ナタリー PowerPush - SOUL'd OUT
10周年ベスト「Decade」から紐解くサウンドの変遷
SOUL'd OUTの基本は「音楽的なもの」
──ところでこの10年間、自分たちが目指すサウンド像はどんなふうに変化してきたと思っていますか?
Shinnosuke 元々雑食性のあるグループだったんだけど、デビュー当時はさっき言ったようなディスコやダンクラのテイストがあって、それがパブリックイメージにもなってたと思うんです。僕らもディスコでバイトしてたし、パフ・ダディとかウィル・スミスとかがそういう大ネタを使ってやってた時代でもあって。そこら辺から始まって、今度は個人的にちょっとロックをやりたいっていう話をして、ライブもバンドでやるようになってきてっていう。
──ロックの要素を取り入れ始めたのは「ALIVE」の頃ですよね。
Shinnosuke そうですね。それくらいからちょっとずつ、ディスコにルーツがあるからダンクラを取り入れようとか、そういうのが関係なくなってきたというか。何々を取り入れようっていう発想じゃなく、そういう縛りを取っ払っちゃおうと。「ALIVE」の頃はティンバランドが台頭してスネアの使い方の流行りが変わってきたりとかあったけど、そこも通りつつ、でも気にしないようにしつつっていう。例えば今だと四つ打ちのエレクトロっぽいのが入ってきてるけど、そればかりにはならないように心がけるという作り方になったんですよね。
──SOUL'd OUTって洋楽志向が強いし、その時代その時代の音を取り入れてきたグループだと思うんですよ。
Diggy-MO' そりゃ現在の音は研究しますよ。そういうのは楽しいしね。新しいもので、刺激的なもので、自分の中で「いいな」と思ったものは自然とインスピレーションの源になってくる。それは音にしろ、何にしろ。
──だけど、流行の音と一歩距離を置こうっていう意識も常にあると。
Diggy-MO' それは単純に音楽的なものをやりたいっていう欲求が強いから。音楽的じゃないと面白くないっていうのが常にあるんですよ。だから、ただ流行に乗ってやろうっていうことにはならない。「ウェカピポ」がバリバリのダンクラかと言ったら全然違うでしょ。
──確かに。
Diggy-MO' 意外とそっちがルーツじゃないと思うんだよね、SOUL'd OUTは。ダンクラがルーツだとか、この時期はロックがルーツになってるとか、そういうんじゃないんだろうね。ヒップホップだろうがロックだろうが、ダンクラだろうがハードコアだろうが、パンクだろうがジャズだろうが関係ない。「音楽的なもの」っていうのが基本なんだよ。
──それは、あらゆるサウンドのエッセンスを全部取り入れて“音楽的に”ミックスするということ?
Diggy-MO' いや、側(がわ)として面白くなりそうなものを見つけたときにそれを取り入れてみる、みたいな感じなんだと思う。
──時代の音を上着としてまとう、みたいな。
Diggy-MO' そうだね。その時代その時代でちょっと着替えていくっていう。それが僕らのスタイル論としては多分正しいと思うんだ。
「so_mania」はソロ活動がすごく還元されてるアルバム
──あと、2008年から2010年にかけて3人それぞれにソロ活動を展開したことも大きなトピックだと思うんです。あのソロ活動はグループにどんな影響をもたらしましたか?
Diggy-MO' 自分的にはいろんな人とやることによってすごい成長できたんで、あの時期に感化されたことはとても大きかったと思ってます。実際、「so_mania」はそれがすごく還元されてるアルバムだったと思うし。
──ソロ活動の前後でリリック表現に違いはあったりしますか?
Diggy-MO' リリック表現は変わらないな。リリシズムっていうのは、自分の頭の中のことだから、ソロ云々とかそういうことに影響されないと思うので。変わってないというか、変わる必要がないんじゃないかなって。そこで変えちゃうと、あんた誰?って話になっちゃうから(笑)。
──10年という時間の中では、言葉の選び方やトピックの切り取り方に変化はあるんじゃないですか?
Diggy-MO' それはあるね。1年1年とか、1曲1曲とか。昔の曲とか、ぶっちゃけ「いやあ幼稚だなー」とか思うもんね。本当はこういうことが言いたかったはずなんだけど、こことここで誤解を生むような矛盾が生じちゃってるなとか。スキルなかったなって思う。
──とはいえ、10年続けてきて、自分のスタイルと呼べるものをつかんだという実感もあったりしますか?
Diggy-MO' エモーショナルな系統のものは、あまり奇をてらわずに感情をさらけ出してストレートに言うっていうことかな。基本的に難しい言葉を使うのは好きじゃないし、屈託なくポンと出したものが意外と刺さったりするんだよね。「戦士達~」もそうだし、「To All Tha Dreamers」もそうだし、「ALIVE」もそうだし、「Starlight Destiny」もそう。その辺のエモーショナルなものはずっと出してるんだよね。その中で自分が感じることは年々変化してるだろうし、それは如実にリリックに出てると思う。ただ、ストーリーじみてるものは幼稚なこと言ってたなあとか思う。穴があったら入りたい感じ(笑)。
ソロをやって精神的に鍛えられた
──Shinnosukeさんはソロ活動に関してどういう感想ですか?
Shinnosuke 別れてみて初めてわかるじゃないですけど、メンバーの制作面じゃないところの大切さに気付かされたり。僕ってデビュー前も1人で活動したことはないから。音作りは一貫して1人でやってるけど、ぬるま湯でずっとやってると気付かないところもあるだろうし、ソロをやって精神的に鍛えられたなって。
──Shinnosukeさんはソロで女性アーティストばかりをプロデュースしましたが、そこからグループへの影響は?
Shinnosuke それはないかな。SOUL'd OUTは男汁満載なので、ソロはあえてそれをやりたくないなと思って始めたものだから。女性をプロデュースして得たものをSOUL'd OUTに求めるっていうのはなくて、ただ単純に元の場所に戻ったっていう感じですね。
──Hiさんはバンドという、ほかの2人とは少し毛色が違う活動を行いましたよね。そのバンドでは作曲や編曲も自身で手がけていました。
Bro.Hi そう、バンドでは作曲も自分で手がけるようになって、DTMを本気でやらないとやばいぞ、終わらないぞっていうことになってたんで(笑)、そこで機材を覚えてちゃんと使えるようになったのが大きいですね。SOUL'd OUTに戻ってからも、そういう部分でスムーズにやれるようになったのが良かった。例えばトラックダウンのときにエンジニアさんがいじるエフェクトで音がどう変わるかとか、そういうのがわかるようになるだけで全然違うので。
──作業がスムーズになると、ストレスからも解放されますしね(笑)。
Bro.Hi そう。あと、ソロをやってるときには「SOUL'd OUTってなんてできるチームなんだ」って思ってましたね。技術面は当たり前なんだけど、そのほかのちょっとしたときの会話も楽しいよねって(笑)。
Diggy-MO' あはは(笑)。
Bro.Hi あ、これはソロが楽しくなかったっていうことじゃないですよ。だけど、SOUL'd OUTはなんか楽しいなって(笑)。
- ベストアルバム「Decade」/ 2013年1月23日発売 / SME Records
- 完全生産限定盤BOX[3CD+2DVD] / 10000円 / SECL-1241~5
- 完全生産限定盤BOX[3CD+2DVD] / 10000円 / SECL-1241~5
- 初回限定盤[2CD+DVD] / 3990円 / SECL-1246~8
- 初回限定盤[2CD+DVD] / 3990円 / SECL-1246~8
- 通常盤[CD2枚組] / 3500円 / SECL-1249~50
BEST CD:DISC1 収録曲(3形態共通)
- ウェカピポ
- Diggy Diggy Diggy
- 1,000,000 MONSTERS ATTACK
- UnIsong
- TONGUE TE TONGUE
- ルル・ベル
- quarter 5
- TOKYO通信~Urbs Communication~
- BLUES
- S.O Magic 2
- "P"
- SHUFFLE DAYZ
- Flyte Tyme(Extended)
- soooooooo_mania
- Starlight Destiny
BEST CD:DISC2 収録曲(3形態共通)
- SUPERFEEL
- TooTsie pOp
- SOUL'd OUT is Comin'
- Magenta Magenta
- VOODOO KINGDOM
- To All Tha Dreamers
- 輪舞曲(ロンド)
- バナナスプリット
- and 7
- ALIVE
- Dream Drive
- Singin' My Lu
- COZMIC TRAVEL
- GASOLINE
- 戦士達 天使達 ~Livin' for Today~
10th Anniversary DVD 収録内容(完全生産限定盤BOX・初回生産限定盤)
- WELCOME TO S.O TOWN
- TooTsie pOp(Music Video)
Remix CD:Remixies 5 収録曲(完全生産限定盤BOX)
- Sue ~ Dorian Remix ~
- and 7 ~ Mr. Drunk Remix ~
- soooooooo_mania ~ 489 Hits Mix ~
- SUPERFEEL ~ RAM RIDER Remix ~
- IMA ~ DJ TARO Remix ~
- UnIsong ~ 80KIDZ Remix ~
- Kopernik ~ tofubeats BXVTZ Remix ~
LIVE DVD:SOUL'd OUT LIVE 2012 " SUPERFEEL 1T " @ SHIBUYA-AX June 22nd 2012 収録内容(完全生産限定盤BOX)
- Opening
- UnIsong
- VOODOO KINGDOM
- 円卓の騎士
- S.O Magic 2
- 輪舞曲
- GAME
- MEGALOPOLIS PATROL
- ALIVE
- Singin' My Lu
- SUPERFEEL
- バナナスプリット
- TONGUE TE TONGUE
- To All Tha Dreamers
- Starlight Destiny
- FIRE RHYMER
- End
SOUL'd OUT (そーるどあうと)
1999年に結成されたDiggy-MO'(MC)、Bro.Hi(Human Beat Box, MC)、Shinnosuke(Trackmaster)の3人からなるユニット。2001年からライブ活動を本格的に開始し、ヒップホップやR&Bなどのブラックミュージックをルーツとしたサウンドで人気を集める。2003年1月、シングル「ウェカピポ」でメジャーデビュー。同年8月にリリースした1stアルバム「SOUL'd OUT」は50万枚のヒット作となり、その後も数多くの名曲や名盤を続々とリリースする。2007年4月には初の日本武道館ワンマンライブを敢行。2008年から2010年にかけては3人それぞれがソロ活動を展開し、個々のスキルをさらに高めた。2010年4月、ライブイベント「BEAT CONNECTION 2010」でユニットとしての活動を再開。2012年8月には約4年7か月ぶりのオリジナルアルバム「so_mania」を発表した。メジャーデビュー10周年となる2013年1月、ベストアルバム「Decade」をリリース。