今歌ってもしっくりくる言葉たち

──すでに4人体制で披露している曲の中で、アルバム発表当初から表情を変えた曲はありますか？

「AGAINST THE WALL」は「壁を突き破って前に進む」というメッセージを込めた曲なんですが、当時この曲を書いていたときの「壁」はものすごく高かったんですよ。すごく閉ざされた気持ちでこの曲を書いていた。でも今はそういう時代を乗り越えてきた自覚があるから、今自分が歌う「壁」には当時とは違うイメージがある。「壁」という言葉が示す意味が変わってきた感覚がありますね。

──歌詞に関して言えば、当時のストレイテナーってすごく尖っていたイメージがありながらも改めて歌詞を読むとストレートな言葉がつづられている印象でした。

自分でもこねくり回して歌詞を書いてたイメージが強いんですけど、「REMINDER」とかは改めて歌詞に向き合うとすごくまっすぐ言葉を紡いでいるなと自分でも感じますね。あと「TENDER」という曲は歌詞のテーマをブログで書いたことがあったんです。確かブログに「優しさだけがあればいい」というテーマを書いていたんです。当時はけっこうヒリついたライブをしながらも、歌詞ではそういうことを歌っていたんだなと、自分でもちょっとおかしくて。

──「優しさだけがあればいい」という曲のテーマは、今のストレイテナーの曲にも通じるものがありますよね。

今でもときどき同じようなことを思うんですよ。「もっとみんなが優しくなれたらいいのにな」とか。

──「泳ぐ鳥」という曲はアニメ「カウボーイビバップ」の登場人物であるスパイク・スピーゲルを表す言葉だと、昔どこかのインタビューで読んだことがあります。最近のストレイテナーの歌詞と比べて「TITLE」時代の歌詞はファンタジックなものが多かったと思います。

当時は小説や映画、アニメといったカルチャーに感化されて歌詞を書くことが多かったんですよね。自分の中から湧いてくるものよりも、作品からのインスピレーションがあってようやく歌詞が書けていたというか。今はもっと具体的に自分の人生で感じたことや、今伝えたい言葉を歌詞にするようにしているので、そこに違いはあるんですが、こうして歌詞を読み返すと当時の感情とやっぱりつながる部分はありますね。「AGAINST THE WALL」や「REMINDER」に関して言えば、当時の自分がよくこんな歌詞を書いていたなと思いますね。それくらい今歌ってもしっくりくる言葉が並べられていると思います。

バンドの歴史を振り返るグッズ

──今回のライブ開催にあたってはグッズも販売されます。グッズのデザインはシンペイさんが手がけていると伺いました。

ひさびさに自分たちでグッズを作ってみるのも面白いなと思って。「TITLE」のトロフィーを掲げているジャケット写真をモチーフにしたらどうかというのは僕の案なんですよ。思ったよりもポップなデザインに仕上がりましたが。

──トロフィーを持つ手が骨になっているところも、テナーっぽいなと思いました（笑）。

細部までよく見るとバンドの歴史を振り返るようなモチーフがちりばめられているんですよ。Tシャツの裏面には「KILLER TUNE」のジャケットアートワークをパロディしたイラストがプリントされています。

──「KILLER TUNE」のジャケ写は3人のものでしたが、今回はそこにOJさんが加わって4人のイラストなんですね。

今だからこそ描けるビジュアルですね。ライブなのでぜひグッズも手にしてほしいと思っています。

──ライブ終了後には4人によるトークコーナーもあると伺いました。

そうなんですが、ライブ本編で消耗してしまって全然話せない可能性もありますね（笑）。以前YouTubeのサブチャンネルで公開したライブに関するトークは2DAYSライブの2日目のリハ後に収録したんですけど、疲れていたからか全然うまくしゃべれなくて……。今回は当時のことを思い出しながら、ちゃんとライブの感想を語り合える時間になればなと思っています。

一番はファンに喜んでほしい

──「TITLE COMEBACK SHOW」の話からはちょっと逸れてしまいますが、ストレイテナーの近況についてもお話を伺えればと思います。そもそもここまで長い期間ライブが開催されなかったことは初めてなんじゃないでしょうか？

そうですね。自分たちのツアーのみならずフェスの出演なども毎年欠かさずあったので、半年近くもライブがない状態は初めてです。

──ライブが思うように開催できない現状について、ホリエさんはどう思っていますか？

誰かが怪我をしたとか、そういうフィジカルな理由でライブができなくなる可能性は想定していたし、常にそういう危機感は持っていないといけないなと思っていたんですが、今回はまったく違う形で、しかも業界全体が固まってしまったわけで。自分たちだけとなるとものすごく焦ったり落ち込んだりしたんだろうけど、今はそうではないから変な気持ちなんですよね。何か目的を持っての活動休止とかなら前向きにもなれるんですが、今はちょっと違う状態だし。どうしても作品作りというところにしか力を注げない状況が続いてしまっているという感じです。

──こういう状況になってみて、ストレイテナーというバンドにとってライブはどういう位置付けのものだと感じていますか？

やっぱりライブが一番のモチベーションなんですよね。特に近年は作品を発表したあとにそれを持ってツアーを回って、ライブでもらうリアクションによって「あ、いいものを作れたんだな」という手応えを感じていたから、それがないとなると作品作りに対する気の持ちようも変わってくるんですよ。それに僕はソングライターでもあるから、曲を作ってストレイテナーというバンドが曲を形にしてくれたときの喜びがめちゃくちゃ強いんです。だからライブがなくても僕はそこである程度報われていると思うんですけど、メンバーにとってはライブにおけるモチベーションの比重が僕より大きいだろうと感じていて。

──そういう意味でも「TITLE COMEBACK SHOW」という形でライブを開催することに意味があるわけですね。

メンバーにとってもそうですし、普段から応援してくださってる方々に動いている自分たちの姿を見てもらうことも絶対にあったほうがいいなと思って。やっぱり一番はファンに喜んでほしいですね。

──当日はどんなライブになりそうですか？

目の前にお客さんがいないから、やっぱり普段のライブみたいにオープンマインドで演奏するようにはならないと思うんです。おそらく当時のライブを思い出しながら、演奏に没頭するような形になるんじゃないかなと。

──近年のライブではなかなか見られない姿が観れるかもしれないんですね。

もしかしたら当時の思いに心を持っていかれちゃうかもしれない（笑）。スタジオライブ自体もすごくひさしぶりなので楽しみですね。ぜひいろんな人にライブを観てもらいたいです。