「これでよかったんだ」
──5曲目の「Beat goes on」は、バンドのテーマソングにもなりそうなスケールの大きな曲ですよね。これまで話していただいたように、今回の作品は1曲目から4曲目までがさまざまな形で新しいシギーの音楽性や歌詞の世界を表現していると思うんですけど、この「Beat goes on」は、デビュー当時からあるシギーのエッセンスが詰まった曲だと感じました。
原田 この曲は、昔からあった曲ではあるんです。最初は1番までしかなくて、2番の歌詞は新しく書いたんですけど、シギーのスタンスが言葉になっている曲でもあるなと思ったし、今年の春のツアーでやってみようっていうことになって、セットリストの最後に入れたんです。
──まだ音源化されていない曲をライブでやる。しかも、セトリの最後に入れるのは、バンドにとって1つの挑戦ですよね。
池田 でも、お客さんにもすごく届いている感覚がありました。この曲は、私自身、すごく思い入れがある曲なんです。最初に「この曲は昔からあった曲なんだよ」って、茂幸くんからデモで1番だけもらったとき、茂幸くんが言いたいこと、音楽で表現したいことって、いい意味で昔からずっと変わらないんだなって思ったんです。ずっとバンドを続けていけば、悩むタイミングも迷うタイミングもあるけど、でも、私たちがこれまでやってきたことや、これからやっていきたいことが、この曲によって照らされたと言うか……「これでよかったんだ」って思える歌詞だったんですよね。
──「Beat goes on」の1番の歌詞には、「限られた時間が幸せで溢れるように 僕らはいつまでも 変わらず歌い続けるのさ」というラインもありますけど、これは原田さんがずっと、普遍的に抱え続けてきた思いなんですね。
池田 そうだと思います。で、2番の歌詞ができあがってきたときに、そこには今のシギーのモードが入っていて……自分たちの曲に、自分自身がこんなに励まされることがあるんだなって思いました。
諸石 この曲、僕もすごくいい歌詞だと思ったんですけど、同時に、「LISTEN TO THE MUSIC」にも近いなって思ったんですよね。
池田 うん、わかる。
諸石 「幸せ」を歌っているのと同時に、どこか刹那的な部分もある……それが、すごく茂幸っぽいなと思ったんです。「最高の笑顔でいようぜ」と歌うんだけど、その前には「今すぐ命が尽きてしまったとしても」という言葉が食い込んできたりする。切ない瞬間も表現したうえで「でも、ハッピーになろう」って言ってくれる感じが、昔からの茂幸っぽいなと思った。
森 そうだよね。やっぱりこの曲が、このEPでは一番シギーっぽいなって思う。普通、「最高の笑顔でいようぜ」とか「最高の1日にしようぜ」なんて、あまり恥ずかしくて歌えないかもしれない。でも、それを歌って大丈夫な空気感が今のシギーにはあるし、この言葉を池田が歌うということにも、すごく意味があると思う。あと何より、さっき池田も言いましたけど、この曲はライブでお客さんの反応がズバ抜けてよかったんですよ。初めて聴くはずなのに泣いているお客さんもいて。そのぐらい、この曲が持っている力はすごいんだなって思いました。
その人がその人らしくい続けることが一番幸せ
──1曲目の「お手上げサイキクス」の歌詞もそうなんですけど、今作は“幸せ”というものに対して考えを巡らせている作品でもあるのかな、と思ったんですよね。「Beat goes on」の2番の歌詞には、「正解なんてないしまして成功なんてない」とありますけど、ポップスの世界は売り上げやチャートの面で「成功している / していない」という判断を下されてしまう世界でもあると思う。その世界で戦っているシギーが「正解も成功もない」と歌い切るのは、すごく覚悟の要ることだったんじゃないか、とも思いましたし。
原田 特別に意識をしていたわけではないんですけど、もともとそういうことを考えるのは好きなんだと思います。例えば「正しい」といっても、何が正しいかなんて、人や立場によって違うじゃないですか。それって幸せについても一緒だと思うんですよね。何が幸せかなんて人それぞれだし、簡単に定義付けできるものではないと思う。今言ってくださった歌詞に関しても、「成功ってなんだろう?」っていうことは、すごく考えるんですよね。もちろん売れるということは1つの成功だとは思うんですけど、「売れたからなんだ?」っていう部分もあるじゃないですか。もし売れたとしても、自分で自分のやっていることを面白いと思えなければ、意味なんてないわけだし。
池田 そうだよね。やっぱり、その人がその人らしくい続けられるのが一番幸せだよね。たぶん、私たちShiggy Jr.にとっては、バンドを長く続けられて、曲が人にちゃんと届いていくことが一番の幸せで、とても大事なことで。でも、そういうシンプルなことを守っていこうと思うと、急に複雑なことが現れてきて、そっちに気を取られてしまう。そしていつの間にか、シンプルなことを忘れそうになっちゃう。でも、やっぱり常にシンプルなことに立ち返っていきたいし、無理をして自分たちが楽しめない音楽や胸を張れないことはしたくない。自分たちがいいと思えることを胸を張ってやり続けたいです。そうやって毎日を送っていく中で、私たちは歌っていきたいし、ライブをしていきたいなって思います。きっと、たくさんのお客さんに聴いてもらえたり、大きい会場で演奏するっていうことは、そういうことを続けていった先にあることだと思うから。
──とてもシンプルな境地に、今のシギーは到達したんですね。
池田 やっぱり根本的なこと、大事なことを忘れずにいたいですよね。こういう考えに至るっていうのは、もしかしたら、大人になれている証拠なのかな。
- Shiggy Jr.「KICK UP!! E.P.」
- 2018年5月23日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤 [CD+DVD]
2484円 / VIZL-1384 -
通常盤 [CD]
1620円 / VICL-65009
- CD収録曲
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- お手上げサイキクス
- Sun is coming up
- ずっと君のもの
- Do you remember
- Beat goes on
- 初回限定盤DVD収録内容
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- お手上げサイキクス(Music Video)
- テレビアニメ「斉木楠雄のΨ難」第2期 第2クール・オープニング(ノンテロップVer.)
- Shiggy Jr. LIVE TOUR 2018
- Step by Step - summer ver. -
- 2018年7月7日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2018年7月14日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2018年7月15日(日)福岡県 DRUM SON
- 2018年7月20日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2018年7月21日(土)愛知県 ElectricLadyLand
- 2018年7月28日(土)東京都 マイナビBLITZ赤坂
- Shiggy Jr.(シギージュニア)
- 池田智子(Vo)、原田茂幸(G, Vo)、森夏彦(B)、諸石和馬(Dr)からなるバンド。R&B、ブルーアイドソウル、ロックなどさまざまな音楽をルーツにしたキャッチーなポップサウンドを特長とする。2012年12月、池田と原田を中心に結成され、2013年11月にリリースした1stミニアルバム「Shiggy Jr. is not a child.」がWebを中心に話題となり注目を集める。2014年2月に森、諸石が加入して現体制となり、同年7月に2ndミニアルバム「LISTEN TO THE MUSIC」をリリース。2015年6月に1stシングル「サマータイムラブ」でメジャーデビューを果たす。2017年秋にビクターエンタテインメント移籍第1弾作品「SHUFFLE!! E.P.」を、2018年5月に5曲入りの新作「KICK UP!! E.P.」を発表した。2018年7月にライブツアー「Shiggy Jr. LIVE TOUR 2018 - Step by Step - summer ver.」を行う。