ナタリー PowerPush - 竹達彩奈

幼少期から歌手デビューまで あやち伝説徹底検証

アニメはごはん

──音楽に対しての興味はどうですか?

音楽は「アニメに付いてくるもの」ってイメージでした。アニメやゲームが主食で、前菜とデザートに歌が付いてくるみたいな(笑)。子供の頃からアニメの主題歌を覚えて歌うのは好きでしたけど、いわゆるJ-POPには全く興味なかったですねー。

──女の子によくある、テレビで歌っているアイドルへの憧れみたいなものも?

全くなかったです。友達が振り付けをマネしてたのを一緒にやったりする遊びはしてましたけどね。歌に対しても、「ラピュタ」の歌だから「君をのせて」(井上あずみ)が好き、「(美少女戦士)セーラームーン」の歌だから「ムーンライト伝説」が好き、みたいな。

──一貫してアニメが軸にあるんですね。

竹達彩奈

そうですね。ごはんみたいな感じです。

──ごはん?

ごはんは1食ぐらい抜いても平気だけど、アニメとゲームとマンガは抜けないんですよね。心のごはんなんです。心の栄養なんで、摂らないと死んじゃうんですよ(笑)。今もマンガを月に何十冊も買い貯めて、空いた時間にちょっと読んだり。寝る前の15分とかでも読まないとダメなんですよ。

──では、アーティストでいう「ルーツミュージック」のように、竹達さんにとってのルーツと呼べるアニメ、マンガ作品はなんですか? やはり先程も話にあった「ラピュタ」や「セーラームーン」になるのでしょうか。

実は「セーラームーン」はリアルタイムではそんなに観られてないんですよ。お兄ちゃんとのチャンネル争いで(笑)。あとになってちゃんとまとめて観たときに「こんなに素晴らしい作品だったのか! なんでリアルタイムで観られなかったんだ!」ってショックを受けました。リアルタイムで毎週のめり込んで観てたアニメだと「カードキャプターさくら」ですね。その頃にはお兄ちゃんはもういい歳で、チャンネル争いもなく。さくらちゃんは本当に毎週楽しみに観てて、友達と遊んでいても時間になると「あ、さくら観たいから帰るわ!」って(笑)。

──マンガだとどうですか?

マンガはそれこそ私のだけじゃなく、お兄ちゃんの少年マンガもたくさんあったし。なんだろうなあ、「ドラゴンボール」もあったけど「ゴリラーマン」も「BOYS BE…」も読んでました(笑)。私自身も「なかよし」を毎号買ってたし、単行本だと「赤ずきんチャチャ」「こどものおもちゃ」……いっぱいありすぎて、特にこの作品が好き!というのはなかったですね。マンガがあれば読む。「そこに本があるから」みたいな感じで(笑)、手当たり次第に読んでましたね。

──どの作品がルーツ、というよりも、その頃読んだ全てが栄養として活きているという。

そうですね。あんまり意味のないものはなかったかなと思います。

あずにゃんとの出会い

──声優デビューはどのような感じでしたか?

最初にお仕事としていただいたのは、ケータイ用の着ボイスですね。シミュレーションゲームのキャラクターで「おはよう! 今日も元気だね!」みたいなセリフを30ワードぐらい。

──まだ学生の頃ですよね。

16~17歳だったのかな。でもあんまり声優デビューという実感はなかったですね。というのも、録音をしたのが養成所にあるブースで、事務所に入ってからもよく使っている場所だったから、レッスンの延長みたいな雰囲気だったんですよ。

──「声優」と聞いてイメージする、マイクが何本か立っていて、みんな台本を持って入れ替わりで声を当てるというような収録現場ではなかったんですね。あの風景に対する憧れはなかったですか?

それはそんなになかったです。養成所でもマイクの前に立ってやるレッスンってあまりなかったんですよ。私が通っていたところは舞台系のレッスンが多くて。発声やストレッチをしっかりして、シェイクスピアの作品で演技の基礎を学ぶんです。マイクの前でセリフを言うレッスンは4年目ぐらいでしたね。だからマイクでセリフを録ること自体、その仕事が初めての経験で。初めてアニメのアフレコをしたときに「あー、こんなふうになってたんだ」「マイクがこんなにいっぱい立ってる!」ってすごく新鮮でした。

──その後に出会った「けいおん!」という作品、あずにゃん(中野梓)というキャラクターは、恐らく竹達さんの代表作とも言えるものだと思います。この役に抜擢されたのもデビュー間もない頃なんですよね。

竹達彩奈

初めてのレギュラーが「けいおん!」だったんですよ。マイクの前に立つのにもまだまだ慣れていなかったので、最初はいかにマイクワークをこなすか、それだけでもう必死でした。私の出番は後半からだったんですけど、第1話からアフレコを見学させてもらって、みんながどんなふうにやってるかをずっと見てました。でもやっぱり実際にマイクの前に立たないとわからないんですよ。芝居もきちんとやりながら、台本を音を立てずにめくったり、サッとマイクから移動したりっていう技術も必要で。それまでレッスンで学んできたのとは違うことがいっぱいあったんです。慣れるまで1年はかかりましたね。

──新人という立場だと、余計に緊張してしまいますよね。

「けいおん!」はみんな世代もそんなに変わらないけど、ほかの現場だと自分が子供の頃から耳にしていたベテランの声優さんもいらっしゃって。一緒にお仕事できるのが光栄な反面「私のヘタな芝居を聞かれちゃうのか」っていうプレッシャーがすごかったです(笑)。もっとああしとけばよかった、こうしとけばよかったっていう後悔が今になっても……あああああ!!

──はははは(笑)。でも初のレギュラーだった中野梓という役がいきなりの“はまり役”だったし、今後も竹達さんのプロフィールからは欠くことのできない存在になりましたよね。竹達さんにとって「あずにゃん」は今どういう存在ですか?

あずにゃんは後半からの登場なので、はじめはそんなに受け入れられるとは思っていなくて。その前から既に大人気だったし、唯ちゃん(平沢唯 / CV:豊崎愛生)、澪ちゃん(秋山澪 / CV:日笠陽子)、律っちゃん(田井中律 / CV:佐藤聡美)、むぎちゃん(琴吹紬 / CV:寿美菜子)の4人の空気感が出来上がってたんですよ。元々出来上がっている作品に入っていくのは勇気がいることで、もしかしたら「4人の『けいおん!』がいいのに」っていう人もいるかもしれないし。私自身にしても、エンドロールで名前を見て「竹達彩奈って誰?」って思われるだろうし。そんな不安を抱えて飛び込んでいったんですけど、結果的にたくさんの方に受け入れてもらえて。感謝の気持ちでいっぱいですね。

──竹達さん自身の名前も一気に広まりましたよね。

それまでのんきにやってたブログが、放送の翌日に急にアクセスが増えて「ひいっ!」って(笑)。うれしい気持ちはもちろんだけど同時に不安もあって、その状況に着いていくのに必死でした。がむしゃらに走ってたみたいな感じでしたね。

2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」 / 2012年9月12日発売 / PONY CANYON

CD収録曲
  1. ♪の国のアリス
  2. CANDY LOVE
  3. ♪の国のアリス(instrumental)
  4. CANDY LOVE(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • ♪の国のアリス(Music Video)
竹達彩奈
竹達彩奈(たけたつあやな)

埼玉県出身の声優アーティスト。2009年放送のテレビアニメ「けいおん!」中野梓役で大きな注目を集める。「けいおん!」から派生したユニット「放課後ティータイム」では数々のヒット曲を生み、2009年12月には神奈川・横浜アリーナ、2011年2月には埼玉・さいたまスーパーアリーナにてコンサートを行った。2012年4月には初の個人名義によるシングル「Sinfonia! Sinfonia!!!」でソロアーティストとしてデビュー。9月12日には2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」をリリースする。