楽曲のすべてにおいてグッと来ないポイントがない
──各エピソードのテーマソングに関してはいかがでしょう? 物語に寄り添ったさまざまなタイプの曲が用意されているわけですが。
ゆーまお 僕らのようなオタク文化を背景に持つインターネットミュージックを聴いてきた人種からすると、そのメロディやコード感、転調の仕方にいたるまで、すべてにおいてグッと来ないポイントがない感じではありますね(笑)。
シノダ そうだね。懐かしい!って感じ。
ゆーまお で、そこにはギターロックやオルタナ的なアプローチも掛け合わされているから、そういうサウンドが好きな人はすごく聴きやすいと思うんですよね。
シノダ うん。田口さんの作る曲にはあんまりエゴイスティックな部分がないような気がしてて。わかる人だけわかればいいみたいなところがないと言うか。それはマンガに関しても言えることなんだけど。ちゃんとポピュラリティをもった表現をしているのがいいところだと思うんですよね。
ゆーまお そうそう。そういう部分も含め、すべてが田口囁一でしかないってことを僕は心の底から言いたいんですよね(笑)。
シノダ あとは何よりマンガと音楽を同時に楽しめるっていうのがデカい。マンガと音楽はそれぞれが独立したものだから、一般的な流れだと例えばマンガがアニメ化されたときに初めて作品内で流れていた曲を聴くことができるようになるわけじゃないですか。でも「シアロア」は最初からそれが用意されている。それを一般の読者がどんな受け取り方をするのかには個人的にすごく興味がありますね。
ゆーまお 僕なんかはマンガをミュージックビデオ的な感覚でとらえているんですよ。楽曲の音と歌詞だけでは伝えきれない部分をマンガが絵としてしっかり伝えてくれると言うか。その逆のことも言えますけどね。
──どちらにせよ物語をお互いが補完し合う関係にあると。
ゆーまお そうそう。ストーリーの勢いだったり、そこで展開している風景だったりは、マンガと音楽を両方楽しむことで確実に鮮明になりますから。
シノダ 例えばマンガには一切セリフがないんだけど、曲を聴くことで主人公たちの感情なんかが浮かび上がってくるみたいな手法もできると思うんですよ。そういう意味では「シアロア」の可能性はまだまだ広がっていくんじゃないかなって思うんですよね。
6年を経て、より外に向けて開けた感じ
──では、お二人が特に気に入っているエピソードやキャラクターを教えていただければと思うのですが。
シノダ 僕はまず「退屈の群像」以降に登場するミナちゃん。彼女のレンゲの持ち方がむちゃくちゃすぎて、それがめちゃくちゃかわいいんですよ(笑)。ちょっと変わった子なんだけど、それがそういうちっちゃな所作にも表れててすごくいいなと。あとは「深海と空の駅」の千波ちゃんのエピソードも好きですね。自分の趣味を悪く思われることがすごく怖いけど、でもどこかで誰かに気付いてもらいたがってもいるっていう。そういう感情には共感できます。
ゆーまお 僕がパッと思い浮かぶのは「深海と空の駅」の奈緒ちゃん。すごくかわいくて人気者なんだけど実は闇の部分も持っている、ちょっとヤンデレな感じがいいんですよ。このエピソードのオチはけっこう衝撃的なんだけど、そういうシチュエーションもまた僕の癖にグッと入り込んでくるんですよね(笑)。すごく好きです。
──「シアロア」の世界はここからさらなる展開を見せながら大きく広がっていくことになります。今後に関してどんな部分に期待したいですか?
ゆーまお いちファンとしては単純に新曲が楽しみ。新作エピソードである「リユニオン」のテーマソングを聴いたときに、以前の楽曲とは明らかに違う印象があったんですよ。わかりやすく言うと、ひと皮むけて、より外に向けて開けた感じがしたんです。最初に「シアロア」が公開されてから6年くらいを経たことで囁一くんの中に生まれた変化が、今後どんな展開を見せていくのかがすごく気になりますね。
シノダ ここから物語としてもよりパワーアップしていくことは間違いないんで、その世界観の中をいろんなキャラクターたちがどう駆け抜けていくのかがすごく楽しみです。各登場人物の思いが報われるのか報われないのか、どうなるのかはまだわからないけど、しっかりと最後まで見届けたいと思います。
ゆーまお あとね、ここからもどんどんかわいい女の子を描いてほしいですよね。
シノダ それね!(笑)
ゆーまお 絵に関しても6年分の成長があるはずなんで、そこにも期待したい。田口囁一の人間性が投影された、田口囁一好みのかわいい女の子をどんどん登場させてください!(笑)
──では最後に、ヒトリエが昨年12月にリリースした最新ミニアルバム「ai/SOlate」と、それを引っ提げて行われる全国ツアーについてもひと言いただけますか?
シノダ 「シアロア」の物語が約6年ぶりに再生され、大きなパワーアップを見せていくのと同様に、僕らもこれまでの活動の中で蓄えてきたパワーを最新作「ai/SOlate」に注ぐことができたので、そりゃすごい仕上がりになってますよっていうことで(笑)。で、それをもって10本のライブをやるわけなんで、それももちろんすごいものになるぞと。なんかうまく伝えられてないですけど(笑)、とにかく今のヒトリエはすごいぞと。
ゆーまお うん、わかった(笑)。今回のミニアルバムはそれぞれカラーの異なる6曲で、今までのヒトリエも、新しいヒトリエもわかりやすく表現できたと思うんですよ。しかもそれらをものすごくいい音と高い熱量でパッケージングできたので、ツアーではそれを全国各地で放出していければなと思っております。「シアロア」の今後の展開ともども、楽しみにしていてください!
- 田口囁一「シアロア」
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田口囁一を中心としたロックバンド、感傷ベクトルが2011年よりWebサイトにて連載した1話完結型の音楽マンガ。正体不明の覆面バンド“シアロア”と、彼らの楽曲に影響を受けるさまざまな人々の物語が交錯して描かれた。連載時には各話をイメージしたオリジナル曲も同時公開され、ネットユーザーを中心に大きな話題を呼ぶ。2012年8月には全エピソードを収録した単行本と、イメージソング10曲にボイスドラマを加えたアルバム「シアロア」を同時発売。2017年12月からは新規描き下ろしエピソード「リユニオン」と共に、LINEマンガにて再連載がスタートした。2018年3月からは全編新作による隔週連載も予定されている。
- ヒトリエ
- wowaka(Vo, G)、シノダ(G, Cho)、イガラシ(B)、ゆーまお(Dr)の4人からなるバンド。ボカロPとして高い評価を集めていたwowakaがネットシーンで交流のあったイガラシ、ゆーまおに声をかけ、前身「ひとりアトリエ」を結成。2012年にシノダが加入し、ヒトリエとして活動をスタートさせた。同年12月には「ルームシック・ガールズエスケープ」、2013年4月には「non-fiction four e.p.」と立て続けに自主制作盤を発表し、同年4月に初のワンマンライブを行った。同年11月に開催したワンマンライブ「hitori-escape:11.4 -非日常渋谷篇-」にて、ソニー・ミュージックグループ傘下に自主レーベル「非日常レコーズ」を立ち上げることを宣言。2014年1月にメジャーデビューシングル「センスレス・ワンダー」を発表した。4月には東名阪3都市を回るワンマンツアー「マネキン・イン・ザ・パーク」を行う。11月に1stフルアルバム「WONDER and WONDER」をリリース。2016年1月リリースのシングル「ワンミーツハー」はテレビアニメ「ディバインゲート」のオープニングテーマに起用された。2017年12月、wowakaが約6年振りのボーカロイド楽曲として発表した「アンノウン・マザーグース feat. 初音ミク」ヒトリエver.のセルフカバーを含む新作ミニアルバム「ai/SOlate」をリリース。2018年1月28日より全国ツアー「ヒトリエ UNKNOWN-TOUR 2018 "Loveless"」を開催する。
- ヒトリエ「ai/SOlate」
- 2017年12月6日発売 / Sony Music Associated Records
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初回限定盤 [CD2枚組]
3024円 / AICL-3451~2 -
通常盤 [CD]
1944円 / AICL-3453
- CD収録曲
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- 絶対的
- アンノウン・マザーグース
- Namid[A]me
- Loveless
- ソシアルクロック
- NAI.
- 初回限定盤付属ライブCD収録内容
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ヒトリエ 全国ワンマンツアー2017 "IKI"ファイナル 2017.5.7 at STUDIO COAST
- 心呼吸
- ワンミーツハー
- インパーフェクション
- Daydreamer(s)
- イヴステッパー
- るらるら
- doppel
- 極夜灯
- さいはて
- KOTONOHA
- ハグレノカラー
- 5カウントハロー
- 踊るマネキン、唄う阿呆
- シャッタードール
- リトルクライベイビー
- 目眩
ライブ情報
- ヒトリエ主催ツーマン公演「nexUs」vol.4
2018年1月17日(水)東京都 マイナビBLITZ赤坂
出演者ヒトリエ / UNISON SQUARE GARDEN- ヒトリエ UNKNOWN-TOUR 2018 "Loveless"
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- 2018年1月28日(日)京都府 磔磔
- 2018年2月3日(土)福岡県 DRUM Be-1
- 2018年2月4日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2018年2月18日(日)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2018年2月24日(土)北海道 DUCE
- 2018年3月3日(土)宮城県 HooK SENDAI
- 2018年3月10日(土)兵庫県 神戸VARIT.
- 2018年3月11日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2018年3月18日(日)新潟県 CLUB RIVERST
- 2018年3月25日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
2018年1月18日更新