音楽ナタリー Power Push - tacica

異色インタビュー再び “コート上の王様”カゲガラスが猪狩&小西を直撃!

“2曲目のエンディングテーマ”という葛藤

カゲガラス ヒナガラスが「LEO」の話を聞いたとき、猪狩さんは「『アニメのテーマソングだから』ということは意識していなかった」と言っていたカゲ。

猪狩 うん。ただ聴いてくれる人の胸に迫るものを作れればいいと思ってました。だからこそアニメのスタッフの人たちが、曲に込めた思いを汲んでくれたのがうれしかったんですよね。

カゲガラス 今度のエンディングテーマの「発熱」も作り方は同じカゲか?

猪狩 いや、今回はある意味「『ハイキュー!!』のために書き下ろした」って言ってもいいと思う。これは「LEO」ありきで来た話だろうなっていう思いが、自分的には拭えなかったから。「LEO」と同じように、自分たちがカッコいいと思う曲、誰かの胸にくるだろうなと思う曲を純粋に作るつもりではいたんだけど、どこかで「同じアニメのエンディングである」「『LEO』みたいな曲を求められているのかも」って意識しちゃうところはあって……。

カゲガラス どう意識したカゲか?

猪狩 「ハイキュー!!」のエンディング曲ってどうあるべきなんだろう?ってことをまったく考えなかったと言えばウソになるって感じですね。「LEO」の続編的な曲がいいのか? はたまた「LEO」をまったく意識しない曲がいいのか?みたいな葛藤というか。

カゲガラス そういう葛藤って珍しいカゲ?

猪狩 うん。過去の曲を意識して曲を作ることってほとんどないから。唯一「jibun」(2013年)っていうミニアルバムは、初の音源だった「Human Orchestra」(2007年)の5年後にリリースするっていう意味合いの作品で。今思うと「jibun」は「Human Orchestra」を意識しながら作っていたのかもしれないって感じがするんだけど、そのとき以外は、そういう作り方をしたことはないかな。

小西悠太(B)

小西 近くで見てる分にはそういう葛藤ってあまり感じてはいなかったんですけどね。いつも通り、悩みながら、でもしっかり作ってるな、っていう印象というか。

猪狩 それはそうだと思う。「そういう葛藤もあったといえばあった」という感じでしかないと言えばなかったから。その葛藤をずっと抱えながら曲を書いていたわけではないんですよね。だから「発熱」って、結果として「LEO」とはすごく真逆の曲になったな、と思っていて。曲調も含め。

カゲガラス そうカゲ。サビのところで声が高くなるところとかは「LEO」と同じ感じだけど、テンポは速いし、演奏も激しいカゲ。

猪狩 葛藤もなくはなかったけど「今のtacicaの曲」を作るのが一番いいことなんだろうな、っていう結論に至ったから、こういう曲になりました、というのが本音のところですね。

それは「ハイキュー!!」サイドの愛があっての話

カゲガラス でも「発熱」は影山と日向と及川が出てくるエンディングの映像にちゃんと似合ってるカゲ。

猪狩 それは「ハイキュー!!」サイドの愛があっての話ですよ(笑)。オレらは映像を観ながら曲を作るわけじゃないから、画に合わせようと思っても合わせられない。でもアニメのスタッフの人たちは曲を聴きながら映像を作ってるわけだから。映像と曲がハマってるって言ってもらえるなら、それはオレたちの曲がカッコよく聞こえる映像を作ってくれた「ハイキュー!!」スタッフのおかげなんでしょうね。逆に言えば、キャラクターのことやストーリーのことを意識して、それを音として表現するっていう作業はもちろんしてるんだけど、それ以上のことには踏み込まれたくないというか。オレらに対して「映像がこう展開するから、Aメロは四つ打ちで始まって、途中で8ビートに切り替えて、Bメロではタムを回してもらって」とか言ってくるのって、ちょっと失礼な話だと思うし、つまらない話だとも思うんですよ。

カゲガラス つまらないとはどういうことカゲか?

猪狩 ミュージシャンであるオレらと、映像の専門家っていう畑の違う2組が何かを一緒にやるんなら、お互いがお互いの思いを探り合ったほうが面白いものが生まれると思うし。音と画がハマってるのであれば、それはお互いが試行錯誤しながら音を作って、映像を作ったからなんだと思う。

カゲガラス 小西さんは、「発熱」がアニメの映像に似合うのはなぜだと思うカゲか?

小西 オレもわかってないですね(笑)。映像を観て「ハマってるな」とは思ったし、アレンジやレコーディングのときも「『ハイキュー!!』らしさってなんだろう」とは考えたけど、「アニメのエンディング曲ってこういう感じだろう」みたいなことは考えてなかったから。

猪狩 曲を作り始めた頃にはちょっとだけ試してみたんですけどね。「『ハイキュー!!』のエンディングテーマらしい曲を書いてみよう」って。ある意味、職業作家的っていうのかな。そういう作り方をしてみようとも思ったんだけど……。

カゲガラス それが「葛藤」っていうことカゲか?

猪狩 そういうことなのかもしれない。でも、どうしてもそういう作り方ができなくて(笑)。結局、5曲くらいかな? さっき言った通り「tacicaの新曲である」ということを前提にしながら、自分たちなりにキャラクターたちのことも思い浮かべつつ作ったデモを「ハイキュー!!」サイドにも聴いてもらって、最終的に「発熱」を選んでもらった感じなんです。

カゲガラス 「ハイキュー!!」のために5曲も作ったカゲか!

猪狩 うん、メッチャ作った(笑)。まあメッチャ作ったのはウソじゃないけど、それが苦だったかって言われればそうではなくて。

カゲガラス 大変じゃなかったカゲか?

猪狩 ある意味、アルバムの曲を作るのと同じだから。「こういうアルバムにしよう」っていうコンセプトというか、全体像があって、それにハマる曲を書いたり、アレンジを考えたりするのと……。

小西 そう変わらない(笑)。

tacica ニューシングル「発熱」 / 2016年2月24日発売 / SME Records
アニメ盤 [CD] / 1300円 / SECL-1850
通常盤 [CD] / 1200円 / SECL-1849
収録曲
  1. 発熱
  2. 510
  3. 発熱(TV edit)(※アニメ盤のみ収録)
アニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」
© 古舘春一 / 集英社・「ハイキュー!!セカンドシーズン」製作委員会・MBS

「週刊少年ジャンプ」で絶賛連載中、コミックス累計1,800万部突破の次世代王道スポーツマンガ「ハイキュー!!」。2014年4~9月に放送されたテレビアニメが好評を博したことを受け、2015年10月からはセカンドシーズンがMBS、CBC、TOKYO MX、BS11ほかで放送スタート! 2016年1月から放送の<春高予選編>では烏野高校が春の高校バレーでの全国出場を目指し、宮城県予選に挑む!

tacica(タシカ)
tacica

猪狩翔一(Vo, G)、小西悠太(B)のロックバンド。2005年、札幌で結成。以来地元を拠点にライブ活動をスタートしながら、叙情的な世界観と骨太のロックサウンドを武器に知名度を全国区のものに。2007年6月リリースの初音源「Human Orchestra」は各種インディーズチャートで1位を記録し、2008年10月には所属レーベルをSME Recordsに移し、さらに活動を活発化。2009年には2ndフルアルバム「jacaranda」をリリースし、バンド史上最大規模の全国ツアー「パズルの遊び方」も大成功のうちに終了させる。以降精力的にライブ活動、フェスへの参加などをする傍ら2011年には3枚目のフルアルバム「sheeptown ALASCA」、2013年には4thフルアルバム「HOMELAND 11 blues」を発表し、また2014年に至るまで「命の更新」「newsong e.p.」「HALO」などの音源もコンスタントにリリースする。さらに2014年9月にはアニメ「ハイキュー!!」の第2クールエンディングテーマ「LEO」を発表し、結成10周年を迎えた2015年から2016年初頭には初の中野サンプラザ公演の開催、5thフルアルバム「LOCUS」の発表とそれに伴う全国ツアー、企画ライブツアー「三大博物館2016 ~太陽と月~」を開催。そして2016年2月、「ハイキュー!! セカンドシーズン」のエンディングテーマを含むシングル「発熱」をリリースする。