SPiCYSOLが4月7日に配信作品「ONE-EP」でメジャーデビューする。
2013年の結成以来、ロック、レゲエ、R&Bなどさまざまなジャンルを織り交ぜたサウンド作りに挑戦してきたSPiCYSOL。活動を重ねる中、神奈川県茅ヶ崎市の自然やライフスタイルに魅了されたメンバーは現在、茅ヶ崎で生活しながら、そのムードに合った心地よい音楽を追求している。
音楽ナタリーではメジャーデビューを控えるSPiCYSOLに初インタビュー。4人の言葉から、彼らの楽曲制作へのひたむきな姿勢や「ONE-EP」にかける思いが浮き彫りになった。
取材・文 / 松永尚久 撮影 / 山崎玲士
トランペットやキーボードができるWebデザイナー
──まずはバンド結成のいきさつを教えてください。
KENNY(Vo, G) 僕とAKUNが飲み仲間で、知り合った当初はそれぞれ別に音楽活動をしていたんですけど、仲よくなっていくうちに一緒にバンドを組もうかって話になったんです。それで、メンバーも決まっていない段階でライブのブッキングをして、集まった中にKAZUMAがいたというところから始まっていますね。
──PETEさんは、どのような経緯で?
PETE(Key, Trumpet, Cho) 知り合いの方に紹介されて2人のライブに行ったら、その場でアルバム制作を手伝ってほしいと言われて……。
AKUN(G) それはデタラメで(笑)。最初はWebデザインなどを手伝ってくれる人ということでライブの打ち上げでPETEを紹介されて、話をしていくうちにトランペットやキーボードが演奏できるということを知ったので、最初に作ったデモ音源からサポートで加入してもらいました。
PETE そうだっけ!? 全然覚えてない! ごめんごめん(笑)。
──(笑)。SPiCYSOLというバンド名にしたのは?
KENNY “SPICY”という名前を付けたいという話をずっとAKUNがしていて、そこに僕が太陽のような明るさを持つ言葉を足したいと思って、スペイン語で太陽という意味の“SOL”を思い付いて、調べたらほかに使用しているバンドなどがいなかったので、そうしました。
──「i」だけ小文字にしているのに意味はあるのですか?
KENNY 全体のバランスを見たときに、これが一番しっくりくると思っただけです(笑)。
全員ボーカルという“黒歴史”
──活動を始めた当初はミクスチャーっぽいエモーショナルなバンドサウンドでしたよね。
AKUN 活動初期に共演したバンド、また演奏させていただいた会場がそういう音を好む人が集まる場所だったので、フィットする音楽を作らなくては、という思いが自然と強くなったからですね。
KENNY さまざまなトライ&エラーを繰り返しましたね。全員がボーカルをやるという“黒歴史”も作ってしまいましたし(笑)。
AKUN 当時はまだトラックっぽい音を取り入れるバンドがあまりいなくて、バンドサウンドをやることがスタンダードだったんですよね。でも次第に状況が変化していって、僕らもトロピカルハウスをはじめとするエレクトロとか、いろんなものを取り入れるようになっていって。
KENNY 初期は確かにミクスチャーっぽい音が多かったですけど、経験を重ねるにつれ、自分たちがどういう音を作りたいのかが、徐々に見えてきたような気がします。
AKUN ライブで再現できるとか、リスナー受けのいい楽曲を作ることよりもまず、自分たちが気持ちいいと思える音楽を追求することを大切にするようになった。
──そこから聴き心地のいいサーフミュージックの方向へとシフトしていったのですね。
KENNY 自分は昔、1人で弾き語りをしていて、バンドを組んだのはSPiCYSOLが初めてなんです。弾き語りのスタイルとして、もともと好きだったジャック・ジョンソンやドノヴァン・フランケンレイターをはじめとするサーフミュージックがあって、メンバーがそこも汲んでくれて、自分たちの音楽に取り入れていきました。
KAZUMA(Dr) メンバー全員好きなものがバラバラだから、何か特定のジャンルに固執しているわけではないんですけど、共通して好きだと思うものが、リラックス感というか、チルアウトな雰囲気のある音楽だった。4人で集まっていくうちに、自然とこういう音に結びついた感じですね。
AKUN 試行錯誤はかなりしたけどね(笑)。
──皆さんは神奈川県茅ヶ崎を拠点にされているんですよね。
KENNY KAZUMA以外の3人は昨年茅ヶ崎に移住しました。
──なぜ移住を?
KENNY 心地いい音を演奏していくうちに、自然とライフスタイルも影響を受けて、移住を決めました。自分たちの追求する音楽を極めたいという気持ちが、茅ヶ崎へ導いたのかもしれません。
まさかの鈴木英人
──最近では2018年リリースのアルバム「Mellow Yellow」、そして昨年発表の「The U-KiMAMA'N'」が、昨今のシティポップに対する注目も重なり大きな話題を呼びました。
AKUN 僕らはシティポップを作ったつもりはないんですけどね。
PETE 時代に合う音楽を意識したらそうなった感じですね。
KENNY 2016年に「Honey Flavor」を発表した頃ですかね? そういう雰囲気が出てきたのは。でも、当時も今もシティポップを作ったという意識はなくて、ただ気持ちいい音楽を作ったという感じです。
KAZUMA それが当時カッコいい音だと思っていたので。
──でも、シティ(都会)感のあるサウンドでしたよね。
AKUN これを聴きながら、都会から海へドライブするのもアリでしょ?って感覚です。
KENNY 僕らは外に出て、自然や人と触れ合うことが何よりも好き。それがこの作品でも表現されているという感じです。
──ジャケットもシティポップを思わせる80年代風のデザインですよね。
PETE 音作りにおいて80年代を意識した部分はあるので、このアートワークとリンクしていますよね。
──楽曲はどのように作られるのですか? 何かSPiCYSOLならではのフォーマットはあるのでしょうか。
KAZUMA どの曲もバラバラ。みんなで「せーの」で作ることもあれば、誰かが原形を持ってきて、それを膨らませることもあるし。ただ、どうやって完成まで導いていくのかは、なんとなくだけど一定のパターンがあるような、ないような……。
AKUN 先にゴールを作って、そこに向かって曲を制作していくことが意外と多いのかも。例えば「Mellow Yellow」は、ジャケットに使用させていただいた鈴木英人さんのイラストが先にあって、それに合う音楽を作ろうという思いで完成させたし。先に大枠を作って、ピースをはめていくみたいな。パズルのように曲を作ることが多いのかもしれませんね。
KENNY 「Mellow Yellow」はまさにあのジャケットの雰囲気が僕の中でぴったりで、最初は鈴木さんのイラストをテーマにアルバム制作を行っていたんです。それがまさか本物を使わせていただけるとは思ってもいなかったです(笑)。
──楽曲を作るうえで大切にしていることはありますか?
KAZUMA 演奏していて「好き」と純粋に思える音楽というところですかね。
KENNY あと、歌ができるだけ響くもの。サビやイントロなど、一番伝わる部分では口ずさみやすいメロディや言葉を入れるというところですかね。
KAZUMA そのために、音源ではドラムの音をあえて小さくするとか。そういう音はライブで鳴らせばいいので。
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続々と生まれるパンチライン