音楽ナタリー PowerPush - サニーデイ・サービス
再結成後に3人が気付いたこと
昔は空回りしていた
──去年サニーデイのベストアルバムが出たタイミングで曽我部さんにインタビューしたとき(参照:曽我部恵一「曽我部恵一 BEST 2001-2013」「サニーデイ・サービス BEST 1995-2000」インタビュー)に、「当時のサニーデイは神聖なスノードームの中の世界みたいだった」と話してくれましたよね。でも今のサニーデイも、基本的にはあまり変わらないような気がしていて。
曽我部 うん、まあ閉じてるよね。
──90年代のサニーデイは右も左もわからない若者が集まって、ほぼ初期衝動だけであの世界を作っていた。今は3人ともいろんな経験を積んで40歳を過ぎているのに、同じように閉じたまま、自分たちの世界を作れるのはなぜなんでしょう?
曽我部 俺も不思議です。意図せずこうなってるわけだから。
──しかも今のサニーデイが当時を再現してるとか再生産してるということでもない。
曽我部 もしそうだったら「いつものサニーデイサウンドですね」ってことで落ち着くんだろうけど、確かにそういう感じでもないよね。
──今のサニーデイを見ていると、サニーデイの一番ピュアなところを抽出して煮詰めたような印象すら受けます。
曽我部 うん。そこだけ残ったっていう感じだろうね。若い頃はもっとアグレッシブだったし、空回りしてたから。でも今はさすがにもう落ち着いたというか、もっと売れなきゃいけないとか、音楽シーンで何かを残さなきゃいけないとかそういう気持ちはとりあえず落ち着いて、本質的なところが残った気がする。
──本質というのは?
曽我部 柔らかいメロディ、優しい歌。
──なるほど。
曽我部 昔はちょっと嫌だったんだけどね。「サニーデイって癒やされますよね」とか言われるの。
──確かに当時のサニーデイもサウンドやメロディは優しい手触りでしたが、一方でヒリヒリとしたムードもありましたよね。ライブに行って「なんでこの人たちこんなに怒ってるんだろう」と感じたこともありますし。
曽我部 うんうん。
──そうやって空回りした結果、解散したということなんでしょうか?
曽我部 そうだね。あと憧れもあるじゃん? 上手なバンドがうらやましいとか、自分じゃない何かを求めたり。そういう時期っていうのはあったかもしれない。それでみんながあわなくなっていった。
音楽的な高みは空想だった
──例えば丸山さんは90年代当時、どんな気持ちでバンドをやっていたんですか?
丸山 いやあ……いろいろですね。アルバム1枚ごとに感情が変わっていってたからちょっとうまく説明できないです。
曽我部 でも緊張感はやっぱあったよね、ずっと。
丸山 あった。お客は関係ないみたいな感じでライブやってたし。緊張しながら突き詰めていく感覚っていうか。
──それは音楽的な高みを目指していたということ?
丸山 だったのかな。
曽我部 まあ、その“高み”っていうのも空想なんだけど。
──空想?
曽我部 だって音楽的な高みなんて実際はないんだよ。「この3人で高みもないでしょ」っていうか、この3人が目指すべきはそういうものじゃないから。でも当時の俺たちはストイックにそこに行こうとしてた気がする。だから結局空回りしちゃうんだよね。
田中 ひたすら練習してずっとやり続けたらなんかすごいところに行けるんじゃないかみたいな。20代だったし、そういう感じはあったかな。まあ全然どこにも行けないんですけど。
曽我部 そこに音楽がもたらす本質的な優しさとかはないよね。くつろいだ感覚とか。
田中 でもそれを20代の俺らに説明したってたぶん伝わらない(笑)。
曽我部 そうだね。
丸山 僕は今、ライブは気持よくなるためにやるもんだって思ってますからね。それは昔とまったく違うところですね。
曽我部 昔は苛立つためにやってたって感じがあるね(笑)。
丸山 ふふふ(笑)。
曽我部 でもやってるほうは苛立ってても、そこに何かがあるんだよ。やっぱり心が音にこもっていれば、それが説得力をもって聴いてる人を癒してくれるわけ。「嘘を言って慰めてるわけでもなく、がんばれよって励ましてくれてるわけでもなく、ああ、なんかこの人の心がここにあるな」っていうことがさ、聴いてる人を癒やすことがあるんだよね。“癒し”っていうと語弊があるかもしれないけど。
──優しい気持ちになる?
曽我部 そうそう。くつろげるっていうか、ホッとするというか。そういうものが音で出せればって思ってるだけだね、今は。
──90年代にも自分たちの曲でくつろいでほしい、といった意識はあったんですか?
曽我部 ないけど、結果お客さんはそれを受け取ったと思うんだよね。
──そうですね。
曽我部 不思議なんだけど、でもそれは一生懸命やってたからだと思う。「こういう曲書いたら売れるんじゃねえの?」みたいな気持ちでやってたことは1回もないからね。もちろん売れてほしいと思ってたし、毎回オリコンの結果見て憤ってたけど。
田中 あはは(笑)。
曽我部 だからそこは間違ってなかったと思ってる。一生懸命やっててよかった。
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収録曲
- おせんべい
- 星のレストラン
- 愛し合い 感じ合い 眠り合う
- アビーロードごっこ
- 少年の日の夏
- エアバルーン
- One Day
- 夏は行ってしまった
- 夏のような人
- 晴れた日のメロディ
- きみが呼んだから
ライブ情報
- サニーデイ・サービス「渋谷公会堂コンサート 2015」
- 2015年3月27日(金)東京都 渋谷公会堂
OPEN 17:45 / START 18:30
前売 4500円(全席指定)
サニーデイ・サービス
曽我部恵一(Vo, G)、田中貴(B)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年にミニアルバム「星空のドライブep」でデビューし、1995年には1stアルバム「若者たち」をリリース。フォーキーなロックサウンドと文学的な世界観が音楽ファンの間で好評を博し、7枚のアルバムと14枚のシングルを世に送り出すが、2000年12月に解散。2008年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO」で再結成を果たして以降はスローペースで活動を重ね、2014年10月に9枚目のオリジナルアルバム「Sunny」をリリースした。