思いを込めて「I My Me Myself」という曲を書きました。
──この曲では英語と日本語でラップも披露されています。やはりロサンゼルスで幼少期を過ごしたから、歌詞を書くときに根底にあるのは英語のリズムですか?
5歳までしか住んでなかったので、「家の前でどんぐり拾ってたな」くらいしか覚えてないんですけれども(笑)。でも、やっぱり小さい頃から洋楽に親しんでいたこともあって、自分のルーツにあるなと思っています。なので曲作りするときもメロディが先に出てきて、それにでたらめな英語を付けて、トラックを作って、最後に歌詞を乗せることが多いです。その中でなんとなく韻を踏んでる場所があったり、ここの部分はめちゃくちゃ気持ちいいなとか。でたらめな英語の段階で気持ちいいなと思っているところは、そのまま歌詞にするときもあるし、サビの部分だけデモのときから変わってないこともけっこうあります。そういう耳なじみのよさを意識しながら作ってます。
──日本語を乗せていく作業は楽しいですか?
はい。メロディに合うところはそのまま英語を入れるし、日本語の方が伝わりやすいなと思うところは日本語を入れるし。そのメロディが一番生きる言語を入れるようにしてるんですけど、日本語は特に同じ音でも漢字が変われば意味が変わったりバリエーションがたくさんあるので。「このメロディにハマる日本語を5文字で言い表すにはどうしたらいいんだろう?」とか、いろんな角度から考えるのはすごく楽しいです。
──「I My Me Myself」には「未完成な感性は果てしない」というフレーズが登場しますが、この曲に崎山蒼志くんが参加していることは意味のあることだと思いました。
彼とは一緒にイベントを企画したり普段からも仲良くさせてもらっていて、今回ノイズギターで参加してもらったんですけど、今おっしゃった「未完成な感性は果てしない」というフレーズは崎山くんのライブを観て思いついた言葉なんです。崎山くんがアルバムに参加してくれることはあとで決まったので、びっくりしました。しかもこの曲なんだって。同世代のミュージシャンをゲストでお招きするのは初めてなんです。今回この曲を作っていて何かもう一押し欲しいなと思った部分を、崎山くんが埋めるどころかあふれさせてくれたなと思うくらい、クールでカッコいいノイズギターを弾いてもらいました。彼のギタープレイから学ぶことはたくさんあるので、これからもまた何か一緒にできたらと思ってます。
──「I My Me Myself」はライブでのコール&レスポンスが楽しみです。
この曲は最初からライブで盛り上がる曲が欲しいなと思って作ったので、ものすごいアッパーチューンになってますし、コール&レスポンスもちゃんと追っかけのところまでコーラスで入れちゃってるので、ぜひみんなで歌ってください(笑)。
有村さんのことだけを考えて
──「伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聴こえなきゃ。」は凝ったアレンジと浮遊感がたまらないメロウなナンバーです。
この曲はエレキギターを弾いてみようというところから始まったんです。今まで楽曲で自分がエレキをがっつりメインで弾くことはなかったので、エレキがシンプルに入るものにしたいねということで音数もだいぶ少なくして、映えるアレンジになったなと思ってます。
──「もしもしもしも」という歌い出しを思いついたときは「やった!」という感じでした?
あはは(笑)。この曲の歌詞は、もしかしたら今までで一番短時間で書いたかもしれないです。出てくるまではちょっと時間がかかったんですけど、書き始めてからは2時間くらいで一気に書き上げました。書いたあとびっくりしたのが、英語が1個も入ってないんです。でも、この曲はきっと日本語が一番映える曲なんだと思って、そのまま、ほぼ手を加えず。アルバムで最後にレコーディングしたのがこの曲なんですけれども、シンプルだけど何度も聴き返してもらえるような1曲になったかなと思ってます。この曲もライブでやるのが楽しみですね。エレキを持って。
──エレキはこれまで弾いたことがなかった?
持ってはいたんですけど、あまり人前でやることはなくて。まずはアコギをちゃんと弾きたい気持ちがあったのでなかなか手を付けてこなかったんですけど、せっかくだし、今しかないという気持ちで必死にレコーディングしました。
──「RIDE ON WEEKEND」はWOWOWのオリジナルドラマ「有村架純の撮休」主題歌です。
いろんな日常を描いたオムニバスドラマということで、有村さんのことだけを考えながら。いろいろな作品で拝見していたので主題歌を歌えるのはうれしかったですし、台本を読んでいても役からにじみ出る人柄のよさをすごく感じたので、あったかい曲になればいいなと思って作りました。オムニバスなので毎回話の内容は違うんですけど、全話の台本を読んでいろいろメモしていた中に、1つ共通点があって。そこから、ありのままの自分でいられるから素敵なんだということをテーマに書き上げました。
──この曲みたいに誰かをイメージして作品を書くことってこれまでもありました?
はい。「at TWO」に入っている「ペチュニアの花」は家族に向けて書いた曲ですし、「SUNKISSed GIRL」は自分の理想とする女性像、憧れのアーティストとか女優さんを何人か思い浮かべて、この人たちに共通することはなんだろうと考えながら書いた曲です。背筋がピンと伸びて、凛とした女性を感じてもらえたらなと思います。
──アルバムラストを飾るのはデビュー曲「ALRIGHT」です。この曲が最後というのは決めてましたか?
そうですね。この曲でキャリアが本格的にスタートしたので、やっぱり最初のアルバムはこの曲で締めたいなって。それ以外の曲順は1つのワンマンライブを作るような感覚で、まずワーッと盛り上がって、メロウな曲がきて、ラストスパートに向けて、みたいな感じで何回もシャッフルして考えました。いくつかパターンを並べて実際に聴きながら散歩したりランニングしたりして一番しっくりきたのがこの曲順です。朝から晩まで、どんなシチュエーションでも、どんなタイミングでも聴いてもらえる曲たちだと思います。
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