デビュー5周年イヤーの竹内アンナが「at FIVE」で示した自己肯定感、アコギの可能性

竹内アンナの新作EP「at FIVE」がリリースされた。

「at FIVE」はデビュー5周年イヤーを迎えた竹内にとって通算5枚目のEP。彼女の武器であるアコースティックギターのサウンドを軸に、日常の一瞬を表現した全5曲が収録されている。竹内がこの作品を通じて届けたいメッセージは何なのか。これまでのEPの中でもっとも実験的な作品となった「at FIVE」の制作秘話や、デビューからの心境の変化を本人に聞いた。

最終ページにはデビュー5周年にちなんで、竹内が今年達成したい5つの目標を直筆で書く習字企画も掲載。筆を墨汁に浸した竹内は半紙と向き合い、目標1つひとつを丁寧にしたためた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 大川晋児

私もあなたも素敵

──今年の8月に竹内さんはデビュー5周年を迎えるんですね。

あっという間でびっくりします(笑)。

──ちょうど5年前は「SXSW 2018」(2018年3月に開催されたアメリカの大型フェス)への出演を目前にしたタイミングでしたね。

そうですね。たぶん5年前の今頃は出演に向けて準備を進めていた頃だと思います。

竹内アンナ

──ここからどんな未来が待ち受けているんだろうという期待が高まっていた時期かと思いますが、当時はアーティストとして将来どうなっていきたいと思っていましたか?

私は母親の影響で新旧洋邦ジャンルを問わずなんでも聴いてきたんですけど、音楽を始めたときから根幹にあるのが、小さい頃からよく聴いていたEarth, Wind & Fireの「September」で。「September」を聴けば、どんな状況だったとしても、誰もがみんな楽しい気持ちになれると思うんです。幅広い世代の方が知っている曲ですし、それってすごいことですよね。私は音楽を聴くとき、どこかその音楽に救いを求めている部分があるので、竹内アンナの曲についても聴いてくれた人が「この音楽があるから私は大丈夫」と前を向いたり明るい気持ちになってくれたらいいなと、ずっとそんな気持ちで作っています。5年前も次へのきっかけや新しい選択肢、1歩前に進める何かをみんなに届けられたらという思いでした。

──確かに、音楽って単なる娯楽だけでなく、人生の岐路に立ったときの次のアクションへのきっかけになることも多いですよね。

人それぞれ正解は違うわけだし、私たちも曲の中に答えを提示することはできない。でも、それぞれの答えにたどり着くための何かを、曲の中にちりばめられていたらいいなと思うし、それは悲しくなるようなものではなくて、必ず気持ちが上向きになるポジティブなメッセージにしたいと思っています。

──竹内さんがこれまで発表した楽曲や、今回のEP収録曲を聴いても感じましたが、リスナーの自己肯定感を高めてあげるような歌詞が強いのかなと。

自己肯定感というものをどういう切り口で音にしていけるかという考えは、曲を作り始めてからずっとバックボーンにあるんですが、自分も曲を作ることで「私は私なんだ。私は私の音楽が大好きなんだ」と再認識できているところもあって。「私は私、あなたはあなた。それが素敵でいいじゃん」というメッセージをその都度楽曲として発表していて、今回のEPで言うと「WILD & FREE」という曲には最新の私が提示する自己肯定感みたいなものが強く表れています。

竹内アンナ
竹内アンナ

手をつなぐより強く引っ張るぐらいの力強さを

──この5年で積み重ねてきた作品には、竹内さんご本人の成長も大きく反映されていると思います。デビュー以降のご自身の人としての成長に関してはどう捉えていますか?

めちゃくちゃいろんな面で、たくさんのことを吸収できた5年だったと思います。それは人との出会いもあるし、いろんなライブを経験したこともあるし、うまくいったこともそうでなかったことも全部含めて自分の糧になってくれたなと。身近に素敵な先輩方がたくさんいて、その方々を見ているとすごくキラキラしているんですが、そのキラキラの素はそれぞれからあふれてくる自信だということに気付かされました。もちろん毎回、リリースする楽曲は私が自信を持って一番いいものを出しているつもりなんですが、初期はその自信のベクトルが自分に向いていたものだったんです。でも、EPを重ねるごとにだんだんと「私から私へ」ではなく、「私からあなたへ」と外向きになってきたのが、この5年の変化や成長なんじゃないかと思います。

──その変化のきっかけって、なんだったんでしょうね?

やっぱりライブができなかった2020年、あの時期が自分の中では大きかったですね。それ以前はライブができて当たり前でしたけど、リリースしてライブしてという流れが自分にとって大きなモチベーションになっていたんだと、コロナ以降に気付かされて。曲ってライブで届けて初めて完成するものだと思っていたから、その手段が1つ断たれてしまったときに急に不安になってしまったんです。それまで自分は聴いてくれた人に寄り添える楽曲を作りたいと思っていて。その気持ちは今も変わらないんですけど、物理的に寄り添えない、会えない時期を経て、「寄り添うだけじゃ足りないのかもしれない」ということに気付いて、以降はよりストレートな言葉を使ったり、わかりやすいサウンドを求めたり、もっと強気な感じでみんなに届けたいと意識してきました。例えば、1stアルバムが隣に座って手をつなぐような音楽だとしたら、次に出す作品ではその手を強く引っ張れるぐらいのものにしたいなって。そのためには自分の自信ももっと必要だし、作る曲のベクトルももっと外へ向けていかないといけないと気付いて、曲作りへの向き合い方がどんどん変わっていったんだと思います。

竹内アンナ

──実際、そういった思いは昨年のアルバム「TICKETS」にも強く表れていたと思いますし、作品のテーマも含めて歌詞やサウンドで冒険している感も強く伝わる、今の世の中にフィットした1枚でしたね(参照:竹内アンナ「TICKETS」リリース記念、フィロソフィーのダンス・佐藤まりあと仲良しトーク)。

そうですね。「TICKETS」という作品を完成させられたおかげで、私も変われた部分がたくさんあります。最初はライブができないことに「なんでこんな目に遭わないといけないんだ」と落ち込みました。ただ、そういうマイナスなこともプラスに変えていける力が音楽にはあると思うし、ああいう時期だからこそ生まれた音楽もあるわけで。「TICKETS」のおかげでいい道を見つけ出せたかなと思います。

──竹内さんが歩んできたこの5年間に世の中の価値観が大きく変化しましたが、そんな時期を20代前半に過ごしたことはご自身にとって相当大きかったんじゃないでしょうか。

確かに。コロナ禍があったから配信ライブが普及したりサブスクの聴き方が変わったり、SNSの使い方も大きく変わったり。今まで注目していなかった部分にスポットを当てることができるようになったので、もちろんコロナは早く終わってほしいとは思うけど、今はコロナ以前も以降も経験できてよかったと思います。ただ、これから「じゃあ終わりました」と言われても、コロナ以前の日常がそのまま戻ることはないと思うので、過去を取り戻すよりもニューノーマルをいかにして楽しむかを探っていきたいです。