バンド結成以来の“めっちゃ吸収する期”が来た
──去年忙し過ぎたということもあって、今年は「青年の主張」からリリースがなかったんですか。
山内 はい。マネージャーやレーベルの人が、メンタルがヤバかった俺らに配慮してくれた結果です。「じゃあメンバー主導で曲作りやライブをやってみて、自分たちの考えるShout it Outの方向性を示してほしい」って言われて。でもそれもあって今、俺“第2次めっちゃ吸収する期”なんですよ。
──“第2次めっちゃ吸収する期”?
山内 バンド始めたぐらいのときが、“第1次めっちゃ吸収する期”だったんです。その吸収したことを生かして、5年間ぐらいずっと活動してこれたんですよ。で、今はこれまでの活動でつながりが増えたからこそ、いろんなバンドからたくさんツアーに誘ってもらってまためっちゃ刺激を受けてる時期なんです。そのほかに本も読んだし映画も観たし、人とも会ったし、ライブもたくさん観に行きました。
──その中で特に刺激を受けたものは?
山内 GEZANのライブなんですけど……すごいんですよ、表現が美しくて。俺は大好きな銀杏BOYZのライブに「でっかい音で俺らの衝動をかき消してくれる」みたいな気持ちを抱いてるんですけど、GEZANはまた全然違って、全部包み込んでくれるようなライブなんです。そういう音楽に俺は出会ったことがなかったので、衝撃を受けましたね。あとライブをたくさん観ていく中で、言葉を大事にしているアーティストの発言はちゃんとオリジナリティがあるなって、すごく憧れました。そこに追い付くぐらいの表現がしたいと思って、今曲作りをしています。
──新曲を作る作業は2人で?
細川 いえ、彰馬が曲を作ってて、一緒に住んでるのでそれが聴こえてくる感じです。2人で何か新しい曲を作ろうっていうのは、3月のアルバム制作からまったくないですね。
山内 俺は創作活動においては単独プレイでありたいと思ってるんです。雑巾を100%絞り出した、みたいなものをメンバーがどう思ってくれるんだろう、そこに何を乗っけてくれるんだろうっていうやり方をしたくて。俺はそういうふうにボーカルが立ってるバンドは好きなんですけど、ワンマンバンドは好きじゃないんですよ。
細川 うん。いわゆるワンマンバンドってほかのメンバーがボーカルをちょっと恐れてるところがあると思うんです。でも俺にそれはないんですよ、絶対。
山内 そうそう。ボーカルに気を使いすぎて個性を殺したり、ボーカルの意見に反論したりしないバンドメンバーがめっちゃ嫌いだし、バンドがそうなったら終わると思ってる。ちゃんとほかのメンバーがそこに食らい付いてるのが見えるバンドが好き。で、コイツはちゃんと俺とケンカします! 俺は千弘に対してけっこう「こういうドラムを叩いてくれ」って指図するんですよ。でもコイツは、無言で全然違うのを叩き始めます。
──あはは(笑)。
細川 言葉で言うよりわかりやすいかなあと思って(笑)。絶対にこのバンドを続けるために必要だと思うからこそ、ケンカはしますね。あと今銀杏BOYZが好きとかGEZANが好きって話がありましたけど、俺が初めて会ったとき、彰馬はここまで自分の好きな音楽を出せてなかった。前のアルバムからはそういう好きな音楽性が顕著に表れてて、曲がいいんですよね。環境が変わるに連れて、彰馬のやりたいことがどんどん出てきたんだと思うんですよ。コイツはもともと相当尖ってると俺は思うし、意思がしっかりとある。さらに好きなものやこだわりが前に出てきたからこそ、マネージャーとも対立をするようになってきた。俺も口出しはするけど、結局バンドでどうするかを決めるのは彰馬だと思ってます。
──フロントマンとしての山内さんに信頼を置いてるんですね。
細川 はい。もちろん曲作りの才能があると思うんですけど、俺は彰馬ってそれ以上にアーティストとしてすごいヤツやなあと思うんですよ。佇まいと言うか。だから付いていけてる感じはありますね。これがもっとナヨナヨしてたら違ってたと思う。
彰馬の意思をちゃんと持ったうえでドラムを叩きたい
──ちなみにリリースがなかった期間、細川さんはどんなふうに過ごしていたんですか。
細川 俺は一から洋楽を勉強しようと思って、いろんなバンドの楽曲を聴いたり思想を調べたりしてました。例えばNirvanaだったら「Smells Like Teen Spirit」しか知らんかったし、自分の中に洋楽の要素がなさすぎたんです。そうやって漁ってた中で、Rage Against the Machineが大好きだなと思いました。レイジってボーカルとギターが反国家的な思想を前面に出してますけど、実は後ろにいるベースとドラムもその思想を持っているということを知って。ライブや楽曲だとボーカルとギターが目立つけど、違うメンバーもちゃんと同じ意思を持ってバンドをやっていることに「なるほど」と思ったんです。俺も別に自分が前に出たいとかはないですけど、彰馬の意思をちゃんと持ったうえでドラムを叩きたいなってより感じました。例えばほかのいわゆる27歳で死んだロックスターやヒーローがいたバンドだって、ボーカルがまず立ってて、さらにほかのメンバーもすごいんやなって。
──日本のライブシーンで人気を集めるロックバンドの中でも、メンバーがみんな同じ気持ちのバンドは強いと思います。
細川 SUPER BEAVERとかまさにそうですよね。俺はそういうバンドが大好きなので、自分もそうでありたいです。あとは音楽的な面で言ったら、海外のロックバンドってドラムがダイナミックだなと思ったんです。俺は16ビートとかで叩くのが好きだったんですけど、ダイナミックなドラミングのカッコよさにも気付いたと言うか。だから道は違ったけど、彰馬の好きな感じになるかもわからないです。
山内 うん。俺はOasis、Green Day、The Beatlesぐらいしか洋楽を聴いてこなかったし、自分の中にない要素だからいいなと思いました。
細川 最近のライブで、脱退したメンバーに書いたバラード(「これからのこと」)をひさびさにをやったんですけど、早速ビートの取り方が変わりました。
──2人が新たな刺激を受ける中で、次の作品にも変化がありそうですね。
山内 前作とは全然違うかも。なんか俺が大人になりました。
細川 今さらなんですけど、楽器嫌いの彰馬がちょっとだけコードを覚えたんです。コイツたぶん音楽が好きでやってるというよりは、メンタル的なところで音楽をやってるヤツで。コードを覚えたことで、いろいろとサウンドの感じも変わっていきそうですね。
やっと十代にさよならと言えた
──改めて「GOODBYE MY TEENS」についてお話を聞きたいんですが、なぜこのタイトルになったんですか。
山内 もともとはグッズを作ってるときに「GOODBYE MY TEENS」っていう単語が浮かんで。あれだけ十代にしがみついてた自分が、さよならすることを考えるようになったんだなと。それをスタッフが面白がってワンマンライブのタイトルになりました。
細川 そのグッズが物販に並びだしたときから、お客さんに「今21歳のこのタイミングでなんでこのタイトルなんですか?」と聞かれて。俺らは「Teenage」っていうミニアルバム(2015年12月発売)を出しているし、十代でメジャーデビューしてるし、“十代”の印象が強いと思うんです。このタイミングで彰馬から「GOODBYE MY TEENS」、“十代さよなら”っていう言葉が出たのは、たぶんデビュータイミングで“十代”を押され過ぎたということを、今やっと自分で言えるようになったから。
──“十代でメジャーデビューしたバンド”というコンプレックスからの脱却という意味でもあるんですね。
山内 はい。そもそも20歳を迎えるのが嫌だったし、20歳を迎えることを脚色されるのも嫌でした。俺は17歳の頃のことを「17歳」っていう曲にするほど、若さに自信を抱いていたし、多大な信頼を置いてきた。でも今21歳で、次の7月に22歳になりますけど、これまでと違うのは歳を取ることに違和感がないことで。だってちゃんと歳を取ったぶん、音楽をやってきてると思うから。
──だからこのタイトル付けることができたと。
山内 そうですね。十代のときより努力できてなかったら付けられなかった。今、俺はやっと十代の自分を抜くことができたという手応えがあるんですよ。実感は1回もなかったですけど、いい曲が書けたり、いいライブができたりっていう手応えを積み重ねていったら、そういう気持ちになれた。しかも、俺の周りで十代のときよりやれてないヤツはいないんですよ。SIX LOUNGE、突然少年、FOMARE、climbgrowとかみんなすごいライブしますけど、パッと出のヤツらじゃないから信用できると言うか。だってカッコいいですもん。カッコいいって言えることが悔しいですけど、そいつらと同じ時間やってるからこそ、絶対に負けたくないです。
──Shout it Outの今後が楽しみです。最後に「GOODBYE MY TEENS」に足を運ぼうか迷っている読者にメッセージをお願いします。
細川 うーん……最近赤色のグリッターが解散したり、周りのバンドからメンバーが抜けたり、そういう寂しいことがしょっちゅうあって。今はいっぱいバンドがいますし、俺らも続けてるけど、ぜひバンドが活動しているうちに来てほしい。「Shout it Outが解散した! ライブ行っておけばよかった!」っていう言葉が一番聞きたくないんですよね。
山内 券売がヤバいっていう話がありますけど、だからって俺は別にライブパフォーマンスを変えたくないです。
細川 うん。俺らのライブに来る人はわかってると思うんですけど、ワンマンだからと言ってめっちゃ変わったことをするかと言ったら今までまったくしてないし、逆に言ったらできないバンドで。そのいつも通りのことを過去最大キャパの会場でやったときに、Shout it Outがどうなるかを観に来てほしいですね。
山内 昨今の音楽業界、俺はインターネットでも現場でも音楽を聴きますけど、やっぱり現場で聴いた音楽が一番カッコいいです。俺は別に券売状況がよくなかったとしても、過去最大キャパの会場だとしてもいつもと同じライブをします。めっちゃカッコいいライブをします。
- Shout it Out「青年の主張」
- 2017年3月8日発売 / ポニーキャニオン
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[CD]
2800円 / PCCA-04474
- 収録曲
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- 大人になれない
- 17歳
- 雨哀
- 道を行け
- DAYS
- 夜間飛行
- トワイライト
- 青春のすべて
- 影と光
- 青年の主張
- エンドロール
- 灯火
- Shout it Out(シャウトイットアウト)
- 2012年4月に高校の軽音楽部に所属していた山内彰馬(Vo, G)らを中心にバンドを結成し、ライブ出演やコンテストへの出場で注目を集める。2015年8月には「未確認フェスティバル」で初代グランプリを獲得。同年10月に細川千弘(Dr)が加入した。12月にはタワーレコード内の新レーベル・Eggsから第1弾アーティストとしてミニアルバム「Teenage」を発売。2016年7月にはメジャーデビューシングル「青春のすべて」をポニーキャニオンよりリリースした。9月にはギタリストとベーシストがバンドを脱退し、山内と細川の2名体制にサポートメンバーを迎える形で、新体制での活動をスタートさせる。2017年3月に初のフルアルバム「青年の主張」を発売。12月9日には大阪・BIGCAT、2018年1月20日には東京・LIQUIDROOMで自身最大規模のワンマンライブ「GOODBYE MY TEENS」を開催する。