カルチャーの垣根を超えたい
──ビジネスの方向と楽しむ方向、バンドのベクトルは今どっちに向いてるんですか?
Washiyama どちらかといえばビジネスです。単純に食えるようになるために。なんだかんだ、まだ音楽で食えてるバンドではないんで、いったん音楽で食えるようになってから考えようぜという。
──音楽で飯を食えるようになるというのは、バンドだったらツアー、アルバム、ツアー、アルバムの繰り返しが一番近いと言えば近いですよね。
Washiyama 近いんですけど、それ以外でもっと何か面白いことをやれたらなあ。
──何か考えてることはあるんですか?
Washiyama スポーツに絡んでいけたらいいなと個人的には思ってて。
──スポーツ?
Washiyama アメリカで大リーグの試合を観てきたんですけど、7回の前にミュージシャンが演奏してたり、花火が上がったりしてるんですよね。スポーツと音楽がエンタテインメントとして融合してる。その感じが日本にはないなと思っていて。そういうシーンにバンドが参入できれば面白いんじゃないかなと。
──スポーツと音楽が大規模な場所で結び付いてるものと言えば、スーパーボウルのハーフタイムショーです。
Washiyama うんうん。ああいう感じでやるのもいいし、単純に今までやってきた音楽のフィールドじゃないところでもやってみたい。日本の音楽シーンって、デカいところでやるというと、武道館とか横浜アリーナとかなんとかスタジアムとかになるけど、それは普通にバンドとしてのイベントが多い。でも俺らはスポーツとかと絡めたい。
──ナゴヤドームでドアラと共演もできますね。
一同 わはははは!(笑)
Washiyama そういう誰もやったことないような音楽のフィールドを開拓したい。それがお金につながるかは置いといて。それができたら、たぶんまたやりたいことが見つかるだろうし。そういうイベントごとにどんどんつながっていけれたら、カルチャーの垣根を超えられる。
ストリートの経験が反映された楽曲構成
──音楽的な話もお聞きしたいんですけど、どんなふうにして今のユニークな音楽性ができあがってきたんですか?
Washiyama ライブで演奏する中で、メンバー1人ひとりの顔が1曲ごとに全員1回出るか出ないかというバランスが決め手で。だからずっとベースやギターだけがカッコいい曲とか、ドラムがずっといい感じのビート刻んでるというのは、サスフォーっぽくないと思うんです。1曲の中で全員がポンポンポンと出られるような曲を書くようにしていったら、今のスタイルになったというか。
──1曲の中にメンバーそれぞれの見せ場があると。
Washiyama 何かしら各々に難所があるとも言える。ベースだったら今回のアルバムは全曲で難所があるもんね。何かしら。
Fukuda 全部難しいよ。
一同 ははは(笑)。
Washiyama でもギターもドラムも歌も、ほかの楽器が目立つ部分がちゃんとそれぞれある構成は意識して作ってますね。
──バンド全体で何か訴えるとか、バンドサウンドで何かをお客さんに伝えるというよりは、個々の色を入れていきたいというほうが強い?
Washiyama 最近のバンドでよくありがちな「客との一体感」みたいなものを追求しているわけではなくて、メンバーそれぞれに役割を与えて、決められた部分でどれだけお客さんを沸かせられるかみたいな。そっちに近いかもしれないですね。どんだけそいつにいいパスを送れるかが重要で。
──なぜそういう考え方になったんですか?
Washiyama 路上でやっていくうちにそうなりました。「せーの!」で音を出してわーっと一体感を生み出して、4人5脚のように同じ歩幅でメンバーそれぞれが同じことしてたら、気持ちを合わせるためにどこか冷静にならないといけない。その瞬間にお客さんが離れていくんですよね、路上だと。その時間は無駄じゃないのかもしれないけど、目を逸らす瞬間を作らないのがまず路上をやるのに必要なことだと思っていて。そうなると、1人ひとりで間髪入れず順繰りに小出ししていかないと続かないんですよ。
──なるほど。普通のライブだと例えば最後の盛り上がりのためにここはちょっと落としておこうとか、全体の構成や緩急や強弱のメリハリを考えるけど、路上でそれをやったら一気にお客さんいなくなっちゃうと。
Dennis 「もう帰ろう」って空気になっちゃうんです。
Washiyama そう。だって盛り上げて盛り上げて、落としたときに、「ああよかったー」なんて漏らしながらチップ出して帰って行くさま、すげー想像付きませんか?
──確かにそうですね。
Washiyama で、そのあとにまた盛り上げる曲を持ってきたとしても、客がいなくなったあとにやるよりは、静かな曲でも目を奪えるようなプレイをしているやつが1人でもいたら。落とす落とさないというのはライブハウスだと照明とか音響で演出できると思うんで、そこはどうとでも対処できる。俺らがほかのバンドと培ってきたものの違いがあるとすれば、そういう目を奪う瞬間を各々が作れるってこと。バンド全体で作らなくても大丈夫なんです。
──路上でやるときと、ライブハウスでやるときは、メニューも変わるし構成も変わるしっていうことですね。
Washiyama そうですね。そもそもサイズが全然違うから。
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“Dad Rock”に受けた影響