架空の年代設定は
1962年くらい
──アレンジやサウンドはシングルを作ったときのコンセプトをそのままに、という感じですよね。シンプルなバンド編成で。
久保田 そうですね。ギターサウンドで。
──全編モノラルになったのはどんな経緯だったのでしょう。
久保田 7inchシングルのモノラルミックスがいいよねってなったので、続けて全部モノラルでいこうと。ミックスはマイクロスターの佐藤(清喜)さんが担当してくれたんですけど、難しいって言ってましたね。
中森 今でこそ音楽をステレオで聴くのは普通になっちゃってますけど、SOLEILのサウンドの年代設定を1962年くらいにイメージしていたので、だったらモノラルだろうと。自分が十代の頃に慣れ親しんで聴いてきた音楽がAMラジオから聴こえてきたものだったりもするので。モノラルだと、演奏してても仕上がりをイメージしながら、いい意味でのあきらめが早めにつくんですよ。
──と言うのは?
中森 「どうせモノラルだし」みたいな(笑)。ステレオだと音像を横も考えて上も下も考えて……って感じなんですけど、もうちょっと簡単に平面に絵を描く感じと言うか。だからすごく楽しかったですよ。いつもの自分たちのレコーディングは最後の最後まで悩み続けるんですけど、今回はアレンジが決まって、音が決まって、さあ演奏どうぞっていう段階で大体「いけたな」っていう感覚があった。それはモノラルミックスだったお陰もあると思います。
──シンプルなサウンドにしようと思ったのも、1962年という年代設定がキーになっているんですね。
中森 The Beatlesもまだ出てきていない、当時のポピュラーミュージックのサウンドって、シンプルなんだけど、いびつな感じがよかったと思うんです。自分たちはスリーピースで成り立っているので、鍵盤とかも入れないでアレンジしたほうが面白いかなと。
──では、それいゆさんがドラム&ボーカルになる日が来るかもしれない?
中森 今、話しながら思い出しました。ゆくゆくは、それいゆちゃんにドラムを叩いてもらおうって話だったんですよ。
久保田 The Honeycombsみたく女性がドラムで。
それいゆ そしたら練習しないとですね(笑)。
──音源に入っているグロッケンはそれいゆさんが演奏しているんですか?
それいゆ そうです。
中森 楽譜を初見で叩いちゃいますから。
久保田 さすが吹奏楽部。
それいゆ いやいや。吹奏楽部では何回でも練習できるけど、レコーディングは時間が限られてるから。一応、前もって楽譜がもらえたのでよかったです。
──楽譜はスラスラと読めるんですか?
それいゆ いや、ドレミファソラシドを振ります。楽譜を読みながらわりとスラスラ書けるんですけど、叩いてるときはドレミファソラシドが書いてないとわからないです。
友達とカラオケで歌うのは乃木坂46
──すご腕のプレイヤーに混じってレコーディングに参加しているのはすごいことですよね。それから、それいゆさんの魅力はなんと言っても歌声だと思うんです。引っ掛かるような独特な歌い方で。
中森 発音にクセがあって、それがすごくいいんですよ。こっちもクセになります。
それいゆ なに行でしたっけ? タ行?
中森 タ行だ。タ行にクセあり(笑)。
──こういう声を作ろうというわけではなく、普通に歌うとこうなるんですよね。
それいゆ はい。
中森 僕らは大人ですけど、大人が聴いてもキュンとするんですよね。逆に同年代の人が聴いたらどう思うのか知りたいですね。キュンとくるのかな?
──学校の友達はSOLEILを聴いたことがあるんですか?
それいゆ 秘密にしてます。たんきゅんのほうはバレてて知れ渡ってるんですよ。パソコン室で授業があるときはみんなでふざけて写真を検索したりしてるんですけど(笑)、調べたら今の写真も出てくるはずなのに、髪型が違うから気付かないんです。たんきゅんのときのあの髪型で探してるから気付かないみたいです(参照:たんきゅんデモクラシー、松永天馬作詞&MV出演の新曲を本日発表)。
──SOLEILを友達に聴いてもらうのは恥ずかしいというのはあります?
それいゆ あー、あの、はい(笑)。
中森 恥ずかしいんだ。
それいゆ 友達の何人かは知ってるんですけど……2、3人です。
久保田 アルバム出たら気付くかな。
──さすがに時間の問題のような気もしますけど(笑)。中学生男子にそれいゆさんの歌はどう響くんでしょうね。
久保田 でも、本人はモテないって言うんですよ。
それいゆ 全然です。
中森 ほんとー?
それいゆ なんですか!
──この仲良し感がいいですよね(笑)。普通の友達みたいな感じで。それいゆさんは小さい頃からたくさんの大人に会っているから、歳上とのコミュニケーションにも抵抗がないんですね。でも、周りの友達と聴いてきた音楽が違いすぎるんじゃないですか?
それいゆ はい。そういう話は全然しないです。
──友達と行くカラオケでは乃木坂46を歌ったりしているんですよね。
それいゆ そうです(笑)。
中森 でもそれはそれで、ここ(久保田・それいゆ)でよく話してるよね。
──久保田さんがさくら学院の父兄だという話も載せておきますか。
久保田 その話はプラスになりますか(笑)。
──BABYMETALを追ってイギリスまで行ったりして。
久保田 行きましたねえ……アイドルが気になり始めたのは5、6年くらい前から星野みちるの仕事をするようになったのがきっかけですね。ジャケットのデザインをやって、ライブのVJをやって、ミュージックビデオを作るようになって、いろんなイベントに行って、なるほどなと。そういうシーンを見ていて僕なりに知れたことがあったので、実は、それがSOLEILにけっこう生かされてます。
──久保田さんが、いろいろ見てきた中で、SOLEILは今まであまりないところを狙ったというのもあるんですか?
久保田 いろんな人に「隙間産業だよね」って言われます(笑)。でも、みちるちゃんとか(脇田)もなりちゃんと仕事してなかったら、もっとネオGSっぽい感じになっていたと思います。もう少しマニアックだった気がする。あと、「やついフェス」みたいなボーダレスなイベントを見れたのもよかった。NONA REEVESも出れば、アイドルも出れば、芸人も出れば、みたいな。アイドルって全部が全部面白いわけではないけど、こんなにいろいろあるんだなと。みんな曲が凝ってるじゃないですか。田島貴男くんや土岐麻子さんに頼んだりとかしていて。でもサウンド的には飽和状態な気もしていて。あんまり鍵盤とか入れない、ギターサウンドがいいかなというのはずっと思ってました。
──マニアックにしすぎなかったというのは?
久保田 シーンを見ていたから、さじ加減がわかったと言うか。例えばモッズミュージックだけを追求している人たちにとっては、SOLEILの世界観って「ちょっと違うじゃん」というのはあると思うんですよ。
中森 「ジャケットに使うんだったら機材それじゃないだろ」みたいなね。自分自身、音楽制作をしててよく思うんですけど、こだわりすぎちゃってダメになっちゃうこともあって。自分たちだけのものになっちゃうと言うか。あとから考えたら「なんであそこに必要以上こだわったんだろう」ということもあったりするんですよ。僕は映画を観ていて、細かい部分が気になって全体がつまんなくなることってすごく多いんですよ。例えば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で「この年代はそのギターないのになんで使うの?」ってことが気になったり。それが自分でもイヤなんですよ。SOLEILには、そのこだわりを入れなくていいじゃんと思って。観てもらったら「かわいいね」、聴いてもらったら「いい曲だね」ってなるのがいいんです。
──アイドル周りの音楽がいいのはそういうおおらかさでもありますよね。フェイクっぽくてもいいという。
久保田 まさにそれですね。
中森 シンプルなギターサウンドにそれいゆの歌を乗せてみたときのハマり具合は興奮しました。乗っけてみるまでわからなかなったんですけど、乗っけたら盛り上がりましたね。本人もハマり具合の面白さみたいなものを感じながら歌ってたんじゃないかな。できたものを聴いて自分でどう思ったのか聞いてみたい。
それいゆ ギターとかベースとかドラムばっかり耳に入ってきます。
中森 吹奏楽部だから演奏に耳がいっちゃうのかな。
それいゆ 最近はそうでもないんですけど、吹奏楽部に入ってドラムを叩き始めた頃はどんな音楽を聴いてもドラムしか入ってこなかった(笑)。
次のページ »
モータウンと言うより白人のロックンロール
- SOLEIL「My Name is SOLEIL」
- 2018年3月21日発売 / Victor Entertainment
-
[CD] 2500円
VICL-64973
- 収録曲
-
- 魔法を信じる?
[作詞・作曲:サリー久保田] - 恋するギター
[作詞・作曲:真島昌利] - 青いインクのラブレター
[作詞:飯泉裕子 / 作曲:新井俊也] - ごめんね、テディベア
[作詞:飯泉裕子 / 作曲:岡田ユミ] - 姫林檎 GO GO!
[作詞・作曲:近田春夫] - 夢見るフルーツ
[作詞:イリア / 作曲:白根賢一 & Nicky Bambino]
- MARINE I LOVE YOU
[作詞:飯泉裕子 / 作曲:佐藤清喜] - キャンディの欠片
[作詞・作曲:陽当モナカ] - Are you happy?
[作詞・作曲:カジヒデキ] - 夏のウインク
[作詞:サリー久保田 / 作曲:高浪慶太郎] - さよなら14歳
[作詞:かせきさいだぁ / 作曲:中森泰弘] - ソレイユのテーマ
[作曲:中森泰弘]
- 魔法を信じる?
- SOLEIL(ソレイユ)
- 女子中学生ユニット・たんきゅんデモクラシーのメンバーとして活動していたそれいゆが、サリー久保田(B / ex.ザ・ファントムギフト、les 5-4-3-2-1)、中森泰弘(G / ヒックスヴィル、ましまろ)と共に2017年に結成したスリーピースバンド。2017年9月にシングル「Pinky Fluffy」を発表し、60'sテイストのバンドサウンドで注目を集める。2018年3月21日には、真島昌利(ザ・クロマニヨンズ、ましまろ)、カジヒデキ、かせきさいだぁ、イリア(ジューシィ・フルーツ)、近田春夫、高浪慶太郎、佐藤清喜(マイクロスター)ら豪華作家陣が参加した1stアルバム「My Name is SOLEIL」をリリースする。
ライブ情報
- Zher the ZOO YOYOGI 13th Anniversary "My Name is SOLEIL release party!" SOLEIL -oneman-
-
- 2018年3月25日(日)
東京都 Zher the ZOO YOYOGI
- 2018年3月25日(日)
- SOLEILデビューアルバム「My Name is SOLEIL」発売記念インストアイベント
-
- 2018年3月24日(土)
東京都 タワーレコード新宿店 - 2018年3月26日(月)
東京都 タワーレコード渋谷店
- 2018年3月24日(土)