ナタリー PowerPush - sukekiyo
首謀者・京の思惑
とにかく自由でいたい
──歌詩についても聞かせてください。資料には“歌詩ヒント”として、「愛した故に失う怖さ、愛情に依存しもがき苦しむ」(「elisabeth addict」)、「決断と意思、流動的感情の果て」(「latour」)などの言葉が記されていますが、こういう発想はどんなふうに生まれてくるんですか?
毎回そうなんですけど、何も考えず、そのときの自分のマインドを素直に出してるんですよ。楽曲ができて仮歌を歌うときに即興で歌詩を付けていくんです。そこで出てきたキーワードを使って書いていくことが多いから、「曲に呼ばれた」としか言いようがないんですけどね。歌詩のストックも一切ないですから。
──あらかじめ決めるのが本当にイヤなんですね。
苦手なんですよ、決められたことをやるのが。「これはやらないとダメ」みたいなことって、ホントに無理で。自由じゃないと自分の力を発揮できないことも理解してるし……。歌詩すらも覚えられないから、ライブでは即興で歌うこともあるんですよ。メロディもその場で変えたりするし、歌わないこともあるし。それくらい自由じゃないと自分を活かせないと思うんですよ。
──“歌わない”ってすごいですけどね。
そのときの空気感とか流れのなかで、「今はそんな気分じゃないな」と思ったら歌わないこともあるっていう。そういうときはボーッと突っ立ってたりするんですけどね(笑)。それがホントの“生もの”だと思うし、自分たちがやってるのはショーじゃないので。パンク精神というわけではないですけど、とにかく自由でいたいという気持ちが強いんですよ。
──誤解されることも多そうですよね。「なんで歌わないんだ」とか。
それはありますけど、まず自分の考えてることが理解されるとは思ってないんですよ。ルールとか決められたことを一生懸命やるっていうのが、一般の常識じゃないですか。僕は“歌わない”ということを一生懸命やってるんだけど、そもそも考え方がまったく違うから、話してもわかってもらえないですよね。文句を言われることも多いけど、わかってくれる人もいるわけで、そういう人を大事にしていけばいいのかな、と。
──音楽という表現にもルールがありますよね。例えば楽器のチューニングだったり、曲の構成だったり。そういうものもジャマになることがあるんですか?
そうですね。ライブの日程もできれば3日前くらいに決めたいですから。「今歌いたい」とかね(笑)。さすがにそれはムリですけど……。ただ写真や絵も含めて、すごく自由にやれてますけどね。やりたいことがありすぎて、時間が足りないんですよ。自由すぎて逆に大変という状況ですね、今は。
「自分が好きなバンドにはこういうことをやってほしい」
──「IMMORTALIS」の初回限定盤のDISC 2には、SUGIZO、HISASHI、TK、acid androidといった豪華なアーティストたちによるリミックス、コラボレーション曲を収録。こちらも大きな話題を集めています。
面白くて、ワクワクできるようなバンドでありたいと思って。リスナーとして「自分が好きなバンドにはこういうことをやってほしい」というのを形にしたんですよね。20人近くかな、話を持っていったのは。ほとんど面識のない方ばかりなんですけど、ほぼ全員の方が快くやってくださって。
──一般的なリミックスとはかなり趣が違ってますよね。それぞれのアーティストが独自の解釈を加えながら楽曲を再構築しているというか。
そうですね。話を持っていくときも「こんな感じでお願いします」みたいなことは一切言わなかったし、リミックスという言葉も使ってないですから。単に「好きにイジってください」って言っただけで。楽しみで仕方なかったんですよね、皆さんからリミックスのテイクが戻ってくるのが。10代とか20代の初めの頃って、好きなバンドのCDが発売されると開店前からCD屋に行ったりするじゃないですか。そのときの感覚がひさびさに戻ってきたというか、「早く来ないかな」ってずっとワクワクしていて。1つひとつの作品に対して「うわ、こんな感じになるんだ?」って思ったし、その人の色もちゃんと出ていて。すごくよかったですね。
──純粋にワクワクする感じって大事ですからね。
いろんな音楽を知ってくると、どうしてもワクワク感が少なくなりますからね。若いときに受けた衝撃はなかなか越えられないというか……。ただ、今回の場合は違ってましたね。まだ売れるかどうかもわからないバンドなのに、皆さんが純粋に「面白そうだね」という理由で引き受けてくれて。それはうれしいですよね、やっぱり。
──確かにsukekiyoはこれがスタートですからね。
そう、新人なので。事務所からも、完全に新人バンドとして扱われてるんですよ。レコーディングの予算も、ウチの事務所の若いバンドよりも少ないくらいで(笑)。そういうのは全然苦にならないんですけどね。今の環境でも、これだけのものができてるので。
- 1stアルバム「IMMORTALIS」 / 2014年4月30日発売 / FIREWALL DIV.
- 初回生産限定盤 [CD2枚組] 4104円 / SFCD-0133~4
- 通常盤 [CD] 3456円 / SFCD-0135
- DISC 1収録曲
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- elisabeth addict
- destrudo
- latour
- nine melted fiction
- zephyr
- hidden one
- aftermath
- 烏有の空
- the daemon's cutlery
- scars like velvet
- mama
- vandal
- hemimetabolism
- 鵠
- 斑人間
- in all weathers
- DISC 2収録曲(初回生産限定盤のみ)
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- aftermath Collaboration with キリト (Angelo)
- 鵠 Remixed by PABLO (P.T.P)
- zephyr Remixed by TK (凛として時雨)
- in all weathers Remixed by Devilslug
- nine melted fiction Remixed by 石井 秀仁 (cali≠gari, GOATBED)
- hemimetabolism Remixed by SUGIZO (LUNA SEA, X JAPAN)
- scars like velvet Remixed by 室姫 深
- the daemon's cutlery Remixed by 人時
- hidden one Remixed by HISASHI (GLAY)
- mama Remixed by 橘 尭葉 / 妖精帝國
- aftermath Remixed by acid android
sukekiyo(スケキヨ)
DIR EN GREYのボーカリスト・京のソロプロジェクト。2013年10月より始動した。2013年12月29日に行われたSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)のツアー「SUGIZO TOUR 2013 THRIVE TO REALIZE」のSHIBUYA-AX公演で初ライブを行い、年末の「COUNTDOWN JAPAN 13/14」に出演する。2014年元日にメンバーを含むプロジェクトの全貌を明らかにし、初音源「aftermath」のビデオクリップを配信。4月に1stアルバム「IMMORTALIS」を発表した。