ナタリー PowerPush - 真空ホロウ

本性むきだしの「少年A」で青山裕企と再タッグ

半分ひよこだけど、半分まだ黄身と白身の状態

──「少年A」のジャケット写真を撮影するにあたってメンバーの皆さんからは何かリクエストをしたんでしょうか?

松本 「片親」。

青山 いつも単語でいただくんです。でも、その言葉通りに受け取って、見た人が「片親だね」ってわかるような写真を撮るのは違いますよね。僕の場合、いただいた言葉を1回忘れるんです。だけど一度聞いたことは頭の片隅に残っているので、写真を撮るとにじみ出てくるはずなんですよ。

──アルバムを通してのテーマも「片親」ということなんでしょうか?

松本明人(Vo, G)

松本 違います。

──では、作品全体のコンセプトは?

松本 コンセプティブにしようと思っていつも作っているわけではないので……。もちろん、歌詞を書いているのは僕なので、形ができあがっていくうちに一貫した思いというか、そういったものがおのずと出てくると思うんですけど……。

──普段どんなことを考えながら制作しているんでしょう?

松本 日常生活で思っていても言えないことや、誰かに言いたいけど言えないことを、なんとか言葉にして歌にできればとずっと思っています。

村田 作品のストーリーは後からできあがってくる感じだよね。

松本 うん。でもストーリーを説明しちゃうと、つまらなくなっちゃうんですよね……。

──前作と比べて今回はこんな手触りの作品にしようというイメージは?

松本 濃厚……。とろとろ……。前回は胎内にいるというか、すごく守られている感じがしたんです。分厚いゼリー状の膜に。今回は、卵の殻があって、ちょっと割れてて、半分ひよこになっているんだけど、半分まだ黄身と白身の状態みたいな感じ。半成虫みたいな。

──それはちょっとグロい?

松本 グロいかグロくないかは皆さまのご判断で(笑)。

──その半成虫は、真空ホロウ自身?

松本 そうかも。より本性を明かしているのかもしれない。もう逃げられない位置に立っているっていう。

バンドを始めた頃の感覚で本当にやりたいことを詰め込んだ

──青山さんは今回のアルバムを聴いてみていかがでした?

青山裕企

青山 確かに、僕も真空ホロウというバンドの本性が出ていると感じました。僕、「小さな世界」も大好きなんですけど、あの作品はメジャー1発目の自己紹介っていう感じがしたんですよ。例えば、本当はスパイスをバンバン入れるカレー店なんだけど、これをお店で出すとお客さんみんなの舌が痺れちゃうから少しまろやかにしました、という感覚。だからすごく聴きやすいんですけど。

──なるほど。

青山 だけど僕、初めてライブを観させていただいたときに、受け止めきれないくらいの圧倒的なエネルギーを感じていて。そのライブの後に「小さな世界」を聴いたので、真空ホロウはこんなもんじゃないっていう思いもどこかにあって。そういう意味で「少年A」には、僕がライブで感じたものがしっかり出ているという印象ですね。

村田 そうですね。バンドを始めた頃の感覚で、本当にやりたいことを詰め込みました。インディーとかメジャーとか関係なく、「とにかく俺たちはこれをやるんだ!」という気持ちで。

大貫 うん、みんなでよく話しましたね。

村田 ディレクター、エンジニア、マスタリングエンジニアなど、周りのスタッフ全員が1作目と同じメンバーだったっていうのも大きかったですね。そのぶんコミュニケーションも取りやすかったし、団結力がありました。

ミニアルバム「少年A」/ 2013年5月8日発売 / 1575円 / EPICレコードジャパン / ESCL-4037
収録曲
  1. アナフィラキシーショック
  2. 思春の生贄
  3. 娼年A
  4. 4月某日
  5. Balance cont(r)ol
  6. ミラードール
真空ホロウ(しんくうほろう)
真空ホロウ

松本明人(Vo, G)、村田智史(B)、大貫朋也(Dr)による茨城県出身の3ピースロックバンド。日常の違和感を冷徹な視線ですくい上げる歌詞と、ストレートでキャッチーなバンドサウンドが特徴。2006年に結成し、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2009年に「RO69JACK 2009」を勝ち抜き、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」に出演。2010年に1stミニアルバム「contradiction of the green forest」を、2011年に2ndミニアルバム「ストレンジャー」をリリースした。2012年10月にミニアルバム「小さな世界」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2013年5月8日に2ndミニアルバム「少年A」を発表した。

青山裕企(あおやまゆうき)
青山裕企

1978年生まれ。写真家。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。スーツ姿のサラリーマンがジャンプした瞬間を収めた写真集「ソラリーマン 働くって何なんだ?!」(ピエ・ブックス)や、思春期の少年の視点で、女子高生の無防備かつ挑発的な魅力を捉えた写真集「スクールガール・コンプレックス」(イースト・プレス)など、次々と話題の写真集を発表。最新刊は「スクールガール・コンプレックス (女子校) SCHOOLGIRL COMPLEX 3」(イースト・プレス )。また2013年8月17日より、同シリーズをモチーフにした映画「スクールガール・コンプレックス─放送部篇─」が公開される。