Survive Said The Prophetがニューアルバム「s p a c e [ s ]」（スペーシィズ）を9月26日にリリースした。

今年に入り、劇場アニメ「コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道」、テレビアニメ「BANANA FISH」のオープニングテーマと、次々にタイアップを担当してきた彼ら。バンド初の日本語詞を導入するなど、タイアップ曲でバンドとしてさまざまな挑戦を行ってきた。これらを乗り越える中で、彼らが見つけた1つの答えが「s p a c e [ s ]」だという。この言葉に込められた思いとは。メンバー5人に話を聞いた。

取材・文 / 小林千絵　撮影 / 山崎玲士

新たな挑戦を経て変化したメンバーの距離感

──今年に入ってから「NE:ONE」が劇場アニメ「コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道」の主題歌、「found & lost」がテレビアニメ「BANANA FISH」のオープニングテーマに使用されるなど、大きなタイアップが続いていますね。

Yosh（Vo）　濃いですよね。わかりやすいところで言うとYouTubeでのミュージックビデオの再生回数がすごく伸びてて。バンドとしては1つのチャレンジを乗り越えた機会でもあって。

──と言うと？

Yosh　タイアップ用に作った2曲では日本語詞に挑戦してるんです。正直、それまで日本語詞に抵抗があったんですけど、このタイミングでチャレンジしてよかったかなと。

Ivan（G）　うん、いい感じです。日本で生活してると当然日本語が一番耳に入ってくるから、伝わりやすくていいと思います。

Tatsuya（G）　今後また日本語の曲を作るかはわからないけど、僕は以前から日本語詞にチャレンジしてみたいと思っていたので、この機会にできてよかったです。

──ライブのお客さんにも変化はありますか？

Yosh　単純にお客さんの人数が増えましたね。しかも守ってくれる感じの人たちが増えた感覚があって。勝手な思いかもしれないですけど「こいつらが消えてしまったらヤベーぞ」みたいな気持ちで応援してくれてる人が多い気がする。だから俺らが次のステップ……大きめのキャパシティのライブハウスでライブをするようになったりとかしても妬みがないし、新しくファンになった人に気を配ってるのが見えて、うれしくなります。

Tatsuya　お客さんの幅が広がったという感じがしますね。お客さんの顔を見て勝手に「この人、初めましてだな」って思いながらライブをすることがけっこうあります。

Yudai（B, Scream）　僕らはここにたどり着くまで時間をかけてきたので、聴いてくれた人が“自分が見つけた感”を持ってくれてるのかなって。それがさっきYoshが言ってた、守ってくれる感じにつながるのかも。音楽性ってことじゃなくて、スタンスは昔から変わってないので、聴いてもらう機会さえあれば自然にライブに来てくれる人は増えると思ってたんで、そうやってお客さんが増えてきたのかなと思いますね。

Show（Dr）　さっきYoshが言った日本語詞もそうだし、ここ数年、メンバー同士での衝突や葛藤がよくあって。それを経てお互いの距離感が変わったり、全員で改めて気持ちを1つにしたりしたんです。お客さんもそこを感じて、より応援しようという気持ちが強くなったのかなと思います。

──メンバー同士の関係性に変化が？

Yosh　「s p a c e [ s ]」という本作のタイトル通りだと思います。

Show　バンドってメンバー同士が絶妙な距離感を保つことで成り立ってると思うんですけど、その距離感が崩れて近付きすぎて衝突することが増えてきて。それを繰り返しては微調整して「こいつはこれを言ったら傷付くから気をつけよう」みたいなことを理解して、距離感を保てるようになった。これがうまくできなくて解散するバンドって多いと思うので、ここを乗り越えられたのはバンドとして大きいと思います。

メンバーの距離感を表した「s p a c e [ s ]」

──今、メンバー同士の距離を表現する言葉として「s p a c e [ s ]」を使われましたけど、改めて作品タイトルにこの言葉を選んだ理由を教えてください。

Yosh　今、話した通り“メンバー5人の距離感”を表したくてこのタイトルを付けました。最初はこの単語じゃなかったんですけど、「5人」という意味で5文字にしたくて。文字間にもスペースが入っているのもこだわりです。俺らはバンドをやっているから人との距離感の大切さをバンドメンバーで例えましたけど、人や物との距離感ってすべてにおいて大切なことだなと思って、タイトルにしたかったんです。距離感に正しさはないと思うので、それぞれとの適切な“s p a c e [ s ]”を探してほしいという感覚もあります。ジャケットには「様」という漢字が書かれているんですが、これはYudaiのアイデアで。

Yudai　僕は習字をやってるんですけど、習字では「様」って画と画の間（スペース）が均等なことから、練習に使われる字なんですよ。

Yosh　ミーティング中に彼が「様」の漢字をたくさん書き始めて「これ、どうかな？」と。その発想が完璧だったので、その場で決まりました。

──曲名で文字間にスペースがあるものがいくつかありますが、これは？

Yosh　それはアルバムを買って、意味を考えてもらいたくて。初回プレス盤の仕様だとわかりやすいと思うんですけど。

──「様」が書かれた赤いジャケットと、透明なシートに赤い文字で歌詞が書かれた“歌詞カード”、というこの仕様ですね。

Yosh　はい、高校生のテスト勉強用みたいな。この赤いジャケットを重ねると歌詞カードの文字が消えるんですけど、なんで消える必要があるのか？みたいなことを考えて、皆さんの意見を聞かせてほしいですね。

Tatsuya　ネットで検索すればすぐにわかる時代だからこそ、自分で考えてほしいなと。

──こればっかりは現物を手にしないとわからないですもんね。

Yosh　そうなんです。CDに価値を与えるってこういうことだと思うんですよね。

──サブスクリプションサービスや配信でも音楽が聴ける時代ですが、やはり盤を手に取ってほしい？

Yosh　俺は物を持つということが好きなんですよね。データになった音源って大切にされていないような気がして。洋服や楽器、持ち物1つひとつにその人の個性が表れるくらい、物を選ぶことって大切なことだと思うので、音楽もそうやって大切に扱ってもらいたい。

──なるほど。

Yosh　それにしてもこの仕様はレーベルにすごく迷惑をかけました（笑）。

Tatsuya　わがままをずいぶん言って（笑）。

Yosh　結果を出せば出すほどわがままを言わせていただけるそうなので……なんちゃって（笑）。

──でも音楽で売れるというのは、作品やライブにお金をかけてやりたいことができるようになるためでもあると思うんですよね。

Yosh　まさにそういうことです。