映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」 梅田航監督インタビュー|「人生ってすげえ」身近な“後輩”が撮影したハイスタのリアル

ハイスタの過去の栄光をなぞるだけにはしたくない

──今作の公開タイミングは決まっていたんですか?

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」のワンシーン。

なんとなくは。でも、ハイスタのアルバム制作が決まったり、3人の活動に進展があるごとにスケジュールが延びたので、結局撮り始めてから公開まで3年近くかかりましたね。

──ハイスタのメンバーとしても先のことは見えてなかったでしょうからね。

僕にとっては、考える時間ができたという意味ではスケジュールが延びたのはありがたかったし、結果としてはすごくいいタイミングの公開になったと思います。

──スケジュールが延びれば延びるほど着地点がわからなくなるということはなかったんですか?

いや、それはなんとなく決まってたんですよ。まず、ハイスタの過去の栄光をなぞるだけにはしたくないというのが自分の中にあって。活動休止してたつらい時期についてももちろん触れたかったし、メンバーとしてもそれについて話すことにNGはないという話だったので。

──なるほど。

梅田航

だけど、映画としての着地点は「この先にはまだ未来がある」という終わらせ方しかないと思ってたので、どの時代も均等に扱うのがいいだろうと。もちろん、自分や仲間がここ3年近く撮り溜めた素材はたくさん使いたかったんですけど、それをやってしまうとバランスが悪くなるし、目標にしてた2時間に収まらなくなってしまう。あと、メンバーのインタビューを撮り終えた時点で全貌が見えたところもあって、そこを軸にしたらすべてがうまく収まると思えたんです。

──そこでようやく全体像が……。

それまでは砂漠の真ん中に放り出されて、「どこでも好きなところに行け」「いや、どこ行ったらいいかまったくわかんないっす」って感じだったんですけど(笑)、そこで道標が見えました。

──インタビューをメインにせず、過去の素材と監督が撮り溜めた映像をつなぎ合わせて構成することもできたと思うんですが?

もちろん、そうやって過去と現在が入り交じるような構成も考えられたんですけど、自分の能力的にそれはやらないほうがいいなと思って(笑)。それを抜きにしても、時間軸に沿って素材を並べたほうが、この話は起伏もあるし、わかりやすいと思って。だから変に色気は出さず、ストレートにやろうと。

──確かにバンドの歴史だけでも十分ドラマチックですからね。

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」のワンシーン。

そうです。自分がそこで変に脚色しなくても、メンバーがしゃべってることと過去の素材を合わせるだけで十分映画らしくなると思ったんです。

──事実は小説より奇なりとはよく言ったものです。

そうですね。この映画では「人生ってすごい」っていうことを伝えたくて、これはバンドが発信しているメッセージの1つとも重なると思うんですよ。それがうまく伝わるようには作れたと思ってます。

ストーリーを伝えるならメンバーが語る以上のものは必要ない

──アーティストもののドキュメンタリー映画は古今東西たくさんありますが、その中で参考にしたものはありますか?

Blurの「No Distance Left to Run」っていう作品があって、それはハイスタのスタッフと一緒によく観てましたね。あまりガチャガチャしてないところがいいんですよね。

──それはどういうことですか?

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」のワンシーン。

アメリカの音楽ドキュメンタリーはだいたいテンポが速くて、いろんな人のインタビューや過去の素材がバンバン入ってきてっていう、とにかく情報量で押し切るパターンが多いんですけど、「No Distance Left to Run」はすごく淡々としていて、インタビューに答えるのもメンバーだけ。でも、すごく伝わるものがあるんですよ。それはなぜかと言うと、メンバーがきっちりしゃべってるからなんです。そういうノリがカッコいいなと思って印象に残ってます。

──参考にするというよりも、心に残ってた。

もちろん、いろんなアメリカのバンドのドキュメンタリーもたくさん観たんですけど、自分が作ることを考えるとBlurの作品がよりしっくりきて。あまり派手なことはやりたくはなかったし、画のカッコよさや、メンバーの言葉や雰囲気をシンプルに見せたかったんです。

──でも、ハイスタはこれだけ歴史のあるバンドだし、メンバー周辺の人たちからコメントをもらって構成することも十分可能だったと思うんですが、そこはいかがでしょうか?

それも考えたんですけど、それをやってしまうとキリがないと思って。ハイスタを中心としたカルチャーは当時確かにあったけど、それらすべてを網羅しようとすると、ハイスタ3人のストーリーとして捉えきれなくなってしまう。あくまでも自分がやりたかったのはハイスタのストーリーなんです。もちろん、カルチャーも大事だし、ハイスタがその中心にいたことは重要な事実なんですけど、ハイスタのストーリーを伝えるならメンバー3人が語る以上のものは必要ないなと思って。中途半端にコメントをもらってくるのもよくないし、2時間に収めるのは無理だし、自分のやりたいことが伝えられなくなっちゃうし、それは違う人がやってくれればいいかなって(笑)。

映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」
2018年11月10日 全国公開
映画「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」
Hi-STANDARD(ハイスタンダード)
ハイスタンダート
恒岡章(Dr)、横山健(G, Vo)、難波章浩(Vo, B)らなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期には海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。同作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。
約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」を開催。同フェスでハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを実施した。2012年9月には宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で「AIR JAM 2012」を2日間にわたり行った。2016年10月に事前告知なしで突如16年半ぶりの新作「ANOTHER STARTING LINE」をリリース。同年12月にカバーシングル「Vintage & New, Gift Shits」を発表し、福岡 ヤフオク!ドームにて「AIR JAM 2016」を行った。2017年10月には18年ぶりとなるアルバム「THE GIFT」を発表。2018年9月にZOZOマリンスタジアムで「AIR JAM 2018」を開催した。
梅田航(ウメダワタル)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業後にWRENCHのマネージャーを務め、その後カメラマンに。2016年にスペースシャワーTVで放送されたHi-STANDARDの特別番組のディレクターを務め、映像作家としても活動し始める。2018年11月公開の「SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD」が映画監督デビュー作となる。