ナタリー PowerPush - sukekiyo

首謀者・京の思惑

やりたいことの99%はできた

「in all weathers」PVのワンシーン。

──さらにアルバムの収録曲「in all weathers」のビデオクリップには鬼束ちひろさんが出演していて。

昔から独特の空気感があって、自分というものを曲げず持ってる方だなって。そういうアーティストの方はあんまりいらっしゃらないし、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと思ったんですよね。最初はDISC 2への参加をお願いしたんですよ。「歌ってもらいたいな」と思って。それは丁重にお断りされたんですけどどうしても諦めきれなかったから、ビデオクリップに出演してくれませんか?って聞いてみたら、そっちは快くOKしてくれたっていう。撮影の日に初めてお会いしたんですけど、やっぱりすごかったですね。カメラが回ってても回ってなくても、ずっと“鬼束ちひろ”だったというか。

──今作では楽曲の制作スタイル、他のアーティストとのコラボレーションを含め、やりたいことがかなり実現できた?

うん、やりたいことはいっぱいあったんですけど、99%はできましたね。アルバム自体、時代を選ばないし、流行に捉われないサウンドだと思うんですよ。時間が経っても古くならない気がするし、気に入ってますね。

「まだまだだな、俺は」

──京さん自身のこの先のビジョンについても聞かせてください。DIR EN GREY、sukekiyoはさらに進展していくと思いますが、音楽という範囲の中でまだまだやりたいことはある?

いっぱいありますよ。ハードコアも好きだし、中森明菜みたいにバラードだけの作品も作ってみたいし(笑)、カバーアルバムも出したいし。ただ一気にいろんなことをやって、ファンの子が混乱するのも困りますからね。そこはタイミングを見ながらやらないと……。僕はやりたいことを形にしてるだけなんですけど、すぐに「迷走してる」とか言われるんで。それに対して、いちいち説明するのも面倒くさいし。

──京さんに限らず少しでもイメージと違うことをやると、“迷走中”みたいに言われることは確かに多いような気がします。

受け手側の生き方とか聴いてる音楽の幅とも関係してると思うんですけど、たぶんそれぞれの人のなかでルールみたいなものがあって、そこからハミ出ると「迷走してる」ってことになるんじゃないですかね。「1つのことを突き詰めて、ブレない」というのが日本人らしいのかもしれないけど、「それしかできないんじゃないですか?」とも言えるし。そんなのは言い方とか捉え方によって変わってきますからね。まあ、自分の表現の幅が異常に広いことは自覚してるんですけど。

──表現者としての京さんを支持していて、京さんの作品全体が好きというのも多いんじゃないですか?

「aftermath」PVのワンシーン。

……2人くらいかな。

──少なすぎでしょう(笑)。

マイナス思考なんですよ、僕は。自分の親ですら、すべてをわかってるわけではないと思うし。

──孤独を感じることはないですか?

うん、常に孤独な感じはしますね。それがパワーになってる気もするんですけど。

──それでも「やりたいことは全部やる」っていう。まあ、人は必ず死んでしまうし、その時間をどう使うか、というのが生き方に直結するわけですからね。

そうなんですよね。今回のソロプロジェクトを始める1年半くらい前なんですけど、時間を決めないでいろんなことをやっちゃうと、垂れ流したまま終わるような気がしたんですよ。「何もしないまま日曜日が終わった」みたいなことってあるじゃないですか。そういうのがイヤだったから、根拠なく「3年」と決めて、それまでにすべてやり切ろうと思ったんです。3年経ったら、また期間を伸ばして。そうやって続けていくことで、無駄な時間を作らずに進んでいけるんじゃないか、と。だからどれだけ忙しくてもシンドイとは思わないんですよね。

──年齢も関係しているかもしれないですね。フルで動ける時間はさらに限られているというか……。

でも、この前ホドロフスキーのドキュメンタリー映画(「ホドロフスキーのDUNE」)をちょっと早く観させてもらったんですね。ホドロフスキーは85歳なんですけど、今もすごいパワーなんですよ。しゃべってるだけでもすごく伝わってくるものがあるし、表現に対してもめちゃくちゃ貪欲で。それを見てショックを受けたし、「まだまだだな、俺は」とも思って。年齢は関係なくて、意識とか追求心なんですよね、大事なのは。

──今の話を聞くとラテン語で“不死”を意味する「INNMORATALIS」というタイトルに対する思いも変わってきますね。死を運命付けられている人間の在り方だったり、そこで生まれる表現だったり……。

アルバムのタイトルに関しては、バンドのボーカリストのソロとか別バンドって、あんまりカッコよくないというイメージだったり、「片手間にやってるんじゃないの?」という人もいると思うんですよ。sukekiyoはそうじゃなくて、確固たるものがあってやっているし、“廃らないもの”という気持ちもあるので。そういう意味で「IMMORTALIS」というタイトルがぴったりだと思ったんですよね。

1stアルバム「IMMORTALIS」 / 2014年4月30日発売 / FIREWALL DIV.
初回生産限定盤 [CD2枚組] 4104円 / SFCD-0133~4
通常盤 [CD] 3456円 / SFCD-0135
DISC 1収録曲
  1. elisabeth addict
  2. destrudo
  3. latour
  4. nine melted fiction
  5. zephyr
  6. hidden one
  7. aftermath
  8. 烏有の空
  9. the daemon's cutlery
  10. scars like velvet
  11. mama
  12. vandal
  13. hemimetabolism
  14. 斑人間
  15. in all weathers
DISC 2収録曲(初回生産限定盤のみ)
  1. aftermath Collaboration with キリト (Angelo)
  2. Remixed by PABLO (P.T.P)
  3. zephyr Remixed by TK (凛として時雨)
  4. in all weathers Remixed by Devilslug
  5. nine melted fiction Remixed by 石井 秀仁 (cali≠gari, GOATBED)
  6. hemimetabolism Remixed by SUGIZO (LUNA SEA, X JAPAN)
  7. scars like velvet Remixed by 室姫 深
  8. the daemon's cutlery Remixed by 人時
  9. hidden one Remixed by HISASHI (GLAY)
  10. mama Remixed by 橘 尭葉 / 妖精帝國
  11. aftermath Remixed by acid android
sukekiyo(スケキヨ)

DIR EN GREYのボーカリスト・京のソロプロジェクト。2013年10月より始動した。2013年12月29日に行われたSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)のツアー「SUGIZO TOUR 2013 THRIVE TO REALIZE」のSHIBUYA-AX公演で初ライブを行い、年末の「COUNTDOWN JAPAN 13/14」に出演する。2014年元日にメンバーを含むプロジェクトの全貌を明らかにし、初音源「aftermath」のビデオクリップを配信。4月に1stアルバム「IMMORTALIS」を発表した。