音楽ナタリー Power Push - SuG

武瑠が「現代」と「病」を歌う理由

健康だからこそ病んだことがやれる

──カップリング曲の「ゆりかご」は武瑠さんの作詞・作曲によるミディアムチューンです。R&B、ヒップホップの要素も入っていて、「SICK'S」とはまったく違う世界観ですね。

武瑠(Vo)

この曲は今年の夏に作ったんです。夏の夜空の月や星はすごくキレイだけど、ずーっと、それこそ永遠にあるかのように輝き続けていることって少し怖いなと思ったんです。人間にはちゃんと終わりがあって、だからこそ誰かがそばにいてくれるってことが大事なんだろうなって思いからこの曲を書きました。この時期、多く曲を書いてたんですよね。今もわりとそうなんですけど、書こうと思えばすぐにできるし、歌詞もデザインもどんどんアイデアが出てくる。ツアーが終わってからは、ずっとそういう状態ですね。

──苦しかったツアーから解放されて、クリエイティブな感覚が戻ってきたのかもしれませんね。

というか、健康になったんだと思います(笑)。ホントに実感したんですけど、体調が安定していないと、不安定なことは考えられないんですよ。ファンタジーとかも、絶対に元気じゃないと書けないなって。作品を作るときって、自分を追い込むようなところもあるし、ちょっと病みそうになるときがあると思うんです。僕もずっとそう思ってやってきたんだけど、実は違ってましたね。健康だからこそ、病んだときのことも考えられる。今は身体も声も安定しているから、ブッ飛んだことや尖ったこともやれる。最近、めっちゃ運動しているんですよ。昨日も4時間くらいバスケやってたし(笑)。そういう時間が取れるようになったのも大きいですね。

──3曲目の「JUICY」はガレージパンク風のナンバーです。作曲はmasatoさんですが、これだけストレートな楽曲も今まではあまりなかったですよね。

ギターのリフが軸になっている曲は以前もあったんだけど、そういう曲ってこれまでは選曲する段階で落ちてたんですよね。この曲はサビのメロディもすごくいいし、ライブでも使いやすそうだなと思って採用しました。これ、僕らが若いときに聴いていた1990年代後半から2000年代前半の音楽の感じに近いんですよ。これも「teenAge dream」から続いてるんですけど、自分たちのルーツを辿ろうという気持ちもあるんですよね。最初にバンドを始めたときの感じに戻るというか……。四つ打ちも好きですけど、本来はロック、パンクから始まっていて。そういう音楽をやり直している感覚もありますね。

いい反響がなければ来年はやりません

──年内のライブについても聞かせてください。まず11月29日から12月にかけて全7公演のヨーロッパツアーが行われます。(参照:SuG11月から初の欧州ツアー、初日はケルン)。

フランスとドイツでライブをやったことはあるんですけど、ツアーは初めてですね。自分の中ではこれも「初期衝動」につながってるような気がするんです。俺はファッションから音楽に興味を持ったところもあって、特に映画のイメージが大きかったんですよね。「Trainspotting」とか「あの頃ペニー・レインと」とか「Hedwig and the Angry Inch」とか。その影響でバンドが好きになったから、海外をバスで回るツアーができるのはすごくうれしいんです。スケジュールはタイトですけど、映像を撮りながら回りたいですね。

──海外での活動もさらに活性化させたい?

武瑠(Vo)

俺はやりたいですね。特に今回の「SICK'S」のMVは、自分たちが一番得意なところが見せられていると思うし、海外のオーディエンスにも刺さるんじゃないかなって。SuGはロックから始まってますけど、ファッションの要素だったりヴィジュアル系というバンドの位置付けから「原宿発」っていうイメージもあって。その絶妙な立ち位置にいるバンドは、自分たちしかいないと思うんです。

──年末には「VersuS 2015 極彩SuG VS 極悪SuG」が開催されます。ロックとポップを行き来するSuGの特性を生かしたイベントですよね。

正直言ってめっちゃ大変なんですよ。東京と大阪で2日ずつやるんですけど、セットリストのかぶりがなくて、50曲くらい準備しなくちゃいけないんです。ホント、思いつかなきゃよかったなって。いい反響がなければ来年はやりませんって、書いておいてください(笑)。

──わかりました(笑)。武瑠さんの体調も回復して、バンドの調子も上がってきて。いいテンションで2016年を迎えられそうですね。

まあ、いろいろ大変ですけどね。まずはアルバムを作ろうと思っています。数えてみたらデモが130曲くらいあったから、シングルのために取っておいたりしないで、いい曲をどんどん入れようとしているんです。すごくクオリティの高い曲がそろうと思います。あと、周りの人からの見られ方が変わってきたのも大きいですね。今年はフェスやイベントにも出られたし、SuGっていうバンドのことも少しずつわかってもらえて。今までは「一般の人が聴けるようなものにしないと」という意識もあったんだけど、それが抜けて、得意なことをどんどんやろうと思い始めて。派手なこと、尖ったことをやりながら戦っていきたいですね。

武瑠(Vo)
ニューシングル「SICK'S」/ 2015年12月16日発売 / ポニーキャニオン
「SICK'S」LIMITED EDITION [CD+DVD] / 1782円 /PCCA-04309
「SICK'S」STANDARD EDITION [CD] / 1296円 / PCCA-04310
CD収録曲
  1. SICK'S
  2. ゆりかご
  3. JUICY(STANDARD EDITIONのみ)
LIMITED EDITION DVD収録内容
  • 「SICK'S」MV
  • MVメイキング ほか
VersuS 2015 極彩SuG VS 極悪SuG
  • 2015年12月24日(木)
    東京都 ディファ有明 ※極悪SuG
  • 2015年12月25日(金)
    東京都 ディファ有明 ※極彩SuG
  • 2015年12月28日(月)
    大阪府 松下IMPホール ※極悪SuG
  • 2015年12月29日(火)
    大阪府 松下IMPホール ※極彩SuG
SuG(サグ)

SuG

2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思った通りに進む人たち」や「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいたミュージックビデオ、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の東京・国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが、2013年9月に東京・原宿でサプライズライブを行い活動再開を宣言。同年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを行った。2015年3月にはアルバム「BLACK」をリリース。さらに同年12月にニューシングル「SICK'S」を発表する。