MyGO!!!!!高松燈役・羊宮妃那×Ave Mujicaドロリス役・佐々木李子|激動の物語を経て、今2人が思うこと

キャラクターとリアルライブがリンクする次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」から生まれた5人組ヘヴィメタルバンド・Ave Mujica。彼女たちにスポットを当てたテレビアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」が3月27日に最終回を迎えた。

音楽ナタリーではアニメ放送前からAve Mujicaの音楽にフィーチャーした特集連載を展開してきた。1回目は佐々木李子のインタビュー、2回目はAve Mujicaのほぼすべての楽曲の作詞を手がけるDiggy-MO'のインタビューを掲載したが、今回はMyGO!!!!!の高松燈(Vo)役の羊宮妃那と、Ave Mujicaのドロリス(G, Vo)役の佐々木李子による対談をお届け。切っても切り離せない、深いつながりのあるAve MujicaとMyGO!!!!!。それぞれのフロントマンの言葉から、物語の軌跡を感じてほしい。なお特集の最後には、4月23日に発売されるAve Mujicaの1stアルバム「Completeness」Blu-ray付生産限定盤および5000枚限定生産特装盤に収録される、サウンドプロデューサーDiggy-MO'による収録楽曲の全曲解説も独占先行で掲載する。

取材・文 / はるのおと撮影 / 星野耕作

笑いのあった「It's MyGO!!!!!」、重々しい空気だった「Ave Mujica」の現場

──この記事は最終話放送後に公開されますが、ここまでたどり着いた率直な感想を教えてください。

羊宮妃那 最終話が放送されるのが怖いです……。

佐々木李子 わかる! 私はファンの方がそれぞれにいろいろな考察をしたり、予想の斜め上を行く展開に驚いたりしている様子をSNSで見させていただいてすごくうれしい。私もお話を最後まで知っているのに毎週ドキドキしながら、ファンと同じ気持ちで楽しんでいます。

左から羊宮妃那、佐々木李子。

左から羊宮妃那、佐々木李子。

──これだけ意外な展開続きだと、収録現場でも話が盛り上がっていたのでは?

羊宮 「Ave Mujica」はとにかく衝撃的な事実が多すぎて。

佐々木 もちろんメンバー同士で「この話ヤバくない?」と話をしたり考察したりすることもあったけど、ガールズバンドの物語なのにサイコホラーみたいなときもあったりするので、現場はちょっと重々しい空気になっていました。「It's MyGO!!!!!」のときはどうだった?

羊宮 「It's MyGO!!!!!」のときは笑いがいっぱいあるように感じて……立希ちゃんや愛音ちゃんのやりとりで笑いが起きることもあったり。

佐々木 和むよね。

羊宮 「Ave Mujica」ではそういったものがどんどん削られて、物語の本質みたいなところが多くなっているので。

佐々木 怖いし、キャラクターの感情や関係性が生々しく描かれている。私たちも演じるうえで言葉にできない感情が出てきたりもしたので、収録前はそれをしっかり表現するために各々ちょっと精神統一してる感じでした。

羊宮 少なくとも和気あいあいとはしてなかったですね……。私も現場では柿本(広大)監督から聞く衝撃的な事実をしっかりセリフに落とし込もうと集中していたので、今になってこうして思い出しながら楽しく話せているのがうれしいです。

佐々木 そんな「Ave Mujica」でも、海鈴ちゃんやにゃむちゃんは張り詰めた空気を少し緩ませてくれる存在で、救いでした。海鈴ちゃんがゲップを我慢するところとか(笑)。

「人間になりたいうたII」「春日影」の歌唱に込められたこだわり

──続いて「Ave Mujica」で印象的だったシーンを……。

羊宮 印象的じゃないシーンがないくらいいつも印象的で。「It's MyGO!!!!!」でも「次どうなるの!?」と気になるお話が多かったけど、「Ave Mujica」はもう「これバンドのお話ですか?」というシーンばかりで……でも視聴者さんに観返していただけるなら、私はやっぱりAve MujicaさんとMyGO!!!!!の最後のライブシーンを何回でも観返してほしいです。

佐々木 私は第7話がすごく印象に残っていて。

──あのあたりは初華が出てこないですけども。

佐々木 そう、あの付近は、本当に初華は潜んでいるんですけど(笑)。普通だったらライブ本番でCRYCHIC(MyGO!!!!!の燈、そよ、立希、Ave Mujicaの祥子、睦の5人が中学生のときに結成したバンド)をやりそうなところを、リハーサルの場でやったというのがすごく刺さりました。誰にも評価されない場所、でも自分たちだけの空間。それが特別なバンドだったことを表しているようで感動したし、自分たちがやりたい音楽をやるのがバンドだなって実感して。観ながら泣いちゃいました。

羊宮 「It's MyGO!!!!!」の第10話でもボロボロ泣いたのですが「Ave Mujica」でもそのくらいのお話があると思っていたんです。そしていざ「Ave Mujica」第7話が放送されたら、「これは泣く」といった反響もよく目にして「うんうん」となりました。

──羊宮さんはあの「Ave Mujica」第7話の収録にどんな気持ちで臨まれましたか?

羊宮 あのお話だからといって特別に力を入れたというわけではなく、いつも通り監督がどんなふうに燈ちゃんの心情を描くかなどお聞きしたうえで臨みました。ただ、いつもと1つだけ違ったのが、アドリブを使っていただけたことです。「この歌詞は祥子ちゃんのことを思って書いた歌だよ」というのを伝えるときに「CRYCHICやれてよかった」というセリフがあるんですけど、台本ではCRYCHICって1回しか出てこないのに、私が詰まってCRYCHICって2回言ってしまって。それでも監督が「そのほうがリアリティがあるのでそれでいきましょう」と言ってくださいました。

佐々木 えー、そうなんだ!

羊宮 あとは歌にたくさんのこだわりがありました。「人間になりたいうたII」は、燈ちゃんの思いがたくさん詰まっている歌詞です。でも、想いはありますが、バンドとして歌い慣れていないので、メンバーの楽器の音を聴きながら探り探り歌うんですよね。その感じをどこまで演出しながら、そしてどれだけ彼女の心情を入れながら歌うか。またどれだけ泣きそうになるのをこらえなきゃいけないのかまで。

佐々木 そんなにこだわりが詰まっていたんだ。あと「人間になりたいうたII」は映像もよくって。キャラクターたちの動きがチグハグというか、みんなが音をその場で作っていく感じを見て取れたので、それまでの道が見えてくるようなライブシーンでした。

羊宮 逆に「春日影」はどこまで感情をあふれ出させるかにたくさん気を使いました。

──燈にとって「人間になりたいうたII」は初めて歌う曲だけど、「春日影」はCRYCHICの持ち歌として慣れているから気持ちを出す余裕がある、ということですね。

羊宮 そうです。「春日影」では最初から気持ちがあふれかえって泣いてしまうんです。ただ一応CRYCHICの卒業ライブでもあって、そこで燈ちゃんはどこまで心の中で決着をつけているかとか、そういう細かな部分もディレクションとしてたくさんいただいてました。

──ちなみにあの場面の歌唱はどんなふうに収録されたんですか?

羊宮 普通、挿入歌はアフレコとは別に1人でレコーディングスタジオで録りますが、「バンドリ!」ではうまく歌えないシチュエーションなどの歌唱は全部アフレコブースで収録していました。第7話の「人間になりたいうたII」や「春日影」もそうですね。

佐々木 Ave Mujicaは違って、レコーディングスタジオでしっかり世界観を作って歌ったものがアニメのライブシーンで流れています。ただ「It's MyGO!!!!!」第13話で初華がイングランド民謡の「Greensleeves」を歌うときだけアフレコブースで録ったんです。それはステージ上で歌う際のブレスとかも入れたかったからなんですが、すごく貴重な体験でした。

「Ave Mujica」にちりばめられた初音としての気持ち

──佐々木さんには第11話の話も聞かなければなりません。まず、初華が姉の初音のふりをしていたという設定を佐々木さんはもともとご存知だったんでしょうか? 例えばプロジェクト参加段階や「It's MyGO!!!!!」アフレコ開始時などに説明を受けたとか。

佐々木 知りませんでした。「Ave Mujica」#1の台本をもらった段階でも知らなくて、でもずっとなぜ初華があそこまでさきちゃんに執着してるのか引っかかっていたので、第1話のアフレコで「初華ってどんな子なんですか?」と監督に改めて聞いたんです。そこで初音や初華、豊川家との話を聞いて思わず立ち上がるぐらい衝撃を受けて。あまりに複雑で1回聞いただけでは完全に理解ができなかったけど、それを聞いて腑に落ちたし、その後も監督や脚本の方に何度か説明を重ねていただいて自分の中に落とし込みました。でもその段階で初華の生い立ちについて知れたので、「Ave Mujica」でお芝居をするときに気持ち作りをしやすかったし、初音としての気持ちをちりばめられたのでよかったです。ただSNSを見ていると初華の秘密の設定を早い段階から推測している方もいて。

佐々木李子

佐々木李子

羊宮 本当にすごいですね……。

佐々木 さきちゃんとの会話でのちょっとした違和感とか、あとオープニング映像の鏡合わせのような初華をヒントに。皆さんの洞察力に脱帽です(笑)。

──そんな設定が、第11話では初華の1人芝居という形で一気に明かされます。

羊宮 アニメで1話丸々、ほぼ1人がしゃべり続けるってなかなかありませんよね。

佐々木 もちろん私も初めての経験で。あの日のアフレコはそれまでなかなか一緒になれなかった祥子役ののんちゃん(高尾奏音)がいて、後ろでずっと見守ってくれていて心強かったです。

──そんな特殊なお話の収録に、どんな気持ちで臨まれましたか?

佐々木 「アニメのアフレコって思わないようにしよう」でしょうか。舞台上で初華の独白がポツリポツリと始まって、だんだんと気持ちが入ってきて叫びも出てくる。いただいたアフレコ用の映像も普段のキャラクターが動いているものではなく、生身の人間が舞台でお芝居している映像だったんです。だから私もいい意味であまり考えず、初華として気持ちが動くままにお芝居しました。実は2回くらい録ったんですけど、監督さんが「最初に録ったものがいい」と採用してくれたのもすごくうれしかったです。

──ありがとうございます。改めてこの2シリーズを振り返って、どんな話だったとおふたりは捉えていますか?

佐々木 ひと言で言い表すのは難しいですが、自分が生まれてきた意味や人生について考えさせられる物語でした。例えば睦ちゃんは限界を突破して生まれ変わりましたけど、人生には幸せなことや楽しいこともありながら、つらい気持ちや悲しみ、嫉妬も同じように大切な要素というか、それがあるからこそ今を大切にできる。そういった感情を知っているからこそAve Mujicaは輝くバンドだと改めて思いました。

羊宮 誰かの言動で不思議に感じることがあったとしても、その裏には自分には見えていないものがあるはずです。解散したCRYCHICのことも、それぞれに抱えていた事情や思いがあって、そこにみんなが向き合ったからこそ第7話のような展開に繋がったと思っています。きっと何か1つでも欠けていたらそうならなかったと思います。アニメを通して、私もいろんな視点からもっと深く考えながら日々を生きていきたいと、改めて感じました。