姫が自ら書いた「あやな公国」国歌

──その国歌の歌詞を自分で書くことも最初から決めていた？

いや、最初はコンペで選ぶ予定だったんです。自分が書くという発想がありませんでした。誰か作詞家さんを指名して書いてもらうか、コンペにするかを考えたとき、せっかく曲をコンペで選ばせてもらったので、歌詞もコンペがいいかなって。すごく素敵でかわいらしい歌詞がいっぱいあったんですけど、ふと「それって私じゃなくても歌えてしまうのでは」と思っちゃったんです。

──「あやな公国の国歌」というテーマ設定のもと、竹達さんのキャラクターや足跡を加味しながら書いてもらったんですよね。

はい。どれも素敵で、言葉としてはとても美しくてキレイなんだけど、「あやな公国の国歌」というテーマがある以上、私らしさがないといけないんじゃないかな……という話をしたら「じゃあ竹達さん、自分で書いてみます？」って言われて「えええええ？ そ、その発想はなかったな……」って（笑）。でも納得いくものを作りたかったし、私ならではの個性が欲しいと思ったときに、やっぱり自分で書くべきなのかなと思って、時間はあまりなかったんですけど「じゃあ作ります」と答えて2日で作りました。

──虚を突かれたところから始まったにしては、2日で仕上げるというのはなかなか早いんじゃないでしょうか。

あ、でもおおまかな全体像ができたのは2日目なんですけど、2番終わりのCメロだけはどうしても出てこなくて、結局1週間ぐらいかかったかな（笑）。

──ピンポイントで悩んでしまったと。

私の中での「あやな公国」のお姫様像はできていて、自由に動いてくれたので、1番ができたら2番もスラッといけたんです。でもCメロは追っかけが入るんですよね。追っかけって私すごく苦手で……。何が苦手かと言うと、CDで聴くぶんにはすごく気持ちがいいんですけど、ライブで歌うときは追っかけ部分は自分で歌わないので追っかけの部分を主メロとして入れてしまうと、ライブで歌うときになんか落ち着かないんですよ。例えば「いつまでも忘れない歌 / 私は～～」という歌詞があったとき、「いつまでも忘れない」が主メロで「歌」が追っかけだと、ライブでは「いつまでも忘れないー 私は～～」みたいなことになるんですよ。私は役者なので言葉の意味が抜けちゃうと気持ちが入らないんです。

──ああ、なるほど。

ライブでは自分の声を同期で出すこともできるけど、生感のある歌声とCDの声では温度差があるからイヤなんですよね。主メロは主メロでそこだけで通じる言葉があって、追っかけも追っかけでそこだけで通じる言葉。しかも主メロと追っかけを重ねたときにもっと膨らみが生まれる歌詞にするには……とすごく言葉を選んで作ったので、Cメロは本当に苦労しました。

──「apple*colorful*princess」の歌詞は、あやな公国のお姫様の物語として描かれているものの、公国の民、ファンに向けてのメッセージも多分に込められていますよね。

自分の中だけで完結する曲にはしたくなかった、というのは1つありました。聴いた人によっては恋の歌だと感じたり、「自分に向けての歌だ」と感じたり、いろんな捉え方をしてもらえる歌詞にしたかったんです。素直に「ありがとう」とは言いません（笑）。

ベストアルバムをそのまま届けるライブを

──2018年2月25日に開催されるライブはタイトルに「竹達彩奈 BEST LIVE "apple feuille"」とあるように、このベストアルバムの楽曲を披露する公演になるのでしょうか。

はい。できればアルバムの曲順通りに歌いたいです。できれば。いろいろ都合があると思うのでその通りにはいかないかもしれないですけど、できることなら14位から1位まで、だんだんランクアップする流れで歌いたいなあと思ってます。

──全曲プラス国歌で15曲。ワンマンだったらもう少しいけるかもしれないから……ランキングに収まりきらなかった曲を歌ったりするのもいいですよね。

そうですね。あとはニューシングルの発売も決定したので（参照：竹達彩奈、2018年第1弾シングルは「だがしかし」続編オープニングテーマ）、そっちも歌えるかもしれません。でも基本はベストアルバムをそのまま届けるライブにしたいです。

──5周年ということもありますし、いつものライブとは気構えが違うところもありますか？

どうなんですかね。今までのライブはだいたい新曲を引さげてのものだったから、毎回新しく覚えることがいっぱいで、てんてこ舞いになっちゃうんですよ。でも今回はベストアルバムなので、すでに何度かライブで歌っている曲がほとんどなんですよね。気持ち的な焦りが少ない分、ちょっと安心しているところがあるんですけど、ベストアルバムはパワフルな曲が多いので体力的に大丈夫かなという心配はあります（笑）。

一生に一度の“肉”アニバーサリー

──今のところは2018年第1弾シングル「OH MY シュガーフィーリング!!」のリリースと2月のライブが決定していますが、そのあとの活動については？

何も考えてないです（笑）。まずは2月のライブに向けてがんばって、そのあとのことはポニーキャニオンさんが何か考えているのかもしれないですけど……何かあるんですか？

スタッフ　来年は29歳ですからね？

肉？ そうですね、肉アニバーサリーが控えているので（笑）。一生に一度の肉アニバーサリーですからね。

──なるほど（笑）。28歳、29歳と言うといわゆるアラサーですけど、竹達さんは歳を重ねることについてはどう考えてますか？

「もう28だ、言いたくない」みたいなのはあまりないですね。「もうすぐ30かー。思ったより子供っぽいまま30になっちゃうなー」みたいな焦りはありますけど（笑）。

──音楽活動以外、プライベートな部分も含めて、この先やってみたいことや「こうありたい」と考えていることはありますか？

声優としては、もっと外画（海外の映像作品）のお仕事をして幅を広げていきたいです。アニメを演じるのはもちろん楽しいんですけど、いろんな表現の形ができたらいいなと思っています。昔は絶対に自分の顔を出すのは嫌だと思っていたのに、今はテレビやCMに出させていただくこともあって、昔ほど抵抗なくできるようになりました。それってアラサーだからですかね（笑）。「いいじゃん、楽しければいいよ！」みたいな気持ちに変わってきました。振り返れば二十代前半とは考え方や価値観は変わってきていて、「面白いことなら進んでやろう」とか「今やっていることは、未来の自分につながっていくかもしれない」といろんなことに抵抗なく手を伸ばせるようになったのは、経験を重ねてきたからこそなのかなと思います。