スペースシャワーが誇る良質な音楽動画コンテンツが集結した、音楽専門動画配信サービス「スペシャオンデマンド」。昨年始動したこのサービスでは、約400のスペースシャワーTVで放送された過去の番組のアーカイブやオリジナルコンテンツを楽しむことができる。
ただ、膨大なコンテンツの中から何を観ればいいのか迷ってしまうのも確か。そこで音楽ナタリーでは、「スペシャオンデマンド」の魅力、そしてオススメ動画をスペースシャワーTVでレギュラー番組「モンスターロック」を持つマキシマム ザ ホルモンのダイスケはん(キャーキャーうるさい方)とナヲ(ドラムと女声と姉)に語ってもらった。
取材・文 / 秦野邦彦写真 / 関口佳代
ダイスケはん&ナヲ、スペシャで味わったおいしい思いを回顧
──お二人は現在放送中の「モンスターロック」を筆頭に、スペースシャワーTVさんとは長いお付き合いになりますね。
ナヲ(ドラムと女声と姉) 「モンスターロック」はこの4月で14年目なんだよね。すごいな。びっくりしちゃった。私が初めてスペシャに出させていただいたのは、いとうせいこうさんの「熱血!スペシャ中学」。ちょうどDVD「Debu Vs Debu ~デブ対デブ~」が出るタイミングだったから2005年ですね。転校生(ゲスト)として呼んでもらって。昔からスペシャって憧れだったんです。「S」のロゴマークも、しゃれてんなーって。特に「スペ中」はイケてるバンドマンたちがキャピキャピやってて超楽しそうだなと思っていたから、「私でいいの? 大丈夫?」みたいな。毎回レキシの池ちゃん(池田貴史)の受け答えがめちゃくちゃ面白くて、「池ちゃんに会える!」と思って超楽しみにしてたんですけど、その日はお休みでちょっと残念、みたいな。でも、楽しかったなあ。
ダイスケはん(キャーキャーうるさい方) 僕はサイトウ"JxJx"ジュン(YOUR SONG IS GOOD)さんとハマケン(浜野謙太 / 在日ファンク)さんがやってた「スペシャボーイズ」が最初ですね。もともとFRUITYが大好きだったからJxJxさんに会えるのがうれしくて、ウキウキしながら六本木のスタジオまで行ったんですよ。で、どうせテレビに出るなら爪痕を残して帰りたい性分なので、その日の受け答えを全部、六本木駅の地下から地上に上がるエスカレーターの途中にあるポスターの言葉をもじって答えてたんです。そしたらJxJxさんが速攻「それ全部ポスターの言葉!」ってツッコんでくれて。
ナヲ すぐわかってくれたんだよね。
ダイスケはん めちゃくちゃうれしかったですね。念願叶ってスペシャ出れた!というのもあって。そのあと友達のTAKUMA(10-FEET)が「Oxala!」にVJとして出るようになって、すげえな、うらやましいなあと思ってた。
ナヲ 当時、京都で10-FEETと対バンして、うちらが東京に帰る新幹線に乗ってたら、TAKUMAがギリギリで飛び込んできて「今からスペシャなんだ」って。うわっ、カッコいいと思った覚えがある。そのとき、スペシャに持っていく差し入れ用にいっぱい買ってた「カルネ」っていう京都のおいしいパンを、うちらにもくれたんですよ。「ああ、番組に出てるとスタッフに差し入れとかするんだ」と思いましたね。私は「World Ride」っていう洋楽番組をヒダカトオルさんとやらせていただいたのがスペシャでの初レギュラーなんですけど、差し入れなんていまだに一度もしたことなくて(笑)。
ダイスケはん 2008年のスペシャアワード(「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS」)も印象深いですね。いとうせいこうさんと安めぐみさんがMCをされてて、会場が日本武道館だったんです。マキシマム ザ ホルモンは基本的に大きい会場でワンマンライブをやらない方針なので、授賞式に呼んでいただいて、武道館のステージに立たせてもらえたことが感慨深くて。武道館のステージに立ったのはあとにも先にもこの1回だけです。その日は生放送だから、すぐはけなきゃいけないのに僕とナヲはそのままずっと残ってるというボケをやって、せいこうさんにツッコんでいただきました。安めぐみさんに会えたのもうれしかった。
ナヲ ははは。ミーハー(笑)。
ダイスケはん そのときの打ち上げでビンゴ大会があったんですけど、みんなノリノリでビンゴマシンの周りに群がってるのに、パッと後ろを見たら端っこのテーブルに1人だけ我関せずな人がいたんです。それがバカリズムさんだったんですけど、のちに「アメトーーク!」でも特集される人見知り芸人ぶりをそこで遺憾なく発揮されてて、「うわっ、バカリズムさん、参加しないんだ。カッコいい」と思った記憶があります。その日本武道館の楽屋でスペシャのスタッフさんに「一緒に番組をやりませんか?」と声をかけていただいて、「モンスターロック」がスタートして……いつの間にか長く続く番組になった感じです。
ナヲ ダイちゃんには私がVJをしていた「World Ride」に何回か出てもらったよね。
ダイスケはん 2007年にマキシマム ザ ホルモンが「ぶっ生き返す」というアルバムを出すとき、ナヲが自分のレコーディングがあるからってことで、代打で僕がヒダカ(トオル)さんと「World Ride」のVJをやらせてもらいました。My Chemical RomanceとかAvenged Sevenfoldが来日したときにはインタビューに行かせてもらったり。
ナヲ 亮(マキシマムザ亮君)と行ったこともあったでしょ?
ダイスケはん あったねー。Linkin Parkが来日したとき、亮と2人でインタビューをしに、メンバーが泊まってる恵比寿の一番高いホテルのスイートルームまで行って、「うわっ、やべー!」みたいな(笑)。
ナヲ 「World Ride」では、オーストラリアの「Big Day Out」というフェスに、ヒダカさんが忙しくて行けないって言うから「マジすか? じゃあうちダイスケ誘っていいですか?」みたいな感じで一緒に行ったこともあったよね。
ダイスケはん ちょうどRage Against the Machineが復活して世界各地のフェス回ってるときで、ビョークのライブも観れたし、夢みたいな仕事だなと思った。
ナヲ こんなことあっていいのかしらって。うちら、はしゃぐはしゃぐ(笑)。ほかにもフジロックに行かせてもらったり、スペシャにはめちゃめちゃいい思いをさせてもらいました。
発信する側のメッセージがより伝わるオンデマンド
──「スペシャオンデマンド」は、膨大なアーカイブの中からセレクトされたコンテンツを楽しめる配信サービスですが、実際にご覧になってみていかがでしたか?
ダイスケはん 自分たちが「楽しかったな、面白かったな」と思った番組を、こうして改めて好きなときに観れるのはすごいですね。たぶん、この感じがユーザーの人たちにもあるんだろうな。
ナヲ 今までは家のテレビでしか観られなかったスペシャの番組が、オンデマンドだったら例えばツアー先のホテルでも観れる。それがいいですよね。今の時代、スマホで観ることがスタンダードだから、時代のニーズに応えてくれてうれしいです。私はツアー先でも家でも、お風呂に浸かりながらスマホで動画を観ることが多いので。各動画の長さが「これ観終わったら体洗お!」くらいなのもちょうどいいんですよね。なおかつ見逃した番組の最新回も観れるし。自分で好きなものを選んで観る時代にぴったりですよね。
ダイスケはん 今ってなんでもサブスクじゃないですか。楽曲もそうだし、ドラマとか映画ともサブスクで観る機会が自分も圧倒的に増えてるし、通勤通学とか移動中のちょっとした時間にもスマホで観れるから、今の時代に確実にマッチしたツールだなと思います。あと、スペシャで放送したものの拡大版も観られるんですよね。それによって、「あ、この人たちはもっとこういうことを言いたかったんだ」とか、今までは放送時間の都合上どうしてもカットしないといけなかったものをオンデマンドだったらロングバージョンで届けられる。だから発信する側もより伝えたいメッセージを伝える手段が増えたんじゃないかなと思いました。
ダイスケはん&ナヲのオススメは?
──今回お二人には、スペシャオンデマンドの中からオススメの作品を選んでいただきました。
ナヲ 私はやっぱり「スペシャ中学」ですね(※「熱血!スペシャ中学 ~噂の転校生登場!~」「熱血!スペシャ中学 ~ドラマスペシャル!!~」「熱血!スペシャ中学 ~アフロを...切る!?~」の配信は3月27日で終了。4月以降に順次別エピソードが配信される予定)。スペシャといえば、いとうせいこうさんですよね。看板としてずっと出られているし、アワードとかでもことあるごとに活躍されてますし。その中でこれ、私、知らなかったんですけど、スペシャが開局当初の90年代頭にやっていた「ゲバゲバゲリラ」は面白かったです。せいこうさん司会で、ゲストがマンガ家の岡崎京子さん、ナンシー関さん、中島らもさんというメンツで、ヤバいですよね。普段テレビにあまり出ない方たちに注目している感じが私の中のスペシャのイメージ。今の若者たちには全然わからないかもしれないですけど。だって30年前ですもんね。そんな貴重なお宝映像をこうして観られるのはすごくいいなと思います。当時のせいこうさんの独特の髪型も私は好きです。
ダイスケはん 毎年12月1日前後にやってる「開局スペシャル」も、めっちゃスペシャっぽいなって思いますね。いろんなアーティストの人たちが入れ替わり立ち替わり出てきて、後半になるにつれてカオスな感じ。だけどポップで面白い、みたいな。
ナヲ スペシャの番組って、アーティストのパーソナルな部分、「えっ、この人ってこういうとこあったの?」と思うような一面が垣間見れるんですよね。あれがいいなあと思います。
ダイスケはん 僕は7ORDERの真田佑馬くんと森田美勇人くんがやってる「真田・森田のローカルデリバリー」が面白かったです。7ORDERとは仲いいんですけど。
ナヲ 仲いいんだ? それがまずびっくり。
ダイスケはん ライブにも遊びに行かせてもらったりして。音楽にめちゃくちゃ真面目な、すごくリスペクトできる後輩なんです。そんな2人がこんなんやってたんや!と思って。真田くんと森田くんがいろんな地域の職業をお手伝いする番組で、例えば第1回だったら千葉県の「ベジフルファーム」という菜園に行くんです。そこではクラシックとかじゃなくメタルを聴かせて育てる「メタル小松菜」を栽培しているんですが、これめちゃくちゃ面白いなと思って。地方創生というコンセプトもいいし、毎回訪れた先の方々にどんな思いでやってるかといったお話を伺っていて、すごく感銘を受けました。特に1回目はバカバカしさもありながら、メッセージ性もちゃんとあって、いちいち頷きながら観てました。さっきナヲも言ってましたけど、スペシャの番組ってライブ以外のところでのアーティストの方々の表情、言わばB面みたいな部分が見られるのがいいなと思うんです。例えば昔、「HEY! HEY! HEY!」を観て、「GACKTってすげえ面白い人なんだ!」「西川貴教さんこんな人やったんや!」とか思ったんですよね。比べるのもお門違いもはなはだしい話ですけど、そういうのができればいいなと思いながら「モンスターロック」をやらせてもらってます。
──ステージ上だけではわからないアーティストの顔が見られるのは、ファンとしてもうれしいところです。
ダイスケはん そういう意味で言うと「ロックンロールが降ってきた日」も面白かったですね。浅井健一さん、チバユウスケ(The Birthday)さん、ホリエアツシ(ストレイテナー、ent)くんがそれぞれMCのダイノジ大谷さんとトークしている回を観たんですけど、浅井さん、チバさんは僕らからしたら大レジェンドだし、Blankey Jet CityもTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTもコピーしたし、その人たちの根っこの部分である音楽的ヒストリーを聞くのがすごく楽しくて。例えば浅井さんが初めてミッシェルを観たときの気持ちを話している場面とかゾクゾクっとしたし、チバさんがゲストで来られた回で「浅井さんはこうおっしゃってました」と言われたときの反応も普通にいちリスナーとして、うわあーと思って。ホリエくんも同年代で昔から知ってますけど、こんな感じだったんやって思うし、これから出てくる人たちも気になりますね。
ナヲ うん、いい番組。
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「めっちゃ面白そう。今日これ観よ!」