ライブでの向き合い方

──一方、カップリングの「Hey! MUSIC BOYS & MUSIC GIRLS!」では、沖井さんが堰を切ったように大暴れしているという（笑）。でも沖井節に関しては、もう慣れたものですよね。

竹達　慣れたかはわからないですけど（笑）、好きですね、すごく。

沖井　恐縮です。

竹達　曲によって声の伸び方、響き方って違うと思うんですけど、沖井さんの曲って音が出しやすいんですよ。練習で歌っていて「ここのキー出しづらいな」とか「この歌詞歌いづらいな」っていうことありますよね。例えばカキクケコのキの母音が出しづらいとか。「Hey! MUSIC BOYS & MUSIC GIRLS!」のレコーディングのとき「ここのキー出ないかもしれません」って言ってて実際歌ってみたら「あ、出たわ」みたいな（笑）。すごく歌いやすいというか。

沖井　そりゃもう、考えてますもん。

竹達　あはは（笑）。すごく私のことを考えてくださってるんだなあってわかるんですよ。私としても「Sinfonia! Sinfonia!!!」を超えるものにしたくって。沖井さんは「『Sinfonia! Sinfonia!!!』の続編だから」っておっしゃってたので、じゃあより素敵なものにしないといけないなって。

──この曲は「Sinfonia! Sinfonia!!!」よりも外を向いた、竹達さん自身が直接的にリスナーに向けて呼びかけているような曲ですよね。つまりライブを前提に作られた曲、さらに音楽的な活動を続けるための曲なのかなと。

竹達　キャラクターの場合はその作品のことを考えるんですけど、自分自身を出すとなると、自分を見つめ直して考えていかなきゃいけないっていうのがすごく難しいんですよね。ライブでは、自分は今みんなに何を伝えたいんだろう。どんな気持ちを共有したい？と考えながら……まだまだヒヨッ子なので試行錯誤中です。

沖井　お客さんときちんと向き合いさえすればちゃんと通じるし、そうなったときの一体感たるや、ホントほかに替えられないものだから。おそらく近いうちにそこのブレイクスルーはあると思うよ。あれだけいいお客さんがいっぱいいるんだから、もう身を預けるつもりで行ったほうが僕はいいと思う。

竹達　そうですよね。私のファンの方はみんな本当にいい人たちばっかりで、私が仮にライブを失敗したとしても、多分それを責める人っていないと思うんですよ。だからこそ自分もそれに応えたいし、それ以上のものをお返ししたいといつも思っていて。みんなわざわざお金を払って来てくれるわけじゃないですか。そこで失敗したらどうしようってプレッシャーがめっちゃ大きくて！ いつも逃げ出したくなるんですよ（笑）。みんなの気持ちを裏切ったらどうしようとか、それが一番恐くて。

沖井　失敗したらしたで、それはその日そのときしか観られない貴重なイベントになるのよ（笑）。そこで自分の緊張も解けるし、お客さんはお客さんでそれを楽しむから。そこで「なんだよー」にはならない。「がんばれあやち！」になるから。そこはホント信用して飛び込んだほうがいい。Cymbalsなんてさ、デビューライブで僕がベースの弦切ったんだから（笑）。

竹達　えー！

沖井　弦が切れて、ボーカルの土岐麻子に「ブチ壊しですよ」ってステージ上で言われて（笑）。しょうがないから対バンの人にベースを借りて。でもそこですごくリラックスできた。その後のCymbalsのライブスタイルはその日に決まった感じ。

竹達　へえー。……でもそれって土岐さんがフォローしてくれたからこそですよね。

沖井　あそこで「ブチ壊しですよ」ってツッコミが入ったからね。

竹達　何も言われなかったらずっと「やっちまった……」って落ち込んじゃいますよね（笑）。私ひとりだから……。

──あー、そこはソロの弱味ですよね。

沖井　じゃあ僕が客席から「ブチ壊しですよー！」って言うよ（笑）。大丈夫、大丈夫。お客さんがツッコんでくれるから。

古今東西どんな音楽をやっても竹達彩奈になる

──今後もおそらくこの竹達彩奈プロジェクト、チーム竹達は継続すると思うのですが、この先はどんな音楽になりそうですか？

沖井　「時空ツアーズ」というシングルが、ここで本当の王道ポップスを持ってきましたよということで、これが次のでっかいヒントになっていると思うんですよ。「何をやっても竹達彩奈になる」っていう。この声をもってすれば何をやってもキャッチーになる。「時空ツアーズ」というタイトルがまたいいなと僕は思うんだけども、古今東西どんな音楽をやっても竹達彩奈になる。だから音楽的な挑戦はいくらでもできるなって。ヒップホップもハウスもジャズもできると思う。このシングルがなかったら僕はそこに気付かなかったかもしれない。もっと「今風の音楽ってなんだろう」とか考えてたかもしんないけど「あ、なんでもできるよこれ」というのを示してくれたのが今回のシングルですね。

小林　最近いろんな仕事をしていて、もうJ-POPよりもアニメ音楽のほうがだいぶ先を行ってんじゃないかと思うんですよ。京平さんが久しぶりに曲を書き下ろしたのが彼女だったのも、きっとそういうことだと思うんです。このプロジェクトによって、もっとその垣根が壊れたらいいなというのはすごく感じますね。どうしてもアニメ業界の音楽を「そういうもの」として聴こうとするんですよ。従来の音楽好きは。京平さんのこの曲なら、その垣根を壊してくれるんじゃないかなって。プロジェクト自体もそういうふうに、もっと表に向かって飛び出したいというか。そういう気持ちはありますね。

──では竹達さんのほうから、このお2人への要望、リクエストはありますか？

竹達　いやもう私は幸せいっぱいなので、満足と言うとおかしいですけど……現状維持が希望です（笑）。

沖井・小林　ははははははは！（笑）

沖井　保守的だなー！

竹達　自分から「今度こんな曲がいいです」とか言うことはないので……。

沖井　言ってみればいいじゃん。どういう曲が歌いたいのか知りたいもん。僕が作れるかどうかは別として。

竹達　うーん……私バラードが好きなんですよ。

沖井　バラードかあ！

竹達　ゆったりした曲とか。ボサノバ系もやってみたいかな。私カフェとかで流れてる音楽が好きなんですよ。

沖井　ボサノバね。ああなるほど。……先に言ってよ！

竹達　ははは（笑）。具体的な名前を出すと、羊毛とおはなさんみたいな音楽もやってみたいんですけど。

小林　ああ、いいんじゃない？

沖井　俊太郎くんのピアノ1本で歌ったりね。やろうよ。僕は横で観てるから（笑）。

竹達　いやあ、でも今置かれている状況がホントに幸せなので、多くは望まないです。

──では最後に何か言い残したことはないですか？

竹達　えーと、見捨てないでください。

沖井　あはははは！（笑） こちらこそだよ！

小林　近いうちに叶うかわからないけど、同じステージで一緒にやれたらうれしいですよね。

──「Hey! MUSIC BOYS & MUSIC GIRLS!」みたいな曲を作っておいて一緒にやらない手はないというか（笑）。

沖井　うん。自分でやりたくて作ってるというのはあるかもしれない（笑）。